teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

ヘタウマってなんだ?

去年の番組ですがちょっと面白かったのでメモ。


NHK|ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅱ「ヘタウマって何だ」
http://www.nhk.or.jp/subculture/lecture05.html

ヘタウマ - Wikipedia

物事には本来「ウマい」と「ヘタ」の相反する概念があり、上達するということはヘタな所からウマい所へ上ってゆくことで、二極の間には一筋の道が存在。しかし、両者とは全く別の尺度である「オモシロい」という「第三極」が現れ、「オモシロい」物にメディアが注目すれば、大衆もこれに追随するという図式が成り立ってゆく。

その中で多少上手くなくとも面白ければ良い、つまり技巧にかかわらず何らかのかたちで琴線に触れる作品であれば受け入れられるという文化的基層の下に、「ヘタウマ」文化が芽生えていったといえる。


番組で説明されてたのですが以下の4つの組み合わせがあったとして、
クリエイティブに関してどう取り組んでいくべきでしょうか?
自分で順位をつけるとしたら、どうなりますか?
特に答えがあるわけではないですが、興味がある方は考えてみましょう。


1.ウマウマ
技術的にもうまく、心にも響く作品

2.ウマヘタ
技術的にはうまいが、心には響かない作品

3.ヘタウマ
技術的には未熟だが、心にも響く作品

4.ヘタヘタ
技術的に未熟で、心にも響かない作品




















……順位つけましたか?

番組のコメンテーターは、ここまでのテーマを語ってきたので
ヘタウマを1位に上げてましたが、
2位は、ビジネス的にはウマウマで
現場でもウマウマを求められる、とありました。

確かにそうかもしれません。
でもバケツでごはんの 湯村輝彦 の順位はこうだったそうです。

1.ヘタウマ
2.ヘタヘタ
3.ウマウマ
4.ウマヘタ


2位が「ヘタヘタ」なんですね。

表現の世界ではうまい奴だけが報われるわけじゃない。
50年かけてデッサン完璧にできる奴が、子供の落書きに負ける瞬間がある。
なんかそう言われると、ちょっと思う所ありますよね。

練習するよりもそれを表現したいという初期衝動が大事。

ヘタウマな例あれこれ

■番組では他の例としてキース・ヘリングやバスキアなどをだし
「セックス・ピストルズ」にいたっては技術などいらない、
3つコードを覚えれば音楽はできる。
むしろ練習しちゃいけないと言ってたそうです。


■このプロジェクトは、子供のヘタと、大人のウマを合わせた企画ですね。

子どもの落書きからプロがリアルなモンスターを描く「The Monster Engine」 - GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20111214-the-monster-engine/


■ドラクエの企画でも堀井雄二から鳥山明で似たような変換が行われてます。

堀井雄二のラフスケッチ案から鳥山明による魅力的なイラストへの変貌をご覧ください - NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2135436560964776401


www.nicovideo.jp
■ニンジャスレイヤーなんかは、ヘタウマでしょうか?
ヘタヘタでしょうか?
でもなにか伝わってくるものはありますよね。

今の日本映画にもの申す…「レベルが本当に低い!」 英映画配給会社代表が苦言 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

「日本映画の大作、例えば『進撃の巨人』はアメリカのテレビドラマっぽくてすごくレベルが低い。何でみんな恥ずかしくないの?」と一刀両断。最近目立って量産されているコミックが原作の恋愛映画についても「ハーッ」と大きなため息をついた。日本で主流になっている「製作委員会方式」に不満があるようだ。リスクの分散・回避のために複数のスポンサー企業が製作費を出資するシステムだ。

■みんなが酷評する漫画の実写映画化ですが、
これも「ヘタウマ」「ヘタヘタ」の視点で見ると
結構味のあるものに変わるんじゃないでしょうか?
「ヘタヘタ」だと思ってても意外と興行収入が悪くないこともあります。


■スタジオジブリが素人の声優を使うのも、ある意味ヘタウマな感じをうけます。
www.youtube.com


■ファミコンや、PS1のゲームなんかは全体的に
「ヘタウマ」もしくは「ヘタヘタ」ですよね。
それはファミコン表現力が1キャラ3色(+抜き)しかなかったり、
PS1のポリゴン能力の限界からきてるのですが、
じゃあPS2になって、「ウマウマ」「ウマヘタ」の表現力を手に入れたら
ゲームはもっと面白く心に残るようになったかというと、
必ずしもそうとは限らない。


■ハイテクをウマ、ローテクをヘタと考えてもいいですよね。
そうすると任天堂の「枯れた技術の水平思考」なんてのは
ヘタウマを言い換えた言葉かもしれない。


■日本のアイドルだってジャンルとしては「ヘタウマ」じゃないでしょうか?
ジャニーズやAKBが売れてるから、一番歌がうまいかというとそうではない。
本気で上手い人たちには届かないながらも一生懸命頑張ってる姿のほうが胸を打つものもある。


■ピカソは本来絵がうまいはずなんですが、
やっと子供のように絵がかけるようになったと、あの抽象画にたどり着いたそうです。


■吼えよペンでの富士鷹ジュビロは、アシスタントのスタッフに
「うますぎるからダメだ!魂の困ったキャラは歪であるべき!」
とかいう場面もありました。
ウマすぎるのもやはり心に届かないようです。

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■同人で東方ジャンルがありますが、確かあの絵も
オリジナルはずっと「ヘタヘタ」のままですよね。
www.youtube.com


■少年ジャンプなんかも、絵がうまくなりすぎるとダメになるのかもしれません。
ジャンプが勢いづくのは「新人の連載が始まるとき」なので、
新人の最初の絵はヘタだったりしますから。
最初からうまい絵は、子供に受けづらいかもしれません。

「ヘタ」における「共感」と「補完」

湯村さんが2番めに「ヘタヘタ」を上げてるのに
明確な定義の解説はなかったのですが
「共感」と「補完」という仮説を立ててみます。


■「共感」
この演奏なら自分でもできそうとか、この絵なら自分でも書けそうとか、
自分の能力で手の届く範囲にありそうなものは「共感」を得やすいのだと思います。
逆にものすごい技術でセンス溢れる作品は圧倒こそされても、
自分が手の届く範囲にあるとは思わないでしょう。
高嶺の花ほど、声をかけれないような。


■「補完」
というのは、その作品が未完成だからこそ自分の脳内で「補完」したい
自分できちんと磨いてみたいとか、
作品の完成が見てる人の脳内で行われる感じでしょうか。
未完成だから、アラがあるからこそ自分で「補完」してより愛情を感じられるような。

「ヘタ」にはそういう効果があるのかもしれません。

ヘタでもステージに立とう

ヘタウマの考え方というのは、例えばコンテンツをなにか作っていくとして
資本のないところから始まるときなんか助けになると思うんですよね。
たいてい「うまい」のところにお金も人も時間もかかるわけですけど、
最初はヘタでもいいんじゃないかと。

練習するなとはいわないけど、初期衝動でステージに上がるのは悪く無いですよね。
ヘタはヘタなりの味があると思えば、
ステージに上がりながら磨かれるのも有りなんじゃないかと
ヘタはヘタなりの攻め方があるんじゃないかと、この番組見て思いました。


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