teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

日本が世界に取り残されてるわけではない。世界が日本より遅れているのだ。

このスレッドが興味深い。

マイノリティを弱く守るキャラではなく、主役にしてもどこにおいても属性とは関係なくフツーに描くというのは良い。良かれと思って弱く守るキャラとして描かれるとそう扱われることが別の偏見となり、マイノリティの可能性をスポイルさせかねない。

昔はマイノリティに深く光を当てることそのものが珍しくインパクトがあった。ゆえに弱く悲しい守られるキャラで描かれた。マイノリティの認知度が上がった今は、属性の一つとしてフツーに描く方がむしろステレオタイプに逆らって珍しくインパクトがあるというターンだ。マイノリティを弱く守る形で描かないのは視聴者が多様な価値観を学ぶうえで大事。いずれマイノリティも珍しくなくインパクトもなくなった方が暮らしやすくなるだろう。

ここはいいとして、問題はもうひとつの方。
役者は当事者による表象として選ぶべきだという世界的潮流の話。
黒人の役は黒人がやれ、日本人の役は日本人がやれ、障害者やLGBTQはそれをカミングアウトした役者がやれという話だ。

結構無茶いってる。
自分ではない何かを演じる事も役者の本分であり、宝塚も女形を使う歌舞伎もなくなってしまう。海外は声優業界にも影響を及ぼしている。黒人役は黒人の声優、アジア人の役はアジアの声優を使うべきだと。そのうち子役は子供の声優を使わざるを得なくなり、碇シンジは緒方恵美ではなくリアル14歳の男の子声優でなければいけなくなるかもしれない。


世界的なこの流れは白人が黒塗りになって黒人の人気芸を真似たミンストレル・ショーに由来するものだ。黒人奴隷を主に扱ってた南アメリカの負の歴史である。アメリカ以前はヨーロッパも黒人の奴隷貿易を行ってたので欧米全体に広まってる。

この運動の主題は「黒人の仕事を奪うな」「黒人を差別するな」であり、ひいては「(アジア含む)人種差別するな」につながりみんなの共感を呼んでいる。そこまではいいが「文化の盗用」「ポリコレ」といった概念はおかしい。白人が和風の着物ファッションで海外ファッション雑誌のトップを飾っても怒る日本人などいない。なんであいつら日本人差し置いて勝手に怒ってんだ。


白人がアジア人が黒人の芸を真似てもいいし、ドゥワップやレゲエを歌ってもいいし、ドレッドにしてもいいし、カポエラ習ってもいいし、ミンストレル・ショーは許されていいのだ。もちろん黒人がロックを歌ってもいいし、空手をやってもいいし、着物を着ても、侍や忍者になっても、アニソンや演歌を歌っても、相撲で横綱になっても構わない。

例えどんな負の歴史と傷があったとしても、ミンストレル・ショーを旗印に国際運動するのは誤ったコンプレックスの発露だ。ツイッターフェミニストが、むしろフェミニストの価値を地に落とし、女性の仕事を奪い、女性の立場を危うくしてるように、ミンストレル・ショーで騒ぐほうが逆に黒人やマイノリティの仕事を狭めることになる。

そんな運動をしても仕事など戻ってこず、むしろ扱いがやっかいになって仕事が減る可能性がある。フェミニストが騒ぐほど女性のオタク活動がしづらく、より女性らしさを強制され、自分の好きな表現やフェミに嫌われそうな活動は隠れて、男性のフリをしてやらねばならない。ミンストレル・ショーの運動が広まるほど、黒人は白人発祥の文化やアジア発祥の文化を楽しみづらくなり、人それぞれの才能を黒人文化のみに限定される。

報われないい人たちのコンプレックスを吸い上げたトランプ大統領が就任するなんてインテリは誰も信じてなかった。イギリスがEUから独立するなんてインテリは誰も信じてなかった。そんな事をすればマイノリティや報われない層の人たちがますます仕事を失うから。しかしトランプも、イギリス離脱も世界の流れとして現実に起きた。報われない人たちの誤ったコンプレックスの発露が世界の流れを決め、結果アメリカの分断は深まり、イギリスの経済は悪化し底辺は失業した。この世界の流れは正しいのか?

www3.nhk.or.jp

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www.bbc.com

イギリスの主要輸出市場は以前よりイギリス製品に頼らなくなり、イギリスも外国製品に頼らなくなっている。その同時期、世界の他の地域では貿易が盛んになり、パンデミック時の停滞による損失から回復している。

2021年1~10月のアメリカとEUの貿易総額は合わせて6270億ドル(約71兆8500億円)と、2020年同期の5320億ドルから18%増加した。

同時期の中国とEUの双方向の貿易額も、計4790億ユーロ(約62兆2000億円)から17%回復し、計5580億ユーロになった。

一方、イギリス・EU間では3080億ポンド(47兆2500億円)と、前年同期の3020億ポンドからわずか2%しか増えていない。

コロナ過から回復しつつある各国と比べ、イギリスはブレクジットの影響でずっと低調。ブレクジットによる停滞を取り戻すのに10年以上はかかるだろう。

トランプやイギリスの結果は「移民が私達の仕事を奪うな」と「文化の盗用は私達の仕事を奪うことである」というミンストレル・ショー運動と同じ枠にある。この点は「世界の流れこそ正しくて日本はいつも間違っている」という前提こそ偏見である。

もちろん日本は労働生産性が低く、権限委譲が下手くそで、みんながプレイングマネージャーの社畜環境で、「師匠」とか「先生」とかビジネス全部が「武道」や「職人」の「道」を求める苦行になり、それで「個人技」とか「部品」だけやたら性能高く、ゆえにスケールしづらく、主語を省いていい言語は、何事もはっきり表現せず、言語化の訓練が足りず、空気読みを強制することで言葉を補い、合理性より情や仁義や公平性を優先しがちで、その村社会気質で誰も責任取らず反省がいかされず全員が損する習慣を繰り返すなど、そういうダメなところを世界から学ぶには全然構わない。

だがトランプやイギリスや、文化の盗用や、ミンストレル・ショー運動などむしろ問題を悪化させるポリコレまで欧米がやってることは全部正しいというのは盲目になりすぎてないだろうか?

日本は八百万(やおよろず)の神を信仰する国だ。神道をベースに、結婚式は教会で挙げて、葬式には坊さんを呼んで、クリスマスにケンタッキーを食べ、ハロウィンをよくわからず祝い、正月はお雑煮食って、初詣に行き、地域によっては旧正月も祝う。全ての神が一緒にいていい国なんだ。キリスト信者が初詣に行っても構わないし、仏教徒が教会で結婚式挙げてもいい。今のポリコレ化した世界ではなく、200年後の未来から各国を見ても「みんな違って楽しけりゃそれでいい」は2022年最先端の文化ではないだろうか?

キリスト教が正しい、イスラム教が正しい、ユダヤ教が正しいといってるから戦争になる。みんなそれぞれ楽しいでいいんだよ。人種差別はダメとポリコレで正しく考えるから戦争になる。俳優は誰がどの人種や年齢や性別をやってもいいんだよ。


ギタリストのマーティン・フリードマンは日本通で、海外の単純な4コード音楽より、複雑すぎるJ-POPのコード進行となんでもありでミクスチャーされまくった音楽性を昔から高く評価していたが、日本の歌は日本語の壁で海外に広まることはなかった。しかし今はSpotifyやYoutubeで日本語のまま曲が聞かれ広まり評価され始めてる。アニメの主題歌も英語の曲に替えられず、そのまま日本のアニソンがセットで流れている。BABYMETALが欧米でもヒットしてるが、欧米じゃポリコレ的に生まれようがないバンドだ。


そんな日本のマンガ、アニメ文化も、フェミニストととても相性の良いアメリカのコミックコードや、中国の規制の中ではほぼ全滅していただろう。電車の中で大人がマンガを読むなんて世界中見渡しても日本だけだとポリコレ連中に何十年もなげかれた。しかしもし日本という国が物理的になくて、世界にディズニーとマーブルコミックしかなかったらどうだろう? ドラゴンボールもセーラームーンもマジンガーZもキャプテン翼も聖闘士星矢も攻殻機動隊もジョジョも世界に影響を与えず、宝塚もジャニーズもモーニング娘。もAKBも、任天堂もプレイステーションもない世界は、ポリコレ的に正しいかもしれない世界は楽しいだろうか?


日本は島国かつ日本語の壁に阻まれて、世界的にもガラパゴス独自の文化発展をなしとげてきた。文化の表現としてはエロく、暴力的で、猥雑であっても子供が夜にコンビニいけるぐらいの治安の良さと、邪神も含め全ての神が同居してよいという懐深いミクスチャー文化は世界からみても貴重な未来の選択肢だ。欧米に習ってポリコレとフェミニストがこれから規制かけまくり、俳優起用や声優起用やその表現がどんどん制限強まっていく世界より、日本のなんでもありポップカルチャーの方が楽しくね? という世界の選択肢。


たとえ演技が未熟だろうが、歌が下手だろうが、若すぎるジャニーズやAKBがいてもいい世界、誰が何を演じてもいい世界、文化の盗用はお互い様。日本のマンガやアニメがディズニーやハリウッドを取り込んで昇華し、ハリウッドやディズニーが日本のアニメやマンガを取り込んで昇華するという、文化の盗用でもめない懐の深い世界を、邪神の同居も含めた八百万の神のミクスチャー文化の方を、200年後の世界の子供達に選択してほしいと願ってる。