叱るルール

会社員は能力よりも印象が大事 - 脱社畜ブログ
http://dennou-kurage.hatenablog.com/entry/2014/01/06/205831

まだ僕が会社で働いていた時の話だが、同僚に「よく怒られている」人がいた。

資料を作成すれば「ここが抜けてる、構成が悪い」と叱責され、
意見を言えば「考えが足りない」と指摘され、
質問をすれば「質問の仕方が悪い」と怒られる。
僕は子どものころから、ずっと「他人が怒られている」ところを見るのが
ものすごくイヤだったので、その人が怒られるたびに
なんだか自分まで落ち込んでいた。

資料の構成が悪いであるとか、質問の仕方が悪いという指摘は、
まあたしかに言われてみればその通りという側面もあって、
何の意味もなく怒られていたというわけではない。
ただ、どうも腑に落ちない感じがしたのは、
「その人ばかり」が怒られていることだ。

例えば、その人が作って怒られたものとまったく同じ資料を、
違う人が作って持っていっても、同じようには怒られない。
意見も、その人が言えば「考えが足りない」ということになるが、
違う人が同じことを言えば言えば普通に一意見として取り入れられる。
質問についても同様で、まったく同じ質問をその人以外の人がした場合は、
質問の仕方が悪いとは言われない。

結局のところ、その人は「仕事ができない」
という印象を持たれてしまっていたのである。
こんなふうに、一度「仕事ができない」という印象を持たれてしまうと、
その後もずっとそういうバイアスがかかり続ける。
実際にはもうほとんど改善されて、
能力としては周りと大差ないレベルになっていたとしても、
一度形成されてしまった印象はそう簡単には覆らない。
評価を根本から覆すような大きな出来事でも起こらない限り、
ずっと「仕事ができない」人として扱われ続けてしまう。

「仕事ができる」という印象を持たれている人だって、
細かいところを見ていけば案外やり方がよくないところが見つかったりする。
それでも、「仕事ができる」印象がある人は、いい部分ばかりが強調されて、
それによってますます「仕事ができる」人として認知されていく。
一方で、「仕事ができない」印象を持たれている人は、
悪い部分ばかりが強調されて、
「仕事ができない」イメージがどんどん強くなっていく。
第一印象がその人に与える影響は、あまりにも大きい。

そういう意味で、職場における「最初の振る舞い」は
ものすごく重要ということになる。
新入社員は特に注意しなければならない。
新入社員だからと言って、ヘンに萎縮してしまって
最初に舐められてしまうと非常に厄介だ。


元記事は新入社員向けですが、
逆に管理者や教育者が印象でレッテルを貼ると、
せっかく能力がある人を萎縮させ、本来の能力の10分の1も出せなかったり
むしろ足手まといにさせたりします。

給料を払って、時間をかけて教育して、
それなのに本来の10分の1も働けない人を作りだしてるとしたら問題ですよね。
なので僕が叱るときのルールを書いてみます。


叱りすぎて、部下が萎縮してそれでミスして
ますます叱る事が増えて、
悪循環におちいってないだろうか?
というチェックルール。

教育において「叱る」ことは必須ではありません。
間違った叱り方で上記の悪循環や、ニートや、非行にだって走ります。
いくつかその基準をあげます。

1,脊髄反射で叱っていいのはケガや生命の危険があるとき

ここはそのままですね。

2,世間一般の道徳に違反してるから叱るのはグレーゾーン

道徳の基準が文化や人それぞれなので、
自分が思う世間一般常識では理解してもらえません。
子供ならそれを一緒に考えるのが妥当なのですが、
そんな暇ないとか、自分の思うように育てたいとかであれば

「自分がそのやり方は嫌だから叱る」

でいいわけです。
論理的整合性や、効率はひとまず置いといて、
それが自分のこだわりなんだと。

そういう単純な判断基準にしていいです。

少し信頼度は下がるかもしれませんが
仕事でも権限持ってる人が叱るから通じます。

その責任を世間一般に転化すると定義が抽象的すぎて、
相手はその場で納得したふりをするだけで、再び同じ場面に会っても
判断の基準がわからず同じミスをします。

3,仕事をなめてるとき

1、2、は脊髄反射で叱れますが、これは計画的に叱るわけです。
単純に仕事に緊張感を持たせる、喝を入れるという部類なので
訳の分からない沸点で怒るわけでもなく、
マネジメント的な意味合いがあります。

4,上に満たない条件で叱ってはいけない

説明ができないから叱るとか、
相手が屁理屈いうから叱るとか、
例え子供でも口で勝てない相手を無理やり叱ると
叱られる基準がわからなくなるので、同じミスをします。

この場合は、無理やり一般常識化せず
2の「自分が嫌だから叱る」という、
自分の責任内に持って行きましょう。

5,叱った内容を確認する

矛盾なく叱るのは難しいです。
「今は一つのことだけに集中しろ!」といった翌日に
「もっと周りをよく見ろ!!」なんて言ったり、
叱る人が違うだけで、別の人がどう叱ったかわからないですし
日本語の捉え方もかなり自由すぎて、
かつひとりひとり常識が違うので
言った通りの斜め上に解釈されることもあります。

結局相手からコミュニケーションを返してもらわないと理解に至らないので
叱ると空気を読んで黙ってしまう人は、
かなりの確率で意図と違った解釈をしてます。

「叱る」は一方的なコミュニケーションになりがちなので、
指導する方法としてはあまり向かないのですが、
それでも叱った後は、ちゃんと確認を取りましょう。

このとき他人と常識が違うのは当然なので、根気よく擦り合わせ、
自分の間違いは柔軟に認める必要があります。
だから「叱る」には覚悟がいるわけですが
ヒートアップしてたらそれも無理でしょう。
そのときは2に逃げましょう。

6,叱るのが長い時は注意

30分とか、1時間以上叱る人もいます。
これは論点がズレまくりで、最初に言ったことを忘れ、
何が一番重要かも理解してもらえません。

叱るときは短く1点に絞って。
長くても10分あれば充分。

7,叱るのが過去の案件に及んだら注意

叱るの長い時にはだいたい過去の案件までもちだされますが、
今の件だけを叱りましょう。
過去の案件は、叱る側にはわからない別の理由や本人の言い分や
振りきって終わらせた思いなどがあります。

それを掘り返すと、口には出さない本人の言い分や、別の理由や反論で
彼の思考が埋まってしまい、せっかく今の件を叱ってることすらも
無意味になってしまいます。

8,叱るのが人格攻撃になったら注意

ダメ人間の暗示強化で、萎縮させるだけです。
気が強ければ、言葉も届かずただ恨まれるだけです。
まったくお互いの為になりません。


叱るルールはここまで。
以下は叱らない方法の解説。

ピグマリオン効果

できないという印象で人を扱って、
ますますできない人に誘導してしまう事をピグマリオン効果と呼ぶそうです。
(正確には期待に誘導される)

ピグマリオン効果|モチベーション向上の法則
http://www.motivation-up.com/motivation/pygmalion.html

「人間は期待された通りの成果を出す傾向がある」


ある実験で、
「成績の優秀な生徒達を集めたクラス」と
「成績の悪い生徒達を集めたクラス」を作り、
それぞれのクラスの担任に逆のことを言ってクラスを担当させます。

つまり、
「成績の良い生徒のクラス」の担任には「成績の悪い生徒のクラス」だと告げ、
「成績の悪い生徒のクラス」の担任には「成績の良い生徒のクラス」だと告げて
それぞれクラスを担当させるという実験です。

その結果、
「もともと成績の良かった生徒達のクラス」の成績は下がり、
「もともと成績の悪かった生徒たちのクラス」の成績は上がったと言います。

優秀な人は良い教育者になりにくい

部下を教育するとき、無意識で相手の印象を決める
ピグマリオン効果は避けられません。
一番の基準は自分と比べてこいつはどうか?です。

嘘や演技でなく、
心から期待をしてピグマリオン効果が最大限になるときは、
「こいつは俺がかなわないぐらいすごい可能性を秘めてる」
という風に部下や生徒を格上に見てる時です。

つまり教育者自身が成績優秀なほど、
その差分は無くなるどころか自分ほど優秀では無いのではないか?
殆どの場合マイナスにピグマリオン効果が発揮されます。

測る物差しも自分が成功したやり方を強く信じてるので
何か次世代の革新的なやり方も否定します。
教育におけるイノベーションのジレンマです。


僕らはいつも、実績があり、成績優秀な人のノウハウを期待して
教育者を選定するのですが、それだけでは全く逆効果です。

成績優秀な人ほど、心から相手を凄いと思える割合が減って
無意識で格下に扱ってしまいます。
ピグマリオン効果では名選手こそ、悪い生徒を生み出します。

むしろそこまで成績はパッとしないのだけど、
自分の息子や娘に夢を託す親なんかは、
「こいつは俺がかなわないぐらいすごい可能性を秘めてる」
と、自分の成績からしても信じやすいので、
自分の子供限定で名コーチになれたりするかもしれません。

自分がピグマリオン効果で人を見てるかどうかは気づけない

他人にレッテル貼るのはしたくないところですが、
なんらかのレッテル付けで人を判断しないと
どう接していいかもわからなくなります。

もし「男子三日会わざれば刮目して見よ」として、
3日ごとに記憶をリセットして初対面のように評価しなおしてたら
気軽な人間関係を築くことも出来ないでしょう。

ダメな教育者が、優秀な教育者に変わる瞬間

まさに上の記事のような特定の人だけを叱る教育者がいました。
その人が自分の新上司を短期間で教える機会があったのですが
そのときはパーフェクトな指導で、全くの素人上司なのに
本来1ヶ月かかるそれが5日で終わりました。

上司向けと部下向けで指導方針が真逆だったのです。
列挙してみると、

上司「ミスしても適切なアドバイスをして叱らない」
部下「ミスしたら2度とミスしないよう烈火で叱る」

上司「同じミスをしても教え方が悪いと思って、別の言い方や切り口で何度でも教える」
部下「ふざけんな死ね!!」

上司「仕事の効率だけ考えて8割でよく、完璧を目指さない」
部下「100%完璧にできるまで先に進むな!!」
(ちなみに誰も100%完璧にできるやつはいない)

上司「本来やってはいけないルール違反のうまく手を抜くポイントを教える」
部下「当然ルール厳守で時間内にこなせ!!」
(実際は自分も同僚もなんらかの違反で手を抜いてる)

上司「上司の工夫は何でも褒める。そして傷つけない形で本来のやり方の利点を述べる」
部下「今後一切勝手なことするな!!!」

上司「教える相手に自分からホウレンソウしにいく」
部下「わからなくなったらとにかく聞きに来い。とにかくまず自分で調べてから聞きに来い。のコンボでどっちにしても叱る」

上司「上司が聞いたら仕事の手を止めていつでも教える」
部下「聞いてくるなオーラをまがまがと放つ」

上司「自分で一貫して教える」
部下「複数の人が違うやり方を教えて、それをするとキレる」


多少誇張してますが、こんな感じで教え方が真逆でした。
この様子を見てた僕は、普段クソなのに
実はここまで優秀な指導者だったのかと感心したのですが
部下に対してはクソなままでしたねw

なぜ、結果もでる優秀な方の指導をしないのか?

このときは本人も周りも、元々デキる上司が凄い
という評価で「教え方がとても良かった」という評価は
誰も指摘しませんでした。
まあ、ただの腰ぎんちゃくにしか見えませんしね。


一応聞いたんですよ。
あの教え方で5日で新人指導したら?と。
帰ってきた答えは、、


「なぜ俺が、新人にヘコヘコしなければいけないのだ?」
「新人は基礎をみっちりこなさないとダメだろ。」
「それに、ああすると俺の時間が取られる。」
「そもそもほとんどは上司のやる気と、能力が高いおかげだ。」
「仮にやる気のある奴が5日でできたとして、他の同僚がそれを認めないだろ?」


なるほど、、、
ヘコヘコしないでも、フラットに接するとか、
自分達を棚に上げてどうせ誰も守ってない基礎を教える意味とか、
(ほんとの土台的な基礎なら反対はしないのだが、ただのやり方だし、、)
5日で終わればむしろ時間増えるだろとか、
やる気や吸収力は新人の方がむしろ高いとか思ったけど、
「同じ環境で育った他の同僚が認めない」のは言い返せないなと思いました。*1

いつもは上司も含めみんな何かしらミスをしては、
責任分散で仕方ないとミスを改めれない組織だったので、
5日で即席したとか言うと、ミスしたとき責任を問われそうです。

つまり本来5日で覚えれることを、わざわざ1ヶ月かけて育てるのも
何を覚えたかより、どれだけ時間をかけたかという
担保のための責任分散システム。

その上でのミスなら仕方ないと。


、、なんかひどくモヤモヤするのですが、
これはとても良い反面教師となり、以後
「心の中では部下をデキる上司として扱う」
「相手の可能性を徹底して尊重する」

という指導方針は、わりと良い結果を生むようになりました。↓


なぜ新人は聞きに来ないのか? - teruyastarはかく語りき
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20091118/1258499089

まあ、賛否両論でこれが答えというわけでも無いでしょうが
叱るというのは、一言一言が全部正論なので
言ってる方は、全体の矛盾や、他人の叱りや、
相手の解釈違いに全く気づけないんですよね。

叱るルールと、
悪循環の方のピグマリオン効果におちいってないかは
一度意識しておくと、それなりの歯止めとなるので
何かヒントになれば幸いです。


追記。相手を尊重するにも、ほんとに態度からダメな奴はどうするんだ?

いやあ、一度ぶん殴られるぐらい態度が悪いバイトがいたんですが、
「こんな仕事、適当にこなせばいいだろ」とか、
ほんとにやる気なさそうで口も悪くてぶん殴られて、
印象悪いままやたら叱られる人です。

でも遅刻しないし、今から思えばホントは覚えも悪くないし、
仕事真面目にするどころか
時給の付かない仕事前にたまに掃除をすすんでしたり、
ほんとに忙しい時は自らタイムカード押して、
勝手にサービス残業始めたり(みんな止めるけど聞かないw)
実際はぶん殴られる前から社員以上によく働く人でした。

よくよく話を聞いてみるとむしろバイトなのに意識が高すぎて、
こんな仕事とか、中二病的に悪ぶってたみたいなんですよね。
最初は仕事出来ない人に見られて無駄に叱られまくってたけど、
1年ぐらいして所々でみんな気づいて、社員にならないかと誘われたり*2
仕事できる人として扱われだしたらうまくまわるようになった。

ホリエモンみたいな、態度が露悪的な人に含まれるんでしょうけど
こういう人は例外なのか、
それだけでクビや不採用だったりであまり見かけないのか、
本人の態度や口にする意欲が悪くても
それが行動と一致するわけではないと反省。
以後、口や態度が悪い人だと僕が最初に仲良くなる事が多い気がします。
良くも悪くも表面に現れてる態度が信用できなくなったので。
面接で仕事ぶりを判断するなんてまずできないですw


健全な場所で巡りあった人なら
なんらかの見込みや接し方はありますよ。
本当に心ここにあらずというのは、
話てたらわかりますし。

まあでも、その態度で切られたらしょうがないと思いますし、
最初の態度を正して信用してもらうのに
給料以上の仕事ぶりで1年以上もかかるということであれば
やはり最初の印象間違えたら損ですよね。

追記2。あえてみんなの前で叱って他の人を教育する人がいる。

コーチング本なんかでは、
みんなの前で叱るのはプライドを強く傷つけ、
叱られた人の周りの評価を余計に下げてしまうので
叱るときは別室で叱りましょう。

というような教えがあったりしますが、
実はあえてみんなの前で叱るという方法が存在します。

あえてみんなの前で叱ることで、
他の人がそれをやっちゃいけないと自覚する
「人の振り見て我が振り直せ」

もわりと効果的なのです。

これはみんなには有効でも、
叱られてる本人にはよりダメージ大きくなるだけなので
やっちゃいけないことではあるのですが、
その効果を知っててあえて叱る人がいます。
他の人には言いにくいことも、叱りやすい人を強く叱って
間接的にメッセージを伝えるとか、
自分の立場を強化したいとかもあるのでしょう。


そんなことのためにあえて必要以上に叱られるとしたら、
その人は叱られ料という名目の給料を
もらってもいいような気がするんですが。。。*3

そんな理由で叱る人がいる
ということは知っておいたほうがいいです。

あと、単純にドSな人とか、叱ることに慣れてアドレナリン放出したりするので、
それはもう泣いてでも配置転換なり転職したほうが吉ですね。


関連:

ジュースこぼしちゃった - teruyastarはかく語りき
http://d.hatena.ne.jp/teruyastar/20100805/1280954384

*1:そのときはそう思ったのですが、数値はかるような企業文化によってはやってみたら案外いけそうな気もします。

*2:そのうちどっかいっちゃいましたが

*3:ダメと思われてた人が実は反面教師で良い教育効果を発揮してたとするなら、もう何が無駄なのかわからなくなりますね。