teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

右向きの物語と左向きの物語。あと右スクロール

この説明は面白いですね。
映画をこういうふうに見たことなかったです。

映画が抱えるお約束事 - 映画の見方 
http://d.hatena.ne.jp/baphoo/20120109/p1



映画の画面で向かって右側の端に目的地がある、
もしくは物語の目的が在ると想定された場合、
そちらに向かうこと、そちらを向くことは、
物語上はポジティブなことになります。
それに反して<ー側を向くこと、
その向きへの移動は、物語的にはネガティブなことなのです。
(略)



映画が誕生して最初の三十年間は、サイレントの時代であり、
頻繁に画面に文字が映されていました。
それら文字の読み方はー>なのですから、
ー>方向の動きは文字との関連から目に心地よいストレスの少ないものです。
それに対して<ー方向の動きは、文字の流れと逆になりますから、
なるべくなら少なくして欲しいのですね。


物語の目的だけでなく、主人公の内面や設定の深読みまですると
どの方向にもそれらしい理由はつけれそうですが、
基本的な流れが存在するのは納得できます。


また、欧米圏では主人公が左で右側へ進む物語となりますが、
文字を縦書きで右から左に読む日本だと逆になるそうです。

日本映画?ガラパゴス? - 映画の見方 
http://d.hatena.ne.jp/baphoo/20120116/p1


実のところ、日本では映画ドラマは、アメリカ映画とは逆の
<ー方向に進展することになっているからです。


日本だと漫画も縦書き左向きが主流ですから、
国産TVアニメを作った手塚治虫が左向きアニメを作ってきたのも自然な流れですね。

黒澤映画は日本映画ではない?


ちょっとここで面白いのが、両エントリーで挙げられてる黒澤映画の扱い。
どちらの例も、黒澤映画はアメリカと同じ右側へ進んでるんですね。
黒澤映画が欧米の映画監督に教科書扱いされるのは
進行方向の違和感の無さにも一理ありそうです。


もし海外で映画をヒットさせるとしたら
あえて日本映画も右方向の物語を意識した方がいいかもしれませんね。
吹き替えならともかく、国際映画祭なんかで英語字幕がつくと
物語は左へ進んで、字幕を右に読む日本映画は
欧米人の無意識で見づらいかもしれません。



でも、日本の縦書き文化はどこから来たんですかね?

縦書き左読みはどこからはじまったのか?


そもそも目は(地平線を見渡しやすいため?)横並びについてるから、
文字も横書きになる欧米文化のほうが自然な気はしますが、

縦書きはなぜ右から左へ書くのでしょうか? - 国語 - 教えて!goo
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/6762069.html


中国語版のウィキペディアを見てみました。
そこには、縦書きを右から左へ書く理由は


「右から左へと書く方式は、
竹簡に書くときに右手で筆を持ち、左手で竹簡をもって、
竹簡を並べやすい順序で並べていく方式に主に由来すると推測される。」


とありました。


なるほど、製紙技術がまだ発達してない頃ですね。
日本でも聖徳太子がもつハリセンに、和歌を書いたりしたでしょう。
竹や木を左手に持って書く右利き仕様なんですね。



(竹簡 - Wikipedia)


長編を書き、置いて並べるときは
これまで書いた行と、左手に持ってる行の一覧性から
左方向に並べて置きそのまま編むのが自然でしょう。
例えば、

左方向の番号順に書きながら確認するのが容易で、



右方向の番号順でも読めないことはないけど、
書きながらの確認はテンポ崩れます。


竹に書くときは別に右方向に並べる理由がなにもないので、
この文化がそのまま巻物や本にも引き継がれたんだろうと。


となると、竹や木の文化がある中国、日本は縦書きが出てきても納得。
ヨーロッパは石で家作ってるし、地理的因果関係になりそうです。


縦書きも、木簡に書く場合はいいのですが、
紙に鉛筆やボールペンだと縦書き右利きはちょっと困りますね。
左方向に進むと手で文字が隠れるし、手の支点が汚れます。
右利きのための文化が、道具の進化で逆効果になってしまいました。
これもワープロや、音声入力でまた関係なくなるのですが。



これ、もしスーパーマリオが、
巻物のように左向きスクロールだったら
海外で大ヒットしてたでしょうか?


ゲームの右、左に関してすでに膨大な資料をまとめてる方がいました。
いくつかピックアップしてみます。
と、その前に前提条件の修正。

主人公は上手から? 下手から?

ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか - 最終防衛ライン2
http://d.hatena.ne.jp/lastline/20080329/1206781018


物語は舞台の上手(かみて)から下手(しもて)、
つまり右から左に進むのが洋の東西を問わず一般的。
映画などでも、主人公は上手の右、敵役は左にいる。

主人公は右から入場し左へと退場していく。


つまり、物語は「←」と右から左へ進行する。
縦書き右綴じな日本の漫画は「←」で右から左に物語が進むが、
横書き左綴じの西洋の漫画は「→」と左から右に進む。
日本の漫画は左右が映像のロジックと一致しており大変読み易いと言える。


洋の東西を問わずというのは「映画の見方」と見解が逆ですね。
ここでは「西」の例が挙げられてないのですが、、

一方西洋では、"right"に正しいと言う意味があるように右上位。
("left"は弱い、役立たずという説があり)、
"left-hand"には不誠実なと言う意味もある。

この引用はWikipediaの説明と矛盾します。

上手と下手 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%89%8B%E3%81%A8%E4%B8%8B%E6%89%8B


英語では舞台から見た左右で表し、
上手は stage left、
下手は stage right
と呼ぶ。

英語だと観客席から見て上手の右が「stage left.」
下手の左が「stage right.」
です。
すると西洋の「正しい主人公」は観客から見て左(stage right)に立ってるはずで、
「不誠実な敵」は右にいる。
これなら物語は「映画の見方」のように主人公は右方向へ進むはずです。


観客から見て
右「上手=上位」左「下手=下位」の解説は共通みたいですが、
主人公の立ち位置が反対ですね。


日本の水戸黄門や宮本武蔵が、権力や一流剣術から左の悪者を圧倒し、
寅さんは商売の成功も恋人も右上がりにゲットできず、
アメリカンドリームや開拓精神では、
右に這い上がるハッピーエンド文化の違い、
といえばわかりやすいですが、
日本で這い上がる話も、アメリカでヒーローが圧倒する話もありますしね。


英語で舞台から逆に見るところを、演出本が誤訳したか、
引用先がうろ覚えで間違ってたか。
もしかして、舞台じゃなく映画では逆にみないとか、
弱い右(left)主人公が、左(stage right)にたどり着いて成長する物語だとか
見方を変えればいくらでも理由はつけられるのですが、
ここでは「映画の見方」のロジック、


アメリカは右方向に物語が進み
日本は左方向に物語が進む


で考えてみます。

なんで日本のゲームは右にスクロールするのか?


小説も、漫画もアニメも映画も左向きなんだから、
日本のゲームも左向きが主流になってもおかしくなかったはず。


これはブコメにもっともな理由が指摘されてました。

id:ite x座標のプラスが右側だからだと思う。



コンピューターでは左上が x=0, y=0 の座標で
右下が x=256, y=240 だったりしますので、
マリオx座標にプラス3ドットすると右へ行くわけですね。
マイナスにすれば、左へ進めますが、
プラスで前進するほうがプログラマー的には自然でしょう。


コンピューターはアメリカ発なので、
左上から右下に英文字を横書きするとなると、
左上が x=0, y=0 の座標になるのも納得です。


とはいえ、英語がプレイする絶対条件ではないのだから
かならずしもプログラマーの理論や企画ではなく、
右から左へ進むゲームがもっと多くてもいいはずです。




(GAME OVER(跡地))


最終防衛ラインさんのまとめでは
初期から映画を意識したような、FF、メタルギアなどが
右に主人公を置く例外的なスタイルとして扱われてます。
スパロボに関しては元ネタがアニメなので、
右に主人公がいることが自然ですが、
左右スクロールで言うと
やはりほとんどのゲームは右スクロールで左に主人公がいますね。

十字キーの位置

れとろげーむまにあ: 横スクロールSTGが左から右へスクロールする理由
http://nesgbgg.seesaa.net/article/150260347.html




自機と自機をコントロールするレバーとの距離的一体感と
操作的自然感によるところが大きいんですよ。
ボタンは単なる発射装置であり、自機と離れていても違和感はないはずです。
ところが、レバーが左側で自機が右側にあると、操作しづらい。
なぜレバーが左にあるのかはわかりませんが……。(カプコン開発部)



(ゲーム&ウオッチ)


僕は任天堂の横井軍平が、
ゲームウォッチドンキーコングの左に十字キーをつけたのが
後のファミコンに通ずる決定要因じゃないかと思ったのですが、

【ファミコンはこうして生まれた】 第5回:
試行錯誤のなかから十字ボタンを見いだす - 家電・PC - Tech-On!
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081106/160879/?P=5&rt=nocnt


この十字ボタンは,ゲーム機の左側についている。
本来,複雑な動作を指示するボタンは,右側についているのが自然である。
右ききの人が多いからだ。


一方,当時の業務用のゲーム機は,ジョイスティックが左についていた。
ゲーム&ウォッチでもとりあえず業務用のゲーム機に倣って,
十字ボタンを左側に配置することにしたという。


横井自身も,
「感覚的には右側にあるのが普通だと思う。
ゲーム&ウォッチ以降,今日まで左に十字ボタンを付けるのが
テレビ・ ゲーム機の流れになってしまった。おかしな話だ」
と語る。


え、アーケードゲームが原因なの?
確かにスーパーマリオなんか、ジャンプ中の軌道も変えられるし
繊細なアクロバティックするから(右利き前提として)
右に繊細な十字キーをつけて、
左ボタンでジャンプやBダッシュ、
そして左スクロールするのが理にかなってると思う。


まあゲームウォッチ以来30年の慣れを今更変えらると発狂するけど。

スペースインベーダーも右手で移動できた?

ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか - 最終防衛ライン2
http://d.hatena.ne.jp/lastline/20080329/1206781018


最初期のアーケードゲームが、
中央にレバー、左右にボタンがあり、どっちのボタンも同じ機能という、
両利き対応でしたが、次第に重要なショットボタンを右につけた、
右利き用のレイアウトが主になっていきました。

「ボタンが右側にあるという事は、飛び道具やパンチは右に進むべき」なので、
そこから右向きスクロールゲームが定番になったんじゃないかと。


島国@ぽっくり

スペースインベーダー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC



初期のアップライトはコンパネ
(レバーやボタンがある部分の事で、コントロールパネルの略)が
左右移動+発射の3ボタン仕様であったが、
すぐに2方向ジョイスティック+発射ボタンになった。


右でも左でもショットが打てた。
あるいは、右の2ボタンで左右に移動して、
左の1ボタンでショットというタイプもあり
どの時点で左レバーに統一されたのか判断がつきませんね。


インベーダーだと海賊亜流品も多く、コンパネも自由にいじれたでしょうから
これは地域によって印象が違うかもしれません。



パックランドなんかも、右2ボタンの移動で
左ボタンがジャンプでしたが、
この思想はファミコン移植でも受け継がれ
十字キーでジャンプ、ABボタンで移動でした。
IIコントローラーだと、
十字キー移動、ABジャンプが可能でしたね。


でも以下が一番有力な説だと思われます。

右利きは右手に剣や銃を持つ

ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか - 最終防衛ライン2
http://d.hatena.ne.jp/lastline/20080329/1206781018


右にアクションボタンが配された理由は、トリガーを右で引く、
また右利きの人が連打する場合は右が良いからということだろう。


身体性の一致として、右手に剣や銃をもちたいということ。
右利きの人にとって右手が最有力の攻撃手段なんですね。


レバーではなく、
まずショットやアタックありきでボタンが配置され
相対的にレバーの位置が決まり、
それがゲームウォッチやファミコンに受け継がれ、
x座標や、レバー位置と合致したキャラクターが左に配置され、
右にスクロールするようになった。


と、考えるのが一番しっくりきます。
結果、右スクロールは右へ文字を読む欧米人にも都合がいいですね。


もしTVゲームの父と呼ばれた横井軍平がこの疑問を抱えたまま
右に十字キーをつけてたら、ファミコンはガラパゴス化してたでしょうか?




(思い出のゲーム機達)



いや、写真に他意はないですが。


右の物語で行くべきか、左の物語で行くべきか


映画とゲームとごっちゃに語りましたが、
右に進むか左に進むかは
「右利き仕様」と「文字文化の違い」に原因を求めることができ、
上手の右が上位で、下手の左が下位というのは、
その後に作られた各国の様式美ではないかと思います。


日本では右向きのハリウッドも、
左向きの日本アニメもヒットしてますし
アメリカでも左向き漫画発のセーラームーンアニメや、
ドラゴンボールアニメはヒットしてます。


左スクロールではないですが、
左向きにバトルするファイナルファンタジーや、
左向きの演出と指摘されたメタルギアソリッドも
世界で500万本前後の売り上げを続けてますし、
最初の慣れを超えたら、左スクロールの
スパルタンXも、スカイキッドも、サッカーゲームのコートチェンジも
コントローラーの身体性に違和感は感じません。


格闘ゲーム初心者が左の昇竜拳が打てないとかはありますけど
あれは親指をたたんで十字キーの左下を複雑に操作するのと、
トレーニングや1Pの標準が左キャラゆえの慣れがからんでるので、
アーケードスティックで2P側の練習してたら慣れます。


そういう最初のつかみさえ乗り越えたらさして問題ないのだけど、
その最初のつかみこそ大事だったりするわけで。

様式美の型が決まってるのにあえて冒険する必要はないとも思うし、
その型をあえて破ることがつかみになることもある。


結局どの文化にとって右向きの物語なのか、左向きの物語なのか
というのは、作る中身と届けるターゲットによって決まりそうです。

「映画の見方」のように
こういったものさしをもって画面構成をみていくのは
物語の違った視点が見えて面白いかもしれませんね。


参考URL


映画が抱えるお約束事 - 映画の見方 
http://d.hatena.ne.jp/baphoo/20120109/p1


日本映画?ガラパゴス? - 映画の見方 
http://d.hatena.ne.jp/baphoo/20120116/p1


ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか - 最終防衛ライン2
http://d.hatena.ne.jp/lastline/20080329/1206781018


れとろげーむまにあ: 横スクロールSTGが左から右へスクロールする理由
http://nesgbgg.seesaa.net/article/150260347.html


物語の進行方向について(日本漫画のメリットとか):島国大和のド畜生
http://dochikushow.blog3.fc2.com/blog-entry-770.html


ゲームの進行方向の話(アムロは左に向かうがマリオは右に向かって進むのは何故か?):島国大和のド畜生
http://dochikushow.blog3.fc2.com/blog-entry-773.html


社長が訊く『NHK紅白クイズ合戦』
http://www.nintendo.co.jp/wii/interview/rqij/vol1/index6.html
(大脳生理がなんでそう判断するのかの原因が知りたいですね)


映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)
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