品川女子学院に学ぶチーム理論

人は変えられない、目標は伝わらない。:NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20081007/172917/?P=1


わずか7年間で出願者が数十倍に急増した品川女子学院
偏差値も上昇し、今では東京大学への現役合格者も輩出するようになった。
大正時代からの歴史を持つ同校は、
かつて生徒数の減少に悩まされた時期もあったが、
都内有数の人気校へと変貌したのである。


 なぜ、学校を再生できたのか。
品川女子学院の生徒や教員が、生き生きと明るく、
やる気に満ちているのはなぜか。


いい記事があったのでメモ。



漆 紫穂子(うるし・しほこ)氏は最終的に
以下のことから改革をなしとげた。

1)人は変えられない
2)目標は伝わらない
3)人は管理できない

組織がうまくいってないとき。
特に部下のSOSメッセージとして見れるのは

「学校の進む方向が分からない」「トップにビジョンがない」

居酒屋でよく出てきそうな言葉ですね。
これは漆氏にとっても心外だったようです。


ショックでした。
私は目標やビジョンがあるつもり、伝えているつもりだったのに、
全然伝わっていなかった。
この時、「人から与えられた目標は自分の目標にならない」
ということが痛いほどよく分かりました。

人それぞれ
見てきた物、
経験してきたこと、
そこから学んだことが違ってるのは当然で、
それを土台に、頭の中に思い描いてるビジョンを他人へ伝える。。。


これは理論では分かったつもりでも、
実際には目標共有されませんね。
トップの頭の中の絵が部下には見えないし、
口で言われたことはすぐ忘れてしまう。。



これがよほどのカリスマリーダーや、
偉大な実績をもったトップなら、
人物そのものに心酔し、部下は疑うことなく
人物の行動そのものをビジョンと捉えることもできるでしょう。



もちろんそんな人がいるところでは、
こういった問題は起きそうにもないので
普通のトップが、どうすればいいのか?
というところですが、、、

そこで、全員で
ミッション、ビジョン、バリューをつくることにしたのです。


 その中で大事にしたのは、毎日生徒と一緒に過ごす先生たちの
「気持ち」と「誇り」です。


「なぜ学校の教師になったのか」とか
「どういう瞬間に一番やりがいを感じるか」といった、
「教員としての原点」です。


 みんなで話していくうち
「こういう理由で教師になった」とか
「生徒が喜ぶ姿、成長する姿を見るのが一番うれしい」という
共通の価値観が浮かび上がってきました。


考え方やタイプが違う人たちでも、
教育や生徒に対する思いは同じなのです。
だから、「こういう学校にしたい」
「こういう生徒を育てたいよね」という目標も大体共通していました。


 結果的に出来上がったものは、
それ以前に2年ぐらいかけて私自身がつくって持っていたものと
近いものでしたが、全員が一緒になってつくった意味は大きかったです。


つくる過程を共有することで気持ちを共有することができ、
チームワークがよくなったし、
何より「学校の目標」が「自分の目標」になりました。


みんなが「参加すること」が大事だったのです。


そう。
個人の目標ややりたいことは別々であっても構わない。


俺は海賊王になりたいとか、
俺は世界一の剣士になるとか、
私は世界地図を描き上げるとか
俺は世界中の海産物があつまるオールブルーを目指すとか、
じゃあ私はウェブデザイナー*1とか
そんなバラバラなチームでもいいわけです。


個人の目標がなんであれ、
みんながその組織に集まったのは、
なんらかの過程としてそこが最適であったからで
「じゃあ目の前の敵をやっつけちゃうか」
というのは、お互い共通の目標にできたりします。



でも、それがカリスマ性のないトップからの命令だと
「何言ってんの? 私は海賊になりたいわけじゃないんだけど?」

「文句言うんだったら給料やらないぞ」

「はいはい、やりゃあいいんでしょ、、、、、何で私がこんなこと、、、、」


なんてパターンにおちいりがちですね。


選択肢のあるゲームと、一方通行のゲーム


ゲーム製作者間でよく言われることは
「ムービーを垂れ流すんじゃなくて、ユーザーに選択させること。
 あなたが行動したから結果を得られたというように誘導すること」
など、常にユーザー自身に決定権を持たせることが大事だという話です。


上から降りてくる命令をただ黙って受ける世界は、
又は、それしか選択肢がないと底が見えてしまった世界は
ただの「お使い」や「作業」となってしまって
もはや 「ゲーム」 でなくなるわけです。


自分なりにカスタマイズして、
自分で考えて行動するゲームが当然面白いに決まってます。



そして自分で考えて行動しても、全体の最適化を考えると
実は上から降りてくる命令とそんなに変わらなかったりします。



全体での結果を考えたら行き着く答えが似てくるのは当然で、
まあ経験の浅い人では、トップの判断よりも最適化が甘いかもしれません。
逆に個人それぞれしかもってない自分に関する情報が、
よりよい最適化になるかもしれません。

 結果的に出来上がったものは、
それ以前に2年ぐらいかけて私自身がつくって持っていたものと
近いものでしたが、全員が一緒になってつくった意味は大きかったです。


みんなが「参加すること」が大事だったのです。


まさにこれはその通りで、
自分でカスタマイズしたビジョンなら良く見える。
選択権を与えたことが大事なのです。


誰でもいいというわけじゃなく、
「あなたが決めたこだわりを採用しました」というのが
人の自己承認欲求を満たすわけです。*2


小さな会議体にして、参加者全員が発言できるようにし、
良い意見が上がれば即実行しました。
自分の言ったことがすぐに実現した若手が
「うれしいし、責任を感じる」と言っていました。

選択権が与えられてはじめて、ムービーの諦観者ではなく、
同じゲームの参加者、パーティとなってくれるわけです。


トップがつくってたものとまったく違う方向に決まったらどうすんの?


その場合トップ自身が間違ってた可能性も大なんですが、
組織の目標が利益であれ、教育であれ、
全体最適化されたときに出る答えはたいてい一緒になります。


また、手法が違っても目標さえ達成すればOKということもあるので
この辺は、チームがよりよく活動できる
自主性を重んじるべきじゃないかと考えます。



漆氏は

任せた分、それがマイナスに働くことがあるかもしれません。
しかし、マイナスのない方法はないのではないでしょうか。


何を大切にするか決めてそちらに舵を切ったら、
時には多少のことに目をつぶっても、
トータルとしてプラスになればいいのではないか、と思っています。

という意見です。

みんなで決めようと言っても、そんなこと出来ないとみんなもう諦めてる?


さて。
そうはいっても、規則や生真面目さ、権限と外部の都合などで
自分たちでは何も決めることができないという組織も多々あるでしょう。


いわゆる
「彼らの自主性を発揮するためとはいえ、
 権限をおろして勝手きままにやらせるわけにはいかない」
という当たり前の思想です。


減点主義というかそれでマイナスになるのが怖い。

任せた分、それがマイナスに働くことがあるかもしれません。
しかし、マイナスのない方法はないのではないでしょうか。


ある意味部下を信頼をしてないということですが、
トップからすれば、
「結果を出してきたら信頼して権限をやってもいい。
 結果も出さず権限をくれとか甘えるのもいい加減にして欲しい」
というのも分かります。


ただこれだと、鶏か先か卵が先かで、
この悪循環のスパイラルから抜け出るのは
よほど要領よく結果をだせる人のみになります。
全体の下限は上がらないままで。

 品川女子学院では、いろいろな改革を現有勢力でやってきました。
学校の中のソフトの部分、つまり人は入れ替わっていないのです。
でも、結果的にパフォーマンスが上がってきました。


その人に気持ちよく信頼して任せることができるかどうか。。
しかも最終的に責任を取るのは
どれだけ権限委譲しても結局そのトップになります。



これはもはや、それを引き受けれるトップの器の大きさが
組織のパフォーマンス全体を決めてしまいます。


そういうことで器の大きな人間になりましょう!

と簡単に自分が変われるアイディアなんてありません。


トップは恐る恐るでもいいから、一部からでもいいから
権限委譲を試してみるのもいいと思います。


そのとき見るのは個別のマイナスポイントだけじゃなく、
全体としての長期的なトータルポイントですね。


信頼という権限委譲が組織の活性化を促す?


例えば、Google
就業時間の20%を自分の新規プロジェクトにあてる「20%ルール」や
関わるプロジェクトを自分で選べたり、納期は特別なかったり、
ボトムアップから会社のプロジェクトが決まったり
80%が検索エンジンベースの開発としても、
それ以外最大限の権限が委譲されてるように見えます。


これは同じくノルマを課さず、
「会社にここまでしてもらったんだから、
 会社のために何かをせずにはいられない」
と言う人もいた未来工業にも当てはまります。


未来工業研究結果 - あるSEとゲーマーの四方山話
http://finalf12.blog82.fc2.com/blog-entry-471.html


先のサイゼリヤも、小さな会議と責任委譲には積極的に見えました。


サイゼリヤがすげーw - teruyastarはかく語りき
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20080914/1221376683



そしてリッツカールトンホテンルや、ディズニーランドのスタッフなども
スタッフそれぞれがその場での決裁権をもってて、
たいていのことは自分の権限でその場の判断することができると聞きます。
だからこその一流の素早い対応ができる。


もし、サンドイッチ一つ買うのに自分の判断ではなく
上司のハンコが5個必要な会社だと、
そこまで信頼されてないのか、
あまりの無駄な作業、またはその作業コストに
やる気がなくなるるのは想像が容易につきます。



極端な話、従業員に勝手にお金を使われてまずいなら、
経理の人にお金の流れを厳重に管理させ、
またそのシステムすらも2重、3重にセキュリティをかけるでしょう。
会社のサンドイッチ一つ買うのにハンコが2〜3個ぐらいかかっても、
これはもう仕方がないのかもしれない。



これが未来工業の山田氏だとどうするかというと、
「経理はおかない」
「金のかかるシステムも作らない」です。



仮に従業員に年間200万盗まれても*3
経理を雇うのに500万かかったり、
そのシステム維持に1000万*4かかるのであれば
200万盗まれた方がお得だと。
さすがに1000万とか盗まれるようであれば経理を置かなくても分かると。



泥棒に入られるよりも、泥棒を発生させないシステム*5の方が
ずっと高くつくと考えれるトップはどれだけいるでしょうか?


そこで部下を信頼することができるかどうかが、
組織のモチベーションと、組織のスピードを決めるわけです。


トップが他人を信頼できるかどうかというのは、
自分自身を信頼してるかどうかに直結します。
自分に絶対の自信があれば、余裕をもって仲間のミスをカバーできますから。


経験の浅い部下は間違いやすいから、トップが判断しないといけない?


と、考える人もいるでしょうが、
それこそ目先のマイナスを見て、
全体成長としてのプラスを考えてないのではないかと。



個人的には、トップと部下で
企画や判断の成功率は変わらないんじゃないかと疑ってます。


これはトップじゃなくても、ヒットクリエーターと一般人、
宮本茂と、id:hiroyukiegamiでもかまいません。



というのは、宮本茂はあれだけのヒット作を生み出すまでに
ちゃぶ台返し含めて無数の失敗をしてると思うのです。


決定的な違いは、それだけ失敗するだけの権限と資金
与えられた環境にいるかどうか。
一般人には、DSのゲーム一つ作りあげる環境にはいません。*6


実績のあるヒットクリエーターでもそこから何回も失敗します。*7
これは、時代やタイミングや、ライバルや、価格や、流行など
無数のカオス的な要素が絡むので絶対がなく、
リリース直前も、リリース後も絶えず修正と、無数の失敗のなかから
常に諦めずにチャンスを見つけ出すかどうか、だと思ってます。



エジソンでも1個の偉大な発明に1万回失敗するわけですから、
仮に失敗したとしても、
計画、実行、チェック、修正のサイクルを高速で廻すところが、
失敗を素早くたくさんするところが成功に一番近くなるのは当然です。



そしてそこにハンコが絡むと、当然サイクルは低速になります。
失敗しないためのシステムそのものが、
大失敗だったという後悔は、よくある話かもしれません。



逆にぽっとでの実績もない新人が大ヒットを飛ばすこともある
エンタメやWeb業界なども、
先が読めないカオス要素の裏返しで運を手に入れたか
ハンコを押す必要もないベンチャーだったりするわけです。


まとめ


上記の仮説から、
不振チームに一番求められるのは
トップの絶対的な自信による権限委譲だと思います。


仮に
おまえが失敗しても後ろは俺様がなんとかしやんよ!
だから、おまえ自身の力でおまえの夢を叶えてみせな!!
みたいな攻めの気構えで信頼されたら、本来の力も出るってもんでしょう。


これはかならずしも他人を信頼するとは違うかもしれません。
仮に裏切りのユダがいたとしても、
それでも汝の隣人を愛すほどの強さ、自分自身に対する絶対的な信念が
他人を信頼するということを可能にするのだと思います。



他にも記事があったので追記

女子校を再生! 学校改革で偏差値20ポイントアップ:NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20080620/163148/?P=3


 品川女子学院のユニークさは
「28project」という教育方針に表れている。


「大学進学をする18歳の時ではなく、
28歳の時に社会で生き生きと活躍できる女性を育てることを目指し、
未来から逆算してその土台づくりをしていく」というのが、
学校の目指すところだ。そのライフプラン作りが「28project」である。


 なぜ28歳なのだろうか? 会社での仕事の責任も重くなり、
また女性は結婚や出産を考えていくうえで、
ライフプランの大事なターニングポイントになる年齢を28歳としているからだ。
次代を産み出す母体でもある女性だからこそ、
出産適齢期をかんがみての「28歳」。この思想には、はっとさせられた。

ここまで観てるからこその躍進といえるかもしれません。
目先のことを追わず、ほんとに次代を見据えている。
芯もしっかりしてくるはずです。


 1974年頃、校内で規律が乱れるという危機があった。
しかし、教師たちがクラブ活動や行事を強化して
規律を取り戻したという「改革」があった。



しかしその成功体験が、同時に弱みにもなっていることに、
外部にいた漆さんは気づいた。


生徒によかれと思って、先生が先回りして指導してしまう。
学園祭もクラブも、先生が細かくお膳立てして仕切っていた。


 「一番の問題は、生徒を思いやるあまり、
生徒の立場に立つ視点が欠けていたことです。
面倒見がよい学校として、何でも細かく先生が指導してしまうと、
生徒の自主性が育たない面もあるのではないでしょうか」


子は親の背を見て育つというか、
トップが、よかれと思って教師にしてたこととまったく同じ問題!


生徒達も諦観者になって、
ゲームプレーヤーとして参加させてもらえなかったんですね。


しかもそれは善意や、思いやりの心から生まれてるのが
ずっと「学校生活しか知らない教師」の「マイナス面」なのかもしれません。*8

そして「自らを考え、自らを表現し、自らを律する」の校是の通り、
生徒会やほかよりも多い文化祭、合唱祭などの行事は、
生徒自身が実行委員会を作って運営するようになっていった。


時には失敗もあるが、品川女子学院は生徒たちに
失敗を恐れず進むように教育している。それが将来の糧となるからだ。

この方針転換はほんとに素晴らしい。

学校改革で受験者数増 品川女子学院が生まれ変わった:NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20080707/164586/?P=3&ST=sp_smb



 「経営の軸をぶらさない」例として会社を経営する友人が、
不採算ではないが、目標に沿わない子会社を売却したという話を教えてくれた。


経営者や企業の中で活躍する異業種の友人が、
多くの情報や発想のヒントをくれた。


なるほど。
「社会を知らない教師」でも、
素晴らしい友人達に助力を得れたわけだ。
まさに人徳か。

 「生徒たちはいずれ社会に出て働きます。
でも自分は学校の世界しか知らず、
企業での社会人経験がないことがコンプレックスでした。


外部の勉強会に出て、視野を広げるよう努めました。
多摩大学ルネッサンスセンターのCEO講座にも1年通い、
大企業の部課長と机を並べさせてもらいました。
異業種の友人たちからは、社会が求める人材のニーズを知ることもできます」


上の発言を訂正><


人徳とか権限委譲とか適当なこと言ってとんでもない。
その人脈すら自ら切り開いたわけですね。


この社会人コンプレックスを抱える教師は数いれど、
実際に行動を起こす人は希有です。
見習うべきはこの教師としての「覚悟と資格」でした><



いやはや、、まさか追記で訂正させられるほど打ち負かされるとは、、、
真のトップはこれだけ揺るぎない信念をもつのですね。



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そして、ここまで取材した記者の方も素晴らしい。
日本の未来に光を当てた記事をこれからも期待します。

*1:降りろ

*2:逆にこれがあるからTVゲームなんて生活の何の役に立たないものが、心理的に必要とされる娯楽商品になりえる

*3:よく考えると無駄な使い方されても

*4:ハンコの時間的やりとりや、そのチャンスロスと考えていいかも

*5:ハンコ

*6:フリーゲームでも作ればいいのだけど

*7:64やGCは言うまでもなく

*8:実際の社会では周りの大人がいちいちお膳立てしてくれることはない