teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

プロゲーマーライセンスは必要か? JeSU副理事、浜村通信の座談会まとめ

www.twitch.tv

ウメハラさんの思いつきではじまった企画らしいですが、グッジョブです。

teruyastar.hatenablog.com

で、今回は去年末に書いたこの記事の続き。
去年ライセンスのこと調べて、まだいくつか残ってた疑問について動画でほぼ解答が有りました。主観で意訳するのできちんと理解したい人は動画第2部、1:03:20あたりから見てください。1部はどうでもいいです。多分一番の争点は

労務報酬で賞金貰えれば景品法違反しないはずなので、賞金のためのプロライセンスなんていらないのでは?

という木曽さんと同じ指摘がありました。

blogos.com

 これに対する浜村通信の回答は

「初めてあった10人のプレイヤーにその場で労務契約交わして報酬を与える。それは品が顧客誘引の手段となる可能性があり、景品法の抜け穴のようにとらえられて通らない。と、メーカー側も思ってる。きちんと競技性のある(賭博ではない)ゲーム大会として線引する必要がある。そこは消費者庁や関係役所、メーカーと何度も相談してこれなら問題ないと決まった。」

(正しくは動画1:28:00頃)

専門家の木曽さんが言うならライセンス無しでパッケージメーカーが労務報酬という賞金付き大会しても大丈夫で、メーカーは余計な心配をしてるのでしょう。

でも僕が考えるに、それだとソシャゲメーカーが玉を釘の上で転がすゲームアプリを1プレイ1000円ではじめて毎日Twitchで賞金1000万(労務報酬)の大会とかできてしまう。これは当然アウトで警察に取り締まられるでしょう。この辺の線引をきっちりするためにJeSUのプロライセンス化というハードルがあれば分かりやすく、今後そういう問題が起きても巻き込まれずに済むのではないかと。

普通のメーカーはそんなアコギなことしないから問題ないとしても、メーカー役員や大会責任者はリスクを限りなくゼロにして責任を取りたくないはず。だからカプコンはこれまで国内での賞金大会をしてなかったし、スクエニも木曽さんが消費者庁に問い合せて白黒つけたから500万の大会を10万にした。

もうひとついえば、いつでも警察に踏み込まれるスキを与えたくない、痛くもない腹を探られたくないという役員の心理とかもあるでしょう。メーカーの経理がミスって不祥事出したり、メーカーの社員が何か個人的重大事件起こして本人が裁判で逃げようとした時、別件から会社が無意味に攻められたくないとか、企業経営は何が起こるかわからないので、法的に問題ないからといってノーガード戦法は取りづらいです。

この辺は消費者庁側の責任回避もありそうですね。役所として迂闊なことは言えないので「わかりやすいハッキリした線引があると助かる」というところでプロライセンス化の相談に賛同している。メーカー役員の心理、大会運営責任の心理、消費者庁側の心理でそれぞれ責任回避したいという思いと、法的に問題なく正しいという木曽さんですれ違ってる印象。

木曽さんがメーカーの顧問弁護士なら大丈夫と言うでしょうが、カプコンの顧問弁護士とは意見分かれそうですね。弁護士で法の解釈が違うのはよくあることですが、実は消費者庁が白と言っても、警察庁が黒ということだってあります。国や役所は縦割りすぎてまるで一環してないから国が言ってるから大丈夫も案外通用しません。そのためひとつの意見だけでなく、関連する各所への確認が大事になってきます。

なら労務報酬で景品法が適用されるかどうか、法律をもっと白黒ハッキリさせた方がいいのでは?

法解釈がグレーと言うのは運営側も、取り締まる側もコスト安く済むメリットが有り、使われる税金も安くですみます。むしろなんでもかんでも白黒つけるからどんどんやりづらくなって安全とセキュリティに莫大なコストかかることが多い。

「この法律上ではとりあえず自由に商売していいよ。でも常識超えてやりすぎたら法とか関係なく捕まえるからな。」というルールです。日本の法律はわりとこんな感じで運用されて、いくらでもへ理屈つけて警察は踏み込めるようになってます。

まあ、だから過去にスクエニみたいな高額賞金自由に開催してたわけですが。それが広がらなかったのは、昨今のコンプライアンス重視でリスク回避な世の中と、日本人的責任回避の流れでカプコンのように自主的におとなしくしてしまう、企業としての行儀の良さが裏目にでてる面も有りますね。

その互いの責任回避をどうどうと乗り越えるためにもプロライセンス化は良かったんじゃないでしょうか。

浜村通信は今回の座談会で何度も「たくさんのメーカー、会場運営、海外(サウジや中国からも)、うちも大会やりたい、日本のeスポーツと組みたい、選手をスポンサーしたい」という問い合わせがたくさん届いてると報告しています。それだけ自主的に賞金大会控えてたメーカーが多かったんでしょうね。

ネガティブな印象持たれる前に、この座談会のような説明をなぜ事前にしなかったのか?

「今の段階で完璧な物だとは思ってない。オリンピック、JOCのジャカルタが8月から始まるので一刻も早く統合した団体を認めてもらいたかった、そのため全ての取材を断って(未完成のまま説明するよりも)(今月の闘会議や次のゲームショウのような)認められる実績を作ることを優先してた。きちんと説明できなかったのはほんと申し訳ない。2月、3月はメディアでしゃべるよりもこうやって選手からの質問に答えていきたい。」

闘会議後でもメディアを優先しないというのは事が法に関わるから、迂闊なことは言えないし、メディアで切り取って伝えられると誤解される心配もあるのでしょう。実際切り取られた少ないメディア情報では、何か裏があるに違いないと木曽さんが推測してネガティブな方向に走ってます。一般参加の方からも木曽さんと同じ「メディア(自社ファミ通web)で応えてたゴルフの例えは違うんじゃないか」と、指摘している人がいました。もちろんこの記事の解説後もちゃんと動画を見たほうがいいでしょう。

この辺、誰が説明役に回るかでも適任者が居なかったのではないでしょうか。浜村通信が楽しくざっくばらんにゲームタイトルを語るのとはわけが違います。動画で浜村通信がいつになく慎重に言葉選んでるのも、結局他に適任者が居なかったので今の役割をしているのでしょう。

「消費者庁の公式見解を出せ」「消費者庁との相談内容を文書化しろ」という声も有りますが、たぶんその相談の段階ではオフレコでざっくばらんに話しを進めたかと思います。みんなが動画の浜村通信みたいにガチガチに言葉選んでたら相談が進みません。かといってそれを公開したらざっくばらんな適当な発言も全部、消費者庁の公式見解となり無意味に突っ込まれます。だからみんな「秘密にしてるから怪しい」と思いつつ、JeSUや消費者庁側は「こうやって話しを進めないと時間がいくらあってもまとまらない」というすれ違いになったのではと。

スト2の生みの親でアリカ社長の西谷さんがネガティブな印象のままだったのが、1/16日のCESA会員説明を受けた後は、ハッキリ納得したようです。確かに僕らもこの座談会のような説明があればよかったんですけどね。

去年末に3連合が合併したばかりなので、8月に合わせてJOCに統一団体を認めてもらうにはいろいろ時間がなかったと思います。CESA向けの説明資料公開が簡単そうだけど、質疑応答とセットじゃないと片手落ちになるのかな?

木曽さんのTwitterに答えるつもりはある?

「ネットに書かれる事に答える事はありません。正式にJeSUに問い合わせてもらったら、、状況に応じて答える事はあります。」
「勉強になることは勉強させていただきます。、、、前提が反対ありきの意見に応える必要はないと思ってる。」

まあそうでしょうねw
せっかくメディアに切り取られる誤解を避けてきたのに、それ以上に炎上しそうなTwitterでの討論は余計な誤解を膨らませそう。

木曽さんがカジノ法案の専門家としても、なぜこうも絡んでくるのか。僕の勝手な推測ですが、2016年に消費者庁に聞いて白黒ハッキリ付けたばかりに、「賞金付きゲーム大会を潰した戦犯」とかで相当叩かれたんじゃないかと。いや、叩かれた記事とか見たことないですが、Twitterや2chで叩かれたんじゃないかと。

それで自己防衛するために自分の正当性をアピールするために正しさを主張して、取材も受けるなか賛否両論で炎上して、さらに自己防衛するための正しい正論が今年まで続いてるのでは?

でも法的に正しい解釈でも「あんたら労務報酬でやっててもそれ景品法違反だから」と警察に突破され、事件に巻き込まれる可能性が1%でもあるのと、プロライセンスでひとつハードルを上げて関係役所と担保取るのでは、メーカー役員、大会運営責任者、役所関連の人達も含めて、安心するのは後者でしょう。

ホリエモンとかと組むなら木曽さんの法的な正しさを受け入れて進みそうですけどね。まあホリエモンこそ、「法的に正しければ捕まらない、が通用しない日本」を証明した人ですが。

もしくは木曽さん、カジノ法案よりeスポーツの方が盛り上がりそうだから、専門性をアピールしてどこかと組むのが狙いかと思ったのですが(僕ならそうする)、JeSUに対してわりと敵対心むき出しなので、そういう狙いでも無さそうですね。

まあ正直、急遽設立したJeSU側が木曽さんの発言や記事になんのアクションも取らず無視した形になったうえ、ここまできて情報不足、説明不足というのはおかしく、お互い一度も会話したこと無いことで、「もうここまでだんまりできたら説明したくない利権があるとしか思えない」という余計な憶測を産んだすれ違いなんじゃないかと思うのですが。

実際はただ、8月のJOCに合わせて実績に集中して動きたいし、法の問題だから迂闊にメディアに出る適任者もなく取材も説明もすっ飛ばしてたのでは、、、

そんなこといっても結局JeSUの利権じゃねえの?

「JeSUの理事は、専務理事と事務局長意外みんな無償です。でも経費や事務の人件費は発生するので一般社団法人として(セガなどの)会員から100万円づつ集めて3000万とか。それは事務員の給与で全部なくなります。」

これは新たな事実発覚w
いや理事のほとんどが、メーカーの社長や役員だったりするので、(どの役員でもない専務以外)報酬なくてもなんとかなるでしょうし、当分は関連メーカーの持ち出しでしょう。利益を追求しないNPOよりの一般社団法人ですね。

jesu.or.jp

会長 岡村秀樹(株式会社セガゲームス、コンピュータエンターテインメント協会会長)
副会長 浜村弘一(株式会社Gzブレイン、元e-sports促進機構理事)
専務理事 平方彰(元日本eスポーツ協会専務理事)
常務理事 鈴木文雄(株式会社SANKO、元日本eスポーツ連盟共同代表理事)
理事 辻本春弘(株式会社カプコン、コンピュータエンターテインメント協会理事)
早川英樹(株式会社コナミデジタルエンタテインメント、 コンピュータエンターテインメント協会理事)
越智政人(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社、日本オンラインゲーム協会共同代表理事)

 

浜村通信もファミ通、カドカワグループなんで闘会議やってるニコニコが関連会社だし、このメンバーは、eスポーツが盛り上がれば本社や関連会社が儲かる人達ですよね。eスポーツでセガやカプコンやコナミやニコニコが儲かるのを利権とは言わないでしょう。直接、間接の関係者でしか無い。平方さんのみメーカーでないので利権にあずかれますが、前の記事でも調べたとおり10年来、たいして儲からないeスポーツに尽力してる方ですし、このメンバーに囲まれて好き勝手できるわけでも無いでしょう。

事務局長というのは筧さんかもしれませんね。

前の記事で3団体の役員調べた僕としては、一気にメーカー役員入って一新された感じもあって、前の理事達はどこへ行ったのかと思ったのですが、無給で活動しても本社にメリットある人達にバトンタッチしたんでしょうか。

まあ、前の3団体も利益や報酬ほぼなかったと思いますが。

韓国はゲーム大会の賞金法律あるらしいけど?

www.4gamer.net

――今回のプロライセンスは,日本国内の賞金にまつわる諸問題を解決するために作られた経緯があります。ほかの国ではどのように解決されているのでしょうか。

Chung氏:
 日本のe-Sports市場はまだ新しいので,法整備がまだ追いついていない状況なのだと思います。例えば韓国では賞金を出す場合は政府に申請し,公認を得る仕組みになっています。

 

――e-Sportsにおけるライセンス制度というのは,かつて韓国で採用されていた事があるそうですが,そのほかではあまり聞きません。やはり,世界的に見ると珍しいものなのでしょうか。

Chung氏:
 私もデータを見なければ確かなことは言えませんが,韓国で採用された時期があったというのは確かです。

 韓国のプロゲーマーライセンスは、StarCraftで盛り上がってた頃でしょうね。法整備されたなら必要なくなるので形骸化かしたかと。

日本も法整備までまてば?

前の僕の記事で調べた時は、eスポーツ連盟が内閣官房長官付きで10年活動してたんですよね。。。ゲーム法案提出して賛同する国会議員がどれだけいるか。やったとしていつ決まるんだろ。

www.4gamer.net

www.4gamer.net

www.jp.playstation.com

www.4gamer.net

「闘会議2018」の賞金総額は2,815万円、プロライセンス発行は15人!

「闘会議2018」にて開催された大会の結果、15人に発行、他、実績保有者への発行を含めると合計45人。


法整備を気長に待つよりはこうやって今月の闘会議で2815万払われたことの方が選手にとって大事かと。Cod4人チームが500万とか鉄拳、ストV優勝が200万もらってるので、とりあえずトップ100-200万でスタートですね。やはりいつできるかわからない法整備より、現実の賞金でしょう。

1000万の賞金見送られたって聞いたけど?

https://amd.or.jp/pressrelease/20180209_eSports.pdf

前の記事にも書いたデジタルメディア協会からの1000万が諸般の事情で繰越らしいですね。

とりあえず1000万出すのは決めたけど、話煮詰めて行く上での各メーカーの公平さとか議論になったんですかね? どの大会にどう割り振るのか気になったのですが、それ以上の2815万払われたので、まあ目的は達成じゃないでしょうか。

もし法整備されたらライセンスいらなくなるのか?

ウメハラ「メーカーと団体と選手が一丸となって(EVOより)大きなことができるようにしていきたい。のでケチが付くようなことはしない。」

浜村通信「賞金だけではなく、オリンピックへのパス。海外渡航費用の支援もあり、その他今後の活動は選手と相談しながらeスポーツを盛り上げる事を決めていきたい。」

 とのことで、JeSU自体は賞金問題だけでなく将来のオリンピック eスポーツのための統合や、スター選手を盛り上げたいという意図もあるので仮に法整備されてもライセンスは続くかもしれませんね。これは法整備されたあとで考えればいいでしょう。

ただ個人的には、法整備するとどこかで「天下り」が増えそうな心配があります。JeSUなら、今のところ理事も無償だし現状メーカー持ち出しでコスト管理徹底しそうですが、これが役所仕事になると税金が天下りに消えないかちょっと心配です。個人の印象論ですが、天下りのスキを作るような法整備は望まないかなあ。

(JeSUにも)天下りの心配が将来的になく、ライセンス管理はなくなり、JeSUが安く運営できるようなシステムなら賞金の法整備もありですかね。

 

「公認のない賞金付き大会に、ライセンス保持者が出場した場合、相応の処分が課せられる場合がある。」というレギュレーションは何? 他の大会出られないの?

www.gamespark.jp

"悪意のある大会とは、IPホルダーに連絡無く、著作権を無視した大会および、法規制を無視した大会のことです。たとえば、選手から参加費用を取るような刑法賭博罪を無視した大会や、ゲームセンターやネットカフェが店舗主催から賞金を出す、いわゆる風営法を無視した大会にあたります。"

 

担当者によると、特に刑法における賭博罪に違反した大会に参加し検挙されると、「e-Sports選手が罪に問われ」てしまい、その報道により、e-Sports自体のイメージダウンのみならず選手のキャリアにも大きな影響が出るとのこと。「それを止めたいと言うことからこの項目をつくらせていただきました」と話しています。

 これも浜村通信の言葉で聞いた方が分かりやすく、

「他の大会への出場を止める意図はJeSU側に一切ない。既存の大会への影響も無い。プロ選手が法律無視した大会に参加しないようそれはあくまで例外。」

ということらしいです。

まあ賭け大会がダメなのはもとより、せっかく景品法、風営法を回避したのに違反した大会に出るのもありえないし、ほんとに例外的な一文でしょう。法的に悪意のある大会もそうそうないと思うので。

メーカー推薦とか大会獲得とかライセンス貰える人が少なくない? 俺も欲しいんだけど?

この辺は、メーカーから承認受けた大会であれば第3者の大会実績でもライセンス発行は可能らしいです。あと今回の闘会議で、賞金大会の枠に入ったプレイヤーへすぐ発行できたようだし、この「賞金内に入ったら発行」という限定的な形でも問題ないと思います。いたずらに発行しまくっても費用かさむだけなので。

www.capcom.co.jp

また、国内初のプロライセンス発行に伴い、格闘ゲームコミュニティの活性化に多大な貢献をしてきてくれたプロゲーマーへのサポートとして、ライセンス新設年度(2018年2月~2019年3月末日)で、発行に伴うJeSUへの費用については、その全額をカプコンにて負担いたします。(対象ライセンス:『ストV AE』)

例えば1年目のストV発行については、カプコンが全面負担を公言。今後詳細がどうなるかわかりませんが、とりあえず他のタイトルもメーカー負担でしょうね。発行管理が5000円ぐらいだとしたら、発行した時の賞金額から差し引くのも有りでしょうが、賞金枠の限定配布ならそんなセコイことしないかな?

 

というわけでJeSUの気になる解答はほぼもらえました。他にもプロとして細かな心配事の質問にいろいろ答えてます。この記事も切り取った僕の解釈なので、できれば動画をどうぞ。3時間20分有りますが、第1部、最初の1時間は「プロゲーマーの定義」であまり盛り上がらないので、1:03:20 の2部からオススメです。

www.twitch.tv