teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

セガサターン、プレステの名作をリメイクするとき60フレームは必要か?

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サターンのパンツァードラグーンがSwitch,Steamにリメイクされてたようです。
オリジナルを忠実に再現しながらも、HD化、60fps化、モデリングも作り直し、全体的な彩度も上がってます。

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ちょっと気になったのはドラゴンの大きさ。サターンはワイドに引き伸ばしたほうがいいのではと思うぐらい縦に細く、リメイクの方が自然なモーションでドラゴンらしい体型をしてます。が、ちょっとゲーム画面としては大きすぎるので敵の弾を避ける意味では一回り小さいほうがいいかも。

全体的に比べてみるとオリジナルのサターン版も味があって悪くないんですよね。映像が淡いのはテクスチャーにメモリ使えず16色制限とかあったかもしれませんが、淡いフィルターかけたかのような統一感が雰囲気出てます。

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さらにサターン版の方が「スピード感」や「弾の重さ」を感じます。洞窟のテクスチャーが違う事や、効果音の違いもあるんですが、一番の原因は30フレームがヌルヌルの60フレームになったことかと。

敵の弾や背景が認識しやすくなったら同じ動きでもスローに感じます。脳内でフレーム補間する必要もありません。ゲームスピードを1.25倍ぐらい、ステージ背景も1.25倍距離を長くすることで同じ感覚になる気がします。

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高解像度化は細かな情報がわかりやすく、1面のボスただの機銃と思ったら歩兵が撃ってるとかは気づきにくかった。こういう表現力の向上は素直に歓迎したい。

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XBOXで発売されたパンツァードラグーン オルタはもともとHD 60fpsでステージ設計されてるため、スピード感の演出がしっかりしてます。でも「弾の軽さ」は同じ感じですね。

効果音以外で言う「弾が当たった重さ」とは、ヒットしたとき敵のモーションを新規に作るとか、わずかにヒットバック入るとか、レーザー当たった方向からの物理演算墜落とか、より細かな爆破分解とかになります。サターン版は低フレームレート、低解像度で画面が粗いため結構ごまかせてる。HD化、高フレームレート化する場合、そういった細かいところにもコストをかけないといけない。

リメイクでHD化、高フレームレート化すると、細かいところでオリジナルがごまかせてた表現まで再現しないといけない。そこまで予算かけれるかが難しく「スピード感」や「重さ」が減じる認識を持ってるかどうか、言語化できるかどうかも難しいところ。

とはいえ、シューティングとしては高解像度でフレームレートが上がることで弾も敵も認識しやすく、プレイしやすくなる。それに合わせた絵作りにどこまでコストをかけれるか。

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 なお,オリジナル版と比較して明らかに遊びやすくなったポイントがフレームレートの高さである。背景や敵がチラつかないため,戦いにより集中しやすくなっている。
 もちろんグラフィックスも鮮明になり,「ここに出てくる敵は攻性生物ではなく帝国の戦車だったのか」「飛行戦艦の甲板の機銃は人間が撃っていたのか」などと,個人的な発見があったのも楽しいポイントだった。

 反面,オリジナルのくすんだような色使いや風合いが変化しているので,昔の印象を残したまま美しくなっている,というわけではない。

 またオリジナル版は,地形が比較的近い距離からポップアップしたり,ドットで描かれた敵弾が急接近してきたりと,現在の基準から見れば「粗い」部分も多々あるのだが,粗いからこそ生まれる迫力やスピード感というものもあった。リメイク版では背景が遠景まで描かれるようになっているため,当然このあたりの感覚も変わってくる。

原作厨には原作厨なりの理由があって、必ずしもプレイのしやすさと、粗さやスピード感が一致するわけではない。特に今回はフレームレートに注目したい。

 

www.youtube.com調べるとPS2でもリメイクされていて、こちらは高解像度化のみの30フレーム。サターンの30フレームモーションデータをそのまま利用したらしい。これも良いリメイクとは思うが、エッジがクッキリ見えすぎて、時折ポリゴンのペラペラ感が際立ってしまう。

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PS2版は竜巻もクッキリ。

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サターン版の「粗さ」をアップグレードするには厚みのあるモデリングに作り直したり、エフェクト追加したりのSwitch版リメイクが正しいですね。



映画の話ですがフレームレートについてはトム・クルーズが注意喚起しています。

av.watch.impress.co.jp

「映画を見るならばテレビの動き補間機能(Motion Smoothing)」をオフにしよう、というもの。

通常、映画は1秒あたり24コマの画で構成され、テレビは基本的毎秒60コマで表示する。また最近のテレビは、動きを滑らかに表示したり、残像感を抑えるため、様々な処理が入っている。

トム・クルーズのコメントは、こうした機能への違和感を表明したものだ。

その理由は映画らしい動きではないこと、そして元の映像とは違う、「ソープオペラ(安っぽいドラマ)っぽい映像になる」と指摘している。

昨夏には、クリストファー・ノーラン監督や、ポール・トーマス・アンダーソン監督らが、メーカーにこうした動き補間を止めるよう呼び掛けたと報道されている。このように、映画製作者からテレビにおける動き補間を問題視する声が続出している。

最新のTVには24フレームの映画を60フレームや、120フレームに前後のフレームから計算して補完する機能があるらしい。これをやられるとソープオペラ(昼ドラ。フルハウス、渡る世間は鬼ばかり、など)のような映像が軽く生っぽい雰囲気になるようだ。

www.earlyteches.com

日本のドラマが安っぽい理由2. 60fps

ちなみに、「ジェミニマン」という映画では120fpsで制作されているのですが、「映像がチープ」、「カラオケ映像みたい」と散々な評価をされています。

日本のドラマが安っぽい理由4. カラーグレーディングしてない

この辺は日本のTVドラマでもよく指摘されてますね。

logmi.jp

日本においては、それを具体的に学べる場は限られていまして、専門的な知識を持った方が不在の場合も多いということもあって、カラーマネジメントの重要性がそもそも見過ごされているのも現状です。

カラーマネジメントは、撮影に入る前からのプランニングが大事になってきます。しっかりと話し合いをして検証して、問題ないことを事前に確認してから撮影に入れば、仕上がりの品質も効率性も上がってくると思います。

この準備を行わないことが、日本の制作においては一般的になっていますので、仕上げの際につじつま合わせで大変な作業を強いられたりですとか、余分な時間や費用が発生することも残念ながら多々あります。

これはNetflix側からの指摘。
安いセット撮影で済ませたい場合予算にも響いてきそうです。

 

undersiege.blog.fc2.com

『流れ星』(2010/フジテレビ)
『それでも、生きてゆく』(2011/フジテレビ)
『ゴーイング マイ ホーム』(2012/フジテレビ)
『まほろ駅前番外地』(2013/テレビ東京)
『Woman』(2013/日本テレビ)
『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016/フジテレビ)
『カルテット』(2017/TBS)

この辺はみんないわゆる抑えた芝居してて個人的には好きです。
ちなみに全部視聴率はお世辞にも良いとは言えませんでした。
悲しい。私の話に少しでも同意してもらえた方はぜひ見てみてください。

でも日本で映画フィルムっぽい作りにしたり、大げさな舞台演劇でない演技が望まれてるかというとそうでもないみたいなんですよね。北野映画みたいに日本人らしくボソボソしゃべって、リアクション薄くて、暗いトーン貼ったドラマより、コミカルな現代歌舞伎の半沢直樹が大好き。

 

dramanavi.net

日本では「放送網」や「全国ネット」という言葉をよく耳にする。日本の地方のローカルTV局の多くは、地元で制作しているローカルニュースや情報番組以外の時間帯の編成を、東京キー局の"系列"ネットワークとして東京キー局が制作したコンテンツ(つまり、ドラマ/スポーツ/音楽やバラエティ/ドキュメントといった一般的《全国的》娯楽番組の大部分)で埋めて放送している。おそらくこれが基本ラインだろう。

最もわかり易い、日本との顕著な違いは?といえば、アメリカのTV業界は、この"系列"ネットがそれほど力を持たないのである。100%無いのかといえば、4大ネットワーク等の加盟局や提携局も存在するので語弊があるが、独立したローカル局やケーブル局が数多く存在し、"系列"に縛られない自由な番組購入や編成が可能になっている。

アメリカには、【シンジケーション(syndication)市場】という、独自の成り立ちの、TV番組の売買の市場がある。

系列がそこまで力を持たず、役者やソフト制作側が力を持ってるため、物が良ければいろんな放送網に売れて金が回るのが予算の大きな違い。局や配給会社より制作会社。レコード会社よりアーティスト。携帯キャリアが牛耳ってる日本と、AppleやGoogleが牛耳るアメリカみたいな感じでしょうか?


話がだいぶ脱線しました。TVドラマに関して業界構造の予算問題ということなら作り手側が儲ける事に貪欲になり、ディベートや交渉術学ぶところからですかね。

上で「カラオケ映像みたい」と酷評されてる「ジェミニマン」は3D映画対応120フレーム撮影とのこと。

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 ただ、24コマが生み出す“映画らしさ”をよしとする作り手がいる一方で、“デジタル技術で簡単にコマ数が上げられるようになったんだから、バンバン上げちゃおうよ!”というアグレッシブな考えを持つ作り手も出てきている。

それが映画「ホビット」シリーズで3Dの48コマ撮影に挑んだピーター・ジャクソンや、「アバター」の続編でハイフレームレート撮影を公言するジェームズ・キャメロンといった監督達であり、中でも最右翼なのが本作「ジェミニマン」を手掛けたアン・リーだ。 

3D映画は差分が多くヌルヌルしてたほうがより3D効果高いようです。
それはつまり、パンツァードラグーンで指摘したように細かいところまでメチャクチャコストをかけないといけないということ。ロード・オブ・ザ・リングのホビットや、ジェームズキャメロンなら過去最大の予算使ってでもやりきるでしょう。
 

 撮像・表示ぼやけが減ったことで、映像全体で鮮鋭感が出てくる。中盤、コロンビアのカルタヘナで展開するウィル同士の激しいバトルやバイクチェイスシーンでも、動きがボケることなくクリアで鮮明な映像が楽しめる。

中でも、液体のリアルさは圧巻だ。桟橋やボート、浜辺、井戸など、全編を通して“水”が映るシーンが度々登場するが、その流体感や水面の揺らぎは現実そのものに感じるし、グラスの中の飲み物や、頬を伝って流れ落ちる涙も生々しい。3Dとの相乗効果も手伝ってか、水中シーンの美しさと没入感は、個人的にはハイフレームレート×3D映像最大の効用と思う。水のシーンを多用したイメージビデオをハイフレームレート収録して、VRコンテンツ化すれば、人気が出るのではないだろうか?

(略)

それはウィル・スミスのみならず、脇を固めるキャストも、エキストラも、小道具などのセットも同様。だから、“やらされている感”見え見えの女性の表情や、抜け殻のように歩道を通る男性、店内で同じ動作を繰り返す男性など、鑑賞中あまり目にしたくない周囲の動きまでつぶさに見えてきてしまう。「解像度が上がると、全てが見えてしまい困る」とよく耳にするが、ハイフレームレート撮影でも同じ事が言えるかも知れない。

念のため、2K/24コマ/2D環境でも「ジェミニマン」を観てみた。ハイフレームレート版ではヌルヌル動いていた“リアル・スミス”が、途端にシックで落ち着きのある、普段の映画俳優ウィル・スミスになった。ただ、24コマでも動きに違和感は全く感じないし、ハイフレームレートゆえに見えてしまった部分(エキストラの動きや合成の不自然さ)はいい具合にマスクされていた。映像に刺激はなく、少し退屈だが、24コマ版でも十分鑑賞は可能だ。

このレビューは、24フレームと120フレームの違いを的確に言語化している。水レベルの細く繊細な動きさえもごまかしのきかない確かな表現力をもち、セットやエキストラも全部手を抜けなくなる。映るもの全てごまかせなくなるということを証明した映画なのだろう。

 

ゲームプログラマーはハードウェアをよく理解して60fps出せるかどうかが肝な時代もあった。しかし、フレームレート譲れないゲームというのは競技性の高い格闘ゲーム、対戦FPS、音ゲー、レースゲーム、弾幕シューティングあたりだろうか。パンツァードラグーンのようなシネマティックシューティングは実はヌルヌル動かすより、映画フィルムベースのフレームレートが絵作りとして正解かもしれない。

www.youtube.comこちらは「R4(リッジレーサー4作目)」のオマケでついてきた、60フレームVerの初代リッジレーサーだ。30出すのも精一杯で苦労した初代ロンチタイトルを、PS円熟期の技術で陰影処理もほどこしどこまで作り直せるかの実験作。

やはりレースゲームは高フレームレートと相性が良い。
60fpsは視認性もよくゲームがプレイしやすい。
しかし「絵作り」としては、ヌルヌルした60フレームより、30がわりかし荒れててスピード感ある絵になってないだろうか?

www.youtube.comこちらはバーチャレーシング アーケード版。30フレームである。

www.youtube.comこちらはSwitch版。M2により挙動は完全にエミュレーター作って動かし、グラフィックはワイドHD化、60フレーム化したもの。オリジナルより断然キレイに見やすくなってる。

レースゲームとしてはM2がいたれりつくせりで多彩なオプションを用意したSwitch版はアップグレード完全移植と言えオススメできる。遠景も最初から全部表示されている。元々テクスチャーを使わない無機質なデザインゆえ、ハイレゾ化、高フレームレートでも気になる事はない。でも60フレームがチープで、オリジナルの30フレームが「絵作り」として悪くないと思える人もいるんじゃないだろうか?

www.youtube.com極端だがこちらはメガドライブ版。3D機能がないメガドライブで、オリジナルの3Dチップをカセットに搭載し秒間わずか9000ポリゴン、15フレームで動くレースゲーム。タイヤもでこぼこである。

が、アーケードのAM2研自身が開発しており、手触りの再現度はそのまま。15フレームのレースゲームなのに意外と遊べてしまうのである。

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インタレースばりばりの低解像度、低フレームレートでレースゲームとしては視認性最悪なのにスピード感ある荒々しい表現力。数カ月後にサターンが発売する1994年だったため、あまり話題に上がらなかったが低フレームレートの可能性を問いかける一本でもある。

 

www.youtube.comスーパーマリオブラザーズなど2Dゲームは60フレームで動いて当然。

www.youtube.com迷宮組曲も60。



www.youtube.comとおもいきや、チャレンジャーは30FPS。

www.youtube.comファミコン版マイティボンジャックも(たぶん)30。


www.youtube.comファミコン版忍者じゃじゃ丸くんも30。

マリオや迷宮組曲はヌルヌル動いて、チャレンジャー、ボンジャック、じゃじゃ丸くんはキビキビ動いている。ちょっと昼ドラと、フィルム映画の関係にも見えないだろうか? 繊細な動きとジャンプができるのは60フレームの方で、30フレームの操作性は難しくなる。30の方が倍のスプライトを表示できたり、ハードウェアを知り尽くしてるかどうかという理由もある。

でも難易度が高くなるかどうかはゲームのさじ加減次第なので、2Dの30フレームすら味となり、どれも名作だ。

www.youtube.com極めつけはこちら。FF7オリジナルのフィールドは30フレームだが、戦闘シーンは15フレーム。

プレステで60フレーム出すのは格闘ゲームで代表されるよう人間2人が限界とされており、ほとんどの3Dゲームが30フレーム以下で作られた。FF7の場合頭身高いキャラを敵味方で複数出す必要があり、テクスチャーもあまり使わないデザインでメモリ稼いで1997年当時としては画期的な大作3DRPGを完成させている。

それでもパーティメンバーが4-5人当たり前だったFFシリーズとしては、初の3人制パーティ。表示の限界と戦って泣く泣く1枠けずったかもしれない。

スクウェア初の3DRPGとしてまだ3D動かすノウハウがなかったとしても、15フレームだからこそキレのあるモーションとなり、データが少なくすみ、初3Dでもいろいろごまかしが効いたと思う。

www.youtube.com23年後にHD化、60フレーム化でリメイクしたFF7はコマンド選択方式をすて、アクション方式のRPGとして細部まで全てがグレードアップというかもはや新作。ジェームズキャメロンじゃないが、ここまで予算かけると文句つけようがない。


逆にジェームズキャメロンや、ファイナルファンタジーでなければ、限られた予算は脳内で補完されてた以外の点を伸ばすこと(エフェクト、モデリング、モーション、カメラワーク、バランス調整、さまざまな遊びモード、手の届かなかった痒いところ)に使い、30フレームのゲームは30フレームのままでいいのではないだろうか?

もしかしてファンが望むのはパンツァードラグーンリメイクではなく、パンツァードラグーン1.2かもしれない。

また、新規のゲームの絵作りをするうえで最初の設計段階から60フレームや、高解像度は必要だろうか。60フレームをソープオペラにしないためには思った以上に予算がかかる。30フレームと並べたら60フレームのほうがどうしたって視認性よくいい感じに見えるが、ゲーム体験に合わせたスピードや重さをごまかしきかず作りこむ予算まで考えるとどうだろうか。細かな水やエキストラが浮いてしまわないだろうか。この記事はそんな問いかけ。