teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

「金儲けは汚い」みたいな無意識の価値観はどこで身についたのだろうか?

anond.hatelabo.jp

一考に値するとてもいい疑問。

僕が思いつく教育は

「正直でありなさい(悪い事してはいけません)」
「和を大事にしなさい(丸く収めましょう)」
「相手の心を察してあげなさい(空気読みなさい)」

どこの家庭や学校や部活やサークルや会社でもやってそうな教育。
これは「秩序」や「治安」のためにはとてもよい教育だが、商売の「交渉」と相反する。

スティーブ・ジョブズがアタリから700$で引き受けたブロック崩しゲームの仕事で、相棒のウォズニアックに任せて350$を山分けした事があるが、ジョブスが実際に引き受けた額は5000$。ウォズはその事を後で知っても怒ったりはせず25セントでも引き受けただろうと語る。

僕らが考えるとジョブスのやったことは「正直ではない悪いこと」であり、関係もそこで破綻する恐れさえある。しかしまあ、たいていの社長は雇用者を安く扱えるよう同じ構図の「交渉」を成立させてるわけで、その額を知ってる中間管理職も自身の地位と引き換えに甘んじてる。

ではアメリカのようになんでもかんでも労働組合作って、ストやって、仕事は手を抜いて、労働者の権利を勝ち取ろうというのも「和を大事にしなさい」「空気読みなさい」という圧力でなかなか動かない。

アメリカのような多民族移民国家では、自分を主張しないと伝わらないし生き残れないし「自由」を「独立運動」で勝ち取って出来上がった国であるからこそ、主張するという文化も作られる。

日本は長年日本を収めてた徳川幕府から、大きな仕事はお上から降ってくるものであって、役所や省庁が巨大な財権力を持つ。

悪いことはせず、丸く収め、空気を読もうとすると「人と同じことをやるのが正しい」となってしまい、良くも悪くも「他人を出し抜く」「人と違ったことをする」「あえて尖ったことをやる」なんて発想には至らず、「起業」や「社長」という選択肢も狭めていく。

HDDになんの免震装置も、DRMすら搭載してないiPodなんてユーザーにも音楽業界に対しても「悪いこと」はできないし、勝手に他人のWebサイトをキャッシュするGoogle検索なんて「悪いこと」もできない。

「交渉が苦手」というのは、エンジニアとかアニメーターとか、普通のサラリーマンでも自ら昇給の交渉というのはおこがましくてやらない。そういや最近1年半も給与不払いのアニメーターがTwitterで訴えてたけど、その会社は資金不足とかではないのでなんらかの支払いミスが続いてたのかすぐ払ってもらえた模様。個人事業主が「全部やってもらえるだろう」と考えてたとしても、「正当な報酬を請求する」ことすら後ろめたい、苦手とする人は、、、、身近にもかなりいる。


前にロンドンハーツで「国生さゆり」がおニャン子クラブ1期生として自分のギャラを交渉して上げてもらった話があったが、同期の新田恵利はそんな交渉してないので同じおニャン子でこの2人はギャラに相当な開きが合ったと暴露していた。

番組で国生は「ギャラ交渉すればよかったのに」と言い放つものの、普通の日本人、ましてや未成年アイドルは自らギャラ交渉などやらないだろう。それより昔のピンクレディーもペッパー警部のデビューから大ヒットで数百億稼いでるはずが、1年目月給5万、2年目10万、3年目15万、4年目150万。解散5年目が350万で、5年で一人総額5000万に満たないとか。

これもピンクレディーから交渉したわけではなく、当時の週刊誌で薄給がバレて騒がれたから4年目から上がったようだ。週刊誌にバレず4年目20万、5年目25万だったら数百億のうち、活動5年で800万しかもらえなかったことに。
まあ、今のAKBみたいにチームで替えがいくらでもいるアイドルのギャラ交渉難しいけどね。

中国では1985年の、鄧小平による
「富めるものから富め」という先富論が出てきた。
共産主義でありながら、資本主義への改革開放となる。
我先に稼いでよしとなると、それを邪魔する文化はなかったのが功を奏しアメリカの成長率を上回りながら経済大国2位となっている。

しかし「正直でありなさい(悪い事してはいけません)」はIT系のオープンソース文化にもあって、Wikipediaの運営はサーバー費用が相当かかるのに広告を一切載せないで寄付だけでなんとかしようとするし、Googleもシュミットが説得するまで広告を載せない姿勢を貫いてたうえ、「Don't Eivl」の標語すらあった。広告で金を得るのはWikipediaの記事の信頼性や、検索の体験として悪という考えだね。

「和を大事にしなさい(丸く収めましょう)」も商人には「三方良し」という考えがあるし、「相手の心を察してあげなさい(空気読みなさい)」もビジネスで重要な場面が出てくる。

つまり日本で行われるこの3つの教育に関してはもう一段高いレベルが望まれる。
今行われてる教育レベルは、

「法やルールを守るために、正直でありなさい」
「相手とぶつからないよう、ケンカをしないために、和を大事にしなさい」
「相手のメンツをつぶさないよう、空気読みなさい」

という形になるのだが、これは失敗の本質で言われるようなメンツとルールを守って中でケンカしないために、本質的な議論を回避して何のPDCAも回らずたくさんの命を落とすことになる。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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もうひとつ上の教育というのは

 「なんのためにそのルールができたのかを考え抜き、その本質を今の時代に合わせるために、あなた自身に正直でありなさい」

「すぐ裏切られたり、結果のでない友情などお互いのためにならないので、心からの和を結ぶために、和を大事にするほど相手と本気でぶつかりあいなさい」

「しかし、相手や自分にメンツや感情があっては対話や本質的議論にならないので、
そこで失礼のないよう相手にも自分にも高貴な態度で、空気を読み、対話の準備を終えてから、本質的な議論へ集中しなさい」

と、なるんじゃないだろうか。

つきなみだけど日本人は交渉のため、もっと転職エージェントに登録して自分の価値を常にはかり、副業をもって収入源を複数にし、条件合わなければいつでも起業する準備をしておくなどの、よりよい交渉の武器を増やしていくほうが、いちいちクビや左遷を恐れて上司の顔色をうかがう必要もない本質的な議論ができ、仕事もうまくいくかもしれませんね。