teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

菅総理をひとつだけ褒める

jbpress.ismedia.jp
辞めるということになって、菅総理を見直す向きがあるようだ。
(1ヶ月遅れで記事見てるけど)

僕が前に菅批判したのは「デルタは従来のコロナと全く違うレベルのウイルス」という点を感情のこもらない棒読み記者会見でアピールしきれなかった点だ。従来のコロナの延長と捉えられると、国民はそれまでと同じレベルでさらなる対策強化はせず、行動が何も変わらないためかなりまずい。

結局国民にデルタのやばさが伝わってきちんと自主対策してもらうには、東京の新規感染5000人超えが連日続き、悲惨な医療崩壊ニュースが国民に行き届くまで待たなくてはならなかった。戦時や緊急時に前に立つ総理ではないと思った。

ただ自分が嫌いとかよく思ってないタイプの人でも、上の記事のように個別案件では是々非々で評価しないといけない。自分の盲点は見えないので、特に僕は自分が悪いと思ってるものほど、正しいと思ったものこそ偏見で間違った判断を下しがちだ。


菅総理に関してひとつ褒められるのは「1日100万回のワクチン接種」を掲げたことである。

実は河野大臣は70-80万で進めようとしてた。供給確保の事情や、自治体の準備状況などいろんなことを考慮してのことだろう。ところが100万でやれという命令を受け、それを菅が目標として発表したため、河野はTV出演時に突っ込まれ、言葉に詰まり、頭抱えるはめになった。実際にモデルナもファイザーも供給には様々なトラブルがあり、河野は批判にさらされることにもなった。

www.youtube.com(総裁選で出てきた話。22:40秒ごろ)

だが実際にやってみたら1日140万体制。ピークは160万いったり、さすがに供給追いつかないから120万に落としてとお願いする場面もあった。ここは河野もよくやったが、この目標達成には菅が無茶な目標掲げた事が一番大きい。

ビジネスリーダーシップ論では「コンフォートゾーン外し」「汗や努力だけでは絶対解決できない目標を立てる事が知恵やアイディアを生む」みたいな事が言われるが、菅はこれをやってのけた。

1日70万と120万は決定的に違う。
デルタ株の広がりは6月末から8月下旬ピークの悪夢だったが、これが70万接種体制だったら、感染はねずみ算のごとく拡大しピークは2ヶ月以上、11月以降に遅れただろう。東京の新規感染者だけで1日2万人を超え、自宅療養者で死亡する人が何十倍にもなった可能性はある。もし菅じゃなく、他の日和見総理だったらそうなってたかもしれない。緊急事態のアピールの下手さと相殺されるかわからんが、菅総理が100万回接種の目標を立てたことは評価できるポイントと思う。



補足で、こういうと逆に河野は総理に向かないのかというと、そんなことはなく命令を受けて140万まで伸ばしたのは河野の手腕になる。そしてワクチンやその他の仕事の経験や教訓を元に「やってみたら案外できる。みんな思ったより自分を過小評価してないか?」ということで「いつかは星にだって手が届くかもしれない」とレヴュースターライトみたいなことを言っている。

www.youtube.com(52:40頃)

www.youtube.com
実際ハンコも廃止したし、Fax廃止しようとしたときはセキュリティ等の理由を聞いて一気に排除することはなかった。日本は合理的な効率のために動くよりも、合意制で全力で責任とリスクを回避するために予算と時間を使い切って逆にリスクが膨らむという、どうしようもないところがあって、それは役所に限らず病的なまでにいろんな組織の足を引っ張ってる。

河野は過剰なリスク回避、過剰な責任回避最優先で合理性が落ちる理屈に合わないルールをとことん嫌う性格で実行力もあるため「行政改革大臣」の席は最高にふさわしい。そしてデータを持って現場や専門家と対話する姿勢も評価されている。もう総裁選は終わったが、30年立ち止まってる日本を前に進めるには面白い人だと思う。


ちなみに「あれだけ批判されてた菅首相なのに、辞めるときになると手のひら返したように褒められる」みたいな意見もちらほらみられるが、そりゃ喫緊のコロナの記事は不手際に対して批判が集中するだろうし、その渦中に「でも携帯代引き下げたし」みたいな擁護する人もいないだろう。逆に携帯代引き下げのときは評価する声も少なからずあった。(批判もあった)

「辞める」ってなったときは「お疲れ様」ではなく「何一ついいことがなかった」「歴代ワースト総理」みたいな的を外した批判がたくさん飛び交うことになる。すると隊長のように、批判に対するカウンター記事が出てくるのが自然な反応だ。嫌いな人ほど個別の案件に是々非々で判断したい。