イギリスで伝説の広告クリエイター、
故ポール・アーデンの著書にある言葉。
その著書にこんな話がある。
無鉄砲なエリカ
若い頃、彼女はエディほど魅力的な人物ではなかった。
少なくとも、会社員向きではなかった。
職場におけるエリカはやかましくて、周囲をかなりいらつかせた。
それでも仕事に対しては情熱的で、
次から次へと狂ったようなにアイディアを出し続け、
そのおかげでかろうじてクビにはならなかった。
エリカのアイディアの大半は
「現実的ではない」といわれていた。
あまりに大胆すぎるか、あまりにバカバカしかったからである。
ところがある時、社内にいる誰かが、
彼女の野性的なアイディアに目をつけ、それが採用されることになった。
他とは違って新鮮で、目立っていたというのが理由だ。
それから3年間、調子に乗ったエリカは、
立て続けに使えないアイディアを量産する。
彼女はますます周囲をいらつかせることになり、
結局クビになってしまった。
ただ奇妙なことに、エリカの新しい仕事は思ったよりも早く見つかった。
3年前に採用されたたった一つのアイディアが、
世間の人々の記憶に残っていたからである。
ひとつの功績だけが目立っていて、
無数の失敗についてはあまり知られていなかった。
むしろ彼女のネームバリューによって、
転職先の会社の知名度が少し上がったくらいである。
そしてエリカはまた懲りずに同じパターンを繰り返し、クビになる。
それでも二つの職場を経験したことにより、
彼女の印象は業界内でいっそう濃いものになった。
失敗は一度では終わらせない。
人生全体を通して、彼女はそんなふうに生きていた。
成功と失敗を繰り返すが、成功よりも失敗の方が遥かに多い。
ところが40歳になった頃、エリカはある会社の業績をあげている。
エリカは今や尊敬される人物になっている。
無鉄砲なエリカであることに変わりはないが、
以前よりもその気質が強く求められている。
なぜなら、彼女はどうせ周囲に順応することができないからである。
うお、、なにか業界で思い当たる節があれこれw
いや、サラリーマンやクリエイターに限らず
社長、役員クラスでもよくある話だ。
しかし、非常に重要な教訓をはらんでるとおもうので
列挙してみます。
教訓1
人は、毎日の負けや大外れは忘れてしまい、昔の大当たりの記憶を頼りに生きている。
それはたちの悪いギャンブルにはまるように。
自分だけではない、顧客、スポンサーもそうなのだ。
逆にこれを利用しない手はない。
教訓2
金を出す奴は、実績でしか人を見ない。
もし金を出す奴にクリエイティブな売れる判断ができるなら、
自分自身に投資するだろう。
けどクリエイティブな判断ができないから、
過去の実績だけを唯一の判断材料に値する。
過去の実績こそ、最高のプレゼンになる。
スティーブ・ジョブズのプレゼンすら、
過去の実績があるからこそ確信のある夢に観える。
もちろんここでも失敗の実績は
考慮にいれないどころか、
むしろ失敗の経験をプラスにとることさえある。
教訓3
キャリアとはリスクに勝った回数の事である。
勝った回数で、負けをカウントしないのなら
当然たくさんチャレンジしたほうが有利。
教訓4
チャンスには複利がある。
リスクに一度勝つと、仲間やスポンサーから信頼を得て
次のチャレンジがとてもやりやすくなる。
そのリスクに勝つとさらにまたチャレンジしやすい環境になる。
周りの人々がそう扱うようになる。
それはチャンスの複利のように増えていき減りはしない。
もちろん次が失敗して首になっても、
記憶を覚えてる人が複利となって拾う神になることもある。
教訓5
リスクをとる方が人生は安定する。
逆説的。
もし、エリカがリスクをとらない人で
おとなしく言われることだけしていたら
なんらかの不況、不景気でリストラされると
次の雇用は難しいだろう。
誰の記憶にも残ってないのだから。
面接で「真面目に仕事をしていました」。
といっても、給与面で条件を下げる可能性が高い。
教訓6
失敗するときは、あなたがリスクをとってもとらなくても失敗する。
不況や、業界そのものが縮小するとか、
その他まったく事業や自分の仕事とは関係ない資金難で
失敗することもあれば、
仲間のプロジェクトに巻き込まれて失敗することもある。
このときあなたに責任はまったくないにも関わらず、
リスクを負った時と同じ被害を受ける。
だが、成功するときはリスクを背負った奴だけが成功する。
教訓7
最初から「誰も選ばないもの」を選べ。それが正解だから。
エリカの話は、リスクについて考えさせられる。
もちろん公務員や、老舗の業界など
特殊なところでは当てはまらないかもしれないし、
みんながリスクを取る必要はない、
あるいは取れない、取りたくないから、逆説的だということもある。
リスクとは、不確定の中に信じる確信。
きっといけるはずなんだが、結果なにが起こるか分からない。
不安とワクワクが同居してるはず。
それは必ずしも、出世することやお金を稼ぐことに限らない。
リスクとは「楽しんでるか?」という問いかけでもある。
だからこの本のタイトルは「PLAY・JOB」。
この本は広告屋らしく、見開きそれぞれに印象的な写真と
短いメッセージで織りなされてるからすぐ読める。
しかし、長年伝説を作ってきた広告屋経験ならではの
逆説的な視点や、奇妙な写真たちは読む時と場所において
様々なインスピレーションをもたらすようにしかけられている。
151ページあるが、
この記事に引用したタイトルと、エリカの話は見開き2つ分で4ページ。
これをみただけでも紹介する価値があると思って紹介させてもらいます。
2008年没となった、伝説の広告屋の思考エッセンス。
見開きそれぞれが広告的で、きっと楽しめると思いますよ。
PLAY・JOB (プレイ・ジョブ) | |
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