teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

デザインの極意(1)

日本の家電メーカーが出す商品はなぜ”もっさい”のか - キャズムを超えろ!
http://d.hatena.ne.jp/wa-ren/20090911/p1


決裁者にセンスがないというよりは、決裁の仕組みの中においてデザイン以上に優先される要素がいっぱいある、それは企業規模と狙っているマーケットからきているよ、という話。


じゃぁそれが問題なんだからデザイン優先させましょうよ、とPanasonicSharpで実践したら多分会社がつぶれる。そういうものを求めているのは(PanaやSharpが見ている市場規模からすると)一部のユーザーだから。彼らはでかくなりすぎたのだ。


全然違うと思うよ。


サイレントマジョリティである僕ら消費者、
多数派が口に出さないけど本当に求めてるデザインとは、
突き詰めれば「スピード」なんだよ。

声を上げて望むのは新機能。本当に欲しい物はスビード


これは商品を生命体と考えたら守らないと絶滅してしまうような
哲学の話だ。


でも、家電やソフトウェアの反応速度が
0.8秒から0.5秒に短縮されましたといっても
いまいちピンとこないのでそれはプロモーションの役に立たない。
だから画質は上がらないのにカメラの画素数がこんなに増えましたとか
ボタン操作がメインなのにモーションセンサーをつけましたとか
売るためにわかりやすい機能を追加する。


僕ら消費者が口に出す本当は求めてないデザインは、
「新シリーズの新しい機能は何かな?」だ。
「新機能がなければ今持ってるのでいいや」ともアンケートに書く。
悲しいかなこれが各社マーケティングに届く声だ。


しかしホントは使ったらわかるんだ。
頻繁に操作する物ほど0.1秒の短縮が生理的気持ちよさにつながってくるから。
最終的に生き残るのは使ってて気持ちのいい家電だ。

スピードは動作速度だけじゃない


どうしても機能が増えたときは、カーソルキーを連打するより
タッチパネルで指さした方が圧倒的に早いこともある。
ジェスチャーの方が早いこともある。


電源を入れてから目的を達成するまでの
物の形状から、インターフェースデザインから、動作速度ひっくるめての
トータルスピードを考える必要がある。
もっさりデザインしかつくれないところは
分業化しすぎて、トータルスピードを考えることができてない。


オサイフ携帯はスピードに貢献する


お金を支払うという目的のトータルスピードが圧倒的に速くなるからだ。
速ければとても気持ちがいい。
この点では日本の携帯もiPhoneに全然負けていない。


もしiPhoneがトータルスピードを追求しているとしたら
なぜオサイフ携帯機能をつけないのか?


それは簡単な話で、もし日本の都市部だけでなく
世界のどこでもオサイフ携帯が使える店が普及してたら
世界共通規格で生産するiPhoneにもすぐさま機能が追加されるだろう。
*1

薄型携帯もスピードに貢献する


トータルスピードで考えたら、
持ちやすい、
ポケットから出し入れしやすい、
というのは目的達成の速さにつながる。


これも大画面タッチパネルを選択したiPhoneではなしえない
従来型の携帯の強みだ。
やはり日常的に使ってて気持ちいいか
気持ち悪いかという感情を引き起こす。


新機能はスピードを殺す


余計な機能が増えるほど動作速度が遅くなるのは仕方のないことだ。
日本の企業だけじゃなくVistaなんかもいい例だよね。
それでもハードウェアの進化で相殺されるところもあるだろうけど
10年前の何百倍にもなったはずの俺のCPUとメモリは
いったい何に使われてるんだろう。


機能の選択もスビードを殺す


機能がひとつしかないシンプルな機械は選択する必要もなく
すぐ目的へたどり着くことができる。


機能がたくさんある複雑な機械は
最初に機能を選択することから始めないといけない。
さらに目的の機能にたどり着くまで
ずっとキーを連打しないといけない。


誰だこんなに余計な機能ばかりつけたやつは!!!!


過剰な安全機能もスピードを殺す


例えば

でもこれが製品になると、こうなっちゃう。
変なラインが上のほうに入ったり、
グリップ素材のまわりに妙なリブがついたり、
無粋な形状の大型ストラップホールがついたり。


壊れない大きなストラップホール
すべって落とさず、がっちりホールドするためのリブ


こういうデザインは、首からカメラをぶら下げない大多数の人や
メーカー指定の構え方をしない大多数の人には非常に無粋に映る。
出し入れも悪いし、使わないデザインが邪魔でしょうがない。


ところが一部の少数、そういう使い方をきちんとする人には
このデザインがベストに見える。
これはそういうユーザーの声を反映したり
正しい構えを研究したり
安全性を重視した作りなのだが、
大多数のユーザーが自由に使えるようなスビードを犠牲にしてしまっている。


何でこんなデザインにしてしまったのかって?
落として壊れたときクレームがくるのが怖いからさ。


コールセンター必殺
「(あんな大きな穴をあけてるのに)ストラップをつけてなかったんですか?」


でも、そのデザインのせいで売れなかったとしたらクレームも確実にこないから
クレームがこないという目的は達成できて結果オーライかもね。*2


新機能は価格を跳ね上げる、高価格はスピードを殺す


そりゃ新機能のため購入価格帯ぎりぎりの最先端技術を投入してくるからね。
PS3の発表当初は7万円で売ろうとしてたんだぜ。
今の携帯も充分高いけどさ。


トータルスピードという概念を製品の購入前まで考えると
安い方が当然買いやすく、それを手に入れて目的達成までの時間が速いことになる。


もし、インターネットを見るだけならデスクトップパソコンを買わなくても
機能が劣るネットブックのほうが手っ取り早いこともある。


デザインとは機能性のことだ


感性か何か表現できないものと勘違いしてるひともいるが
デザインとはすべてに意味があって、
連携して目的達成のスピードを高める機能性のことをいう。


色遣いからほんのちょっとした質感まで
デザイナーは神経をとがらせて考え尽くしている。


それが残念な結果になるのは、担当者それぞれが
その機能単体のデザインに特化してるときだ。
たぶん売るために仕方なくつけてる
それぞれにとっては邪魔な機能を苦々しく思ってるだろう。

ファッションとは余裕のことだ


では機能性を考慮してない、
調和や世界観の表現を目的としたデザインは何なのか?
それらは売り上げに貢献するのか?


もちろんそれに惚れ込むニッチな層には売れる。
話題性や多様化の意味でこれらは決して否定できない。
ただし大多数の人は機械やソフトにファッションなど求めてないことを
覚えていた方がいい。


「私はこんなにみんなと違うのよ」
質実剛健なけちくささと違って、こんな機能性のない物まできかざる余裕があるのよ」
「あなた、アートってわかる?」


これこそ人の満たされない虚栄心をいじるマーケティングの話であって
本来のデザインとは、完全に切り離して企画すべきことである。


デザイン=スビード すなわちデザインは数値ではかれる


どっちがシェアを伸ばすかというのは、
お互いのトータルスピードを詳細に比較すれば
感性と思われてたデザインを数値に直すことができる。


総合的にみるとカオス過ぎて計算できないかもしれないが
単体機能のトータルスピード なら簡単に比較できる。
全体的には新機能がどうこうではなく
使ってて気持ちがいいかどうかを調整していくこと。


これはゲームデザイナーが自分で作ったゲームを
ひたすらテストプレイして調整することと同じで、
そんな時間を全くとれずに発売日を迎えるゲームと同じこと。


新機能や新システムがついてりゃプレイヤーが満足するかって
するわけねーじゃん!!!
そこからの調整が本番なんだよ!!!
余計な新機能つけることに時間使うなよ!!!!



ここまでのデザインにおけるトータルスピードの概念は
何となくわかっただろうか?



なぜ選択肢を増やしてはいけないのか?
必要な機能まで削らないといけないとはわかっていても
それがどうしても削れないときはどうしたらいいのか?


それは次のページにゆずる。



デザインの極意(2) - teruyastarはかく語りき
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20090912/1252706152

*1:ちなみにiPhone3G S の 「S」 は「Speed」の「S」だ!

*2:わざわざクレーマー向けに製品を考えるのも楽しくなさそうだけど