teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

高校野球最大の勘違い

僕はスポーツ全く見ない人なんだけど、
今回地元の高校野球が連覇するかもとかで
偶然TVつけて見て楽しんだ。
さすがに野球のルールは知ってる。*1


で、観てて非常に違和感あったのが「送りバント」という戦略だ。
1塁に走者がいたら2塁に送るためワンアウト犠牲になるバントである。
これ、1回3アウトしかないんだからゲームとして考えたら
1進塁と1アウトじゃ全然割りに合わないと感じた。
4ベースを単純に割れば1進塁0.25点だ。
3アウト消費しても0.75点にしかならない。
もちろんホームまでこなければ0.75点はゼロと一緒だ。


これはダブルプレーになりたくないとか
せっかくの走者を確実に返したいとか、
投手が防御率高くてヒット打てそうにないとか
いろんな理由があるんだろうけど、それでもなお分が悪いと感じる。


だって、守る側からるすると1塁に誰かいたら確実にワンアウトとれるからね。
ヒット打たれたピッチャーなら、打たれた動揺も
ワンアウト取って確実に仕事をひとつ進めることで落ち着くことができる。
お互いダブルプレーにならない練習だってたくさんしてるんだろうし、
2アウトまで進塁に消費するより長打狙うほうが得点どんどんつながっていい。
それにいくら進塁させても
結局最後は誰かが打たないとホームには辿り着けない。


これがまだ、8回、9回で同点という投手戦ならわからないでもない。
そこでの1点はなにより大事だろう。
しかし、僕が見た高校野球では普通に初回とか3回とかでも送ってくる。
しかも3点差つけられて追いかける側すら送ってくる。
クリンナップですら普通に送りバントしてくる。
取り返すのは1点じゃなく4点だぞ?
それでわざとアウトにして進塁するのか?
これが普通に行われてるのだからほんとに信じられない。



、、、というような話はたぶん水掛け論で
これまでいくらでも議論されただろうから取り敢えず置いといて、
むしろなぜ不利な「送りバント作戦」が心理的に成り立つのか考えてみて
ひとつの仮説を思いついた。


打率で考えると3アウト内ではまず点が取れない。


プロ野球だと打率2割〜3割かな。
高校野球だと5割、6割とかいるみたいだけど
とりあず3割として考える。


打率3割だと3回に1回のヒットだから、
ひとり出塁して4人目まわってきてもアウトの確率が高い。
そのランナーが無駄に終わるのももったいない。


もしみんなの打つ3割が1つの回に集中してれば点は取り放題だけど、
3回に1回ヒットと平均的に考えると集中するのは偶然の確率が高く
それなら1回のヒットを大事に扱い、
確実に点につなげて、9回のうち確実な1点を4〜5回取れたら御の字。
それに連打の偶然が重なれば言う事ない。


そうやって、打率で考えるととても3割ヒットでは野球が成り立たないので、
1点を大事に、送りバントでも得点圏にすすめることが重要になる。
たぶんみんなこう考えている。

ほんとに平均ならばその通り
そしてこれがたぶん高校野球最大の勘違いだ。

ランダムな打率は必ずどこかに偏る

元々範囲の狭い「確率」というのは偏るものである。
つまり普通に打ってれば、1試合のうちほぼ必ず打線はどこかに集中する。
27アウトしかない野球なら、
極端に確率低いパターンが3つあってそれは

「1試合全く誰も打てない」
「全員打ちまくり」

そして同じぐらい確率低いのが

「3人ごとにヒットを打つ」という平均なのだ。


3割バッターを平均3割打つと考える「送りバント戦略」が最悪なのはここだ。


平均通りに打つのが一番可能性低いという事実を、
ほとんどの人が逆に考えているか相当軽視している。


もっと単純に考えてみよう。

サイコロ6回振って、全部違う目がでる確率は?


もし6千回振った平均なら、1〜6までだいたい平均通りの出目に落ち着くだろう。
だがこれが6回なら?


(6/6)x(5/6)x(4/6)x(3/6)x(2/6)x(1/6)=(720/46656)
※この計算式は無視していいです。


とにかく6千回じゃなく6回限定で振って全て違う目がでる確率は

約64分の1だ。

残り64分の63はたいてい、同じ目が2回も3回以上も出るパターンとなる。


こういうのは中学か高校でならう限定した確率の話だが、
日常で使う場面がまずないので、数学者とか
ランダムを扱うゲームプロプラマーとかじゃないとあまり意識しないかもしれない。
なので、「限定されたランダムは9割9分偏る」という話を
そのまま誰かに話してもほとんど伝わらない。


これを実感してもらうためには、
手元にサイコロを持って、
1〜4までがアウト。
5がヒット、
6がスリーベースヒット、*2
つまり打率3割として、手元で9回まで野球を進めて欲しい。
そうすれば、わずか27アウトの間、
打率は決して平均的にならず、必ず得点圏がどこかに集中する結果になることを知る。
「送りバント」が正しいと思ってる監督や選手は納得いくまでやってみて欲しい。



限定された確率には他にも有名なネタがある。

40名の教室で誕生日が重なる人がでる確率は?


365日のうちの40名なんだから、
平均で考えるとまず重ならないと考える人は多い。
計算式ははぶくけどこの場合、

誕生日の重なる確率は約89%
ひとりも重ならない確率が11%

となる。*3


理屈は上のサイコロといっしょ。
これも40名とか30名でも1〜3年の野球部員でもいいので
人が集まる場所で誕生日を聞いてみると
相当な確率で誕生日がかぶることが実感できる。


だから野球は打率3割で送りバントなしでも必然的に得点が取れるスポーツになる。


プロの打率というのは年間の100試合以上の数百打席を通してでしょう?
あのイチローでさえニュースでは5打席0安打も、
5打席3安打も普通に何度もあるわけで、毎試合3割という方がむしろおかしい。
本当に平均通り2人アウト、3人ごとにヒットで試合が進んだら得点にならず
実際の野球のほとんどの試合で得点が動かないことになる。
だが現実は偏りまくっている。


ラッキーセブンでも、野球は9回裏からでもいいけど
限定された27アウトのうちで、
普通に打っていれば高確率でどこかに盛り上がりが用意されるのが
限定された確率である。


それを3割しか打たないからという平均的な考えで「送りバント」をすると
最初に言ったように1進塁とワンアウトはとても分が悪い。
投手戦で1点がどうしても欲しい時以外にはまったく使えない戦略である。


この話はたぶん伝わらない


そもそも野球の歴史なんて相当長いはずなので、
僕じゃなくてもそういうことに気づく人、気づいてる人は多かったはず。


でも限定された確率は小数点扱うのがめんどいとかで、説明が難しい。
なるべく数字を扱わないで説明したほうがいいのだけどそうもいかないし、
それこそ、ダブルプレーで終わったとき
「あのとき送りバントしていれば!!」みたいな後悔はすぐわかるけど、
送りバントして2塁残塁で終わっても、
「あのとき送りバントしてなければもうワンアウト分チャンスが続いたのに!!」
というロスは誰も言わずに見過ごされる。
最初の2アウトまで犠牲に使っていいというのは
チャンスのあとの大チャンスを犠牲にして成り立ってると思うのだけど、
どうもこの観てる範囲が違う気がする。


送りバントしないチームが勝率高くても、それは選手の能力や他の作戦や
野球にはさまざまな要素が関わるので
勝利にどれだけ効果があるかというのも測れない。
それこそ27アウトでは全員打てない時だっておかしくないのだから。


だから「送りバントしないほうが有利」という方針は必ずしも人に伝わる話ではない。

でも限定された確率では目先の1点を追うよりリスクを取って選手を信じる方がずっといい。

27アウト内のどこに偏るかは予測つかないが、
送りバントで自ら残り24アウト、21アウトと選手を消費するのは
むしろ偏りが出る枠が減り確率の上で不利になるのである。




、、、という仮説。


なぜ「送りバント」がいまだ高校野球で常套手段であり、*4
かつ、不利になるのになぜみんなが間違ったまま認識しているか、
という落しどころは打率を平均で考えるこれしかないと思うのだけど、
さすがに野球素人のいうことなので、
「送りバント」はもっとずっと高度な戦略なんだよ。
というツッコミ歓迎。





追記:

たくさんのツッコミありがとうございます。
ここまでのブログコメントと、ブクマコメントの否定肯定まとめてみました。
僕はもちろん送りバント否定側に周り追記してみます。


送りバント肯定に近いコメント

高校野球でのエラー率(特にバント処理では結構……)

TVみてるとバント処理のエラーより圧倒的に
外野のエラーや、送球エラーのほうが目立つのですが
もし高校野球においてバント処理のエラーが突出して高いデータがあれば
送りバントが有効と言えますね。


2塁の位置(外野からの距離が近い)
走者のリード(1塁だと執拗な牽制が可能)
投手からの死角。


一塁→二塁の進塁と二塁→三・本塁の進塁に差があることは球場の形見れば分かる。

ゲッツーの話はあとで。
リードの取りやすさや、クロスプレーのことですが、
TV見てて二塁、三塁、本塁をランナーが普通に踏む回数と
ぎりぎりのクロスプレーになる回数では圧倒的にクロスプレーが少ないです。
誰も無理に危ない橋わたらないので10%切るでしょう。
10%以下の場面を有利に戦う戦略より
90%の場面で有利に戦う方が大事と僕は考えます。


平均打率3割?(それは相当な強打のチームです)


打率はみんな同じではない。

確率は偏るという話なので、打率が2割でもアウトと進塁をとりひきするより
バットを振るほうが得点圏につながる確率高いです。
2割でサイコロ振っても送りバントが不利なのは変わりません。
27アウトしかないうちの1アウトはめちゃ大事です。


ランナー1塁のときにヒットが得点に結びつく確率と
ランナー2塁のときにヒットが得点に結びつく確率は
非常に大きな差がある、という点が抜けているのではないでしょうか。


2塁からだと1打で得点しやすくなるだろうし。


ポイントは、2塁走者は帰しやすいけど、1塁走者を帰せるヒットを打つのは難しいからじゃないかと。


高校生は非力なので金属バットでも二塁打なんてめったに出ない。

僕がTV見る印象では高校生でも金属バットで結構飛ばしてるとは思うのですが、
むしろ長打諦めてバントするから減ってる印象なんじゃないかと。
視点が「3アウト内にどうやって1点を取るか?」というのと、
「3アウト内にどうやって得点を重ねるか?」という違いかもしれません。
僕は後者のほうが勝率上がると考えてます。


ただ高校生は金属バット使ってもめったに長打がうてないというデータがあれば、
送りバントが有効になる強力な説となりそうです。


高校野球はペナントレースじゃないから。


負ければお終いのトーナメント戦。

バントは安定のための作戦にならず単に勝率が下げるだけという仮説なので
ペナントレースか1回限りのトーナメントかは関係ないです。


「ピッチャーの調子は平板("分散”がないと言っていいのかな)」が暗黙の前提になってるような。

ピッチャーが体力消耗すれば交代が可能ですが、
むしろ最初こそマウンドになれなかったり、エンジンがかかるの遅かったり
例えば前回の選抜決勝では、延長で追い詰められてなお球威が上がる投手や
延長で交代してしまったがため、
交代投手が場についていけず打ち込まれて負けてしまったり
序盤の対戦と、終盤の対戦で投手打者お互いのタイミングをとる力量も千差万別で
さらに個人のメンタルや、交代要員の影響に変数が多すぎるので
そこは切り離して考えたほうがいいかと。


ピッチャー経験するとよく分かるけど「2塁走者から受ける心理的プレッシャーは異常」。これだけで犠牲バントに大きく意味がある。

一塁、三塁ではなく背後にたたれるのが嫌なんですね。
これはさすが経験者ならではの意見だと思いますが、
甲子園でもバントしてくれたほうが楽というピッチャーの意見もあります。
こういうプレッシャーは早い段階で克服してないと
甲子園で上に上がるのは難しいと思われるので
後者の意見のほうが甲子園で勝てるメンタルをもつピッチャーなのかと。


2塁の位置(外野からの距離が近い)


バントをしないメジャーリーグではゲッツーの嵐なので、見ている側としては時に苦痛になります。

ゲッツーになりやすい。
ゲッツーが観客から非難されるとかだと、
確率的に低くても印象として強まるんじゃないかと思うのですが
これに対して明確な反論データを持ってません。ヘルプ。




とまあ、記事アップして速攻打ちのめされた感じです。
とはいえ、送りバント肯定が決定的に崩せないのと同じく
送りバント否定もまだ崩されてはないと思うので、
どちら側の意見でも、ただの雑談コメントでも引き続き募集です。
特に以下の本読んだことある方のコメントとか知りたい。


送りバント否定に近いコメント

ビリー・ビーンの戦略をぜひご参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%B3


ビーンは野球を「27個のアウトを取られるまでは終わらない競技」と定義し、それに基づいて勝率を上げるための要素を分析した。

バント・犠打:

ワンアウトを自ら進呈する、得点確率を下げる行為と定義して、完全否定した。犠打で進塁させることで上がる得点の期待値は、そのまま強攻させるより小さいためである。具体例としては送りバントが挙げられる。無死ランナー一塁の場合、送りバントで走者を進塁させることが、保守的な野球観を持つものにとってはセオリーであると考えられているが、(ビーンらの定義する)得点期待値を下げるだけの行為である。


マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)

これはほぼ同じ考えですね。
ただ、送りバントだけでなく野球すべての要素や
野球選手の獲得まで統計学とってるので、非常に奥が深そうw
でも今回知りたいのはバントの部分だけなので、
誰かこの本手元に持ってる方いたら教えてもらえるとありがたいです。


2,3年前には、送りバンドを全くしないフルスイング打線が持ち味の常葉菊川旋風が吹き荒れましたね。3年前の春の大会では、送りバンド全くなしで強豪を逆転勝ちの連続で倒してそのまま優勝しちゃいました。その年の夏の大会の静岡予選では、常葉菊川にならってバンドをあまり使わない学校がいいところまで勝ち進んでましたよ。

ちょうど上の本が日本で発売されたのが2004年で議論があったとWikiにあるから、
いち早く取り入れたのが常葉菊川かもしれませんね。
下の引用でプロ野球だと0.13得点、
自チーム比較の13%程度しか得点数違わないので
フルスイング打線そのものが要ではなかったでしょうが*5
すこしづつ浸透してたりするのかな?


また、バントを全く使わない打線ももちろん方針としてアリだと思いますが、
それが成功するのは送りバントというセオリーが一般化している中での話であって、
みんながそうしてると陳腐化してしまうように思います。

ビーンが選手の評価基準そのものを見直し、勝率向上のために必要な能力を精選して短期的改善を積み重ねることで、アスレチックスはプレーオフ進出の常連チームとなった。しかし、セイバーメトリクスによる評価がMLBの常識となった近年は、ビーンの戦略にも変化が表れている。

確かにこれはむしろ、知られたくないセオリーなのかもしれないですね。
でも観てる僕としては送りバントより打って欲しいという気持ちです。



ブコメ、ヤフー知恵袋から統計情報教えてもらいました。
引用です。

野球の犠牲バントって効率的な戦法ですか? 統計的な数字が知りたいです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1023796835


「犠牲バント(送りバント)シチュエーションはノーアウト一塁」という条件であれば、以下のようになります。


東洋経済社より、「野球人の錯覚」という本が出版されており、この中で2005年のセ・リーグ、パ・リーグを合わせた全公式試合の細かい統計がとられており、このデータからノーアウト一塁での送りバントをした場合/しない場合の得点確率、平均得点が計算されています。


これによると。

バントしない → 得点確率 40.6% 平均得点 0.885点
バントする → 得点確率 40.4% 平均得点 0.758点

(バント成功 → 得点確率 44.0% 平均得点 0.819点、
バント失敗 → 得点確率 28.4% 平均得点 0.552点)
となっています。

送りバントは1点を確実にとりにいくための戦術であるにもかかわらず
”バントをしなかった時の得点確率はほとんど変化がない。”

ということがわかります。
つまり、全体を通してみれば

送りバントには戦術としての意味はない、となります。


なおこの本では 「得点差が2点以内の場合」、「ワンアウトランナー一塁の場合」などについても同様の調査をしていますが、結果はほとんどかわらなかった、と結んでいます。


ただし別の考え方もできます。
バントを試行しなかったということは打者が信頼できる強打者である可能性が多い、その結果得点確率が高くなっている。
一方打率の低い打者(投手など)の場合は普通に打たせるよりバントさせたほうが得点確率が高くなる要素がある、などこのような場合はバントはそれなりに意味のある戦法、ともいえます。


野球人の錯覚

高校野球ではなくプロ野球のデータですが、
2005年全公式データからの統計は信頼があるかと。


データが1試合に平均化され小数点の誤差にしか見えないので
小数点省くよう1000倍にします。

バントしない → 1点とる確率 40.6% 得点 885点
バントする  → 1点とる確率 40.4% 得点 758点


この場合アウト消費する犠牲バントより
リスク取ってアウト消費しない長打をねらうほうが、
1点を取る確率も、平均得点のどちらも上回ってます。


最後解答者の説で、投手などはバントの意味があるとのことですが、
これは統計なのか感なのかわからないのが残念。
高校野球なんかピッチャーがホームランうつとか、
4番でピッチャーとかもあるので、
打率1割きるようなとことん打てないピッチャーでなければ
積極的に打つほうがいいんじゃないかと僕は思ったり。



気になるのは高校野球の統計データだと違ったりするのか?
というところですね。





再追記:


みんなのいろんな考えはとても面白いです。
例え仮説でも野球素人が断言口調で物を言うのが気に食わない人もたくさんいるみたいですが、
素人だからとどっちつかずで自分の意見をハッキリ言わない記事は
もっとイライラするものになって、そんなの誰も読む価値ないし、僕も読みたくないです。
それなら言いたいことハッキリ言って殴られるようにツッコまれたほうが議論は速いと考えてます。


とはいえそんな素人の僕にたくさんのご意見ありがとうございました。


もうアクセスは落ち着いて議論はおさまったようですが
一応コメント、ブコメの流れをみてまだない意見を少し追記しておきます。


プロと違って高校生の技術とメンタルは未熟で、さらに甲子園は1回負けたら終わりという緊張感からの焦りがあり、エースもひとりしかいないからバントからのプレッシャーや疲れはとても効く。

これ、甲子園のベスト8ぐらいのエースやチームにおいては
当てはまらないと思います。
4000校中のトップクラスはやはりそれなりの技術とメンタルを
持ち合わせて勝ってきたものだと僕は考えます。


そして実際の甲子園49校中、
ベスト16にあがる3回戦まででも自分たち含めたベスト8候補と
かならずぶち当たるわけです。
甲子園に出場できたら充分で
1〜2回戦で負けていいとするならこんな話もいりません。
そして甲子園で上に勝ち上がるという話なら
強い相手のメンタルはバントで崩されるレベルではないかと。


僕は高校生だから技術やメンタルが弱いとは思わないです。
高校卒業からすぐプロで通用する選手とかもいるでしょうし、
1回も負けられないからこそ、
ペナントのプロの試合より集中力が高まるという選手もいるでしょう。


コメント等では何人かの経験者から
バントしてくれたほうが嬉しいという意見もありますし、
強いチームや強い投手がこんな感想だとするとますますもって意味が無い。


ひとりしかいないエースをバントで疲れさせるというのも
この緊張感を持続できるほどメンタルが強ければ、
わりと1試合集中してこなせると思います。*6
ペナントレースのように長期間試合が続くというわけでもなく、
決勝戦近くならないと連日連投にはならないので甲子園だけの範囲なら
2年間の間にそれに耐える体力や戦法を身につけてくるでしょう。*7


確かに初出場でまったく実力が出せないチームはたくさんあるようですが、
実力が出せないチームに勝つための作戦を考える意味はあまりないので
選抜大会などですでに甲子園に慣れてるチームや、
前大会2年生で出場経験ある選手などがいずれ対戦相手になるから、
甲子園を勝ち抜くなら相手の技術やメンタルが未熟だと考えるべきではないと僕は思います。


統計データで戦術を決めるな! 選手はロボットじゃない!! みんな同じ戦術になった野球など観たくない!!!

僕の場合、初打席でもあの投手はおまえじゃ打てないだろうからとか、
ワンアウトより2塁のほうが大事だからと決めかかって
みんなバントばかりさせるほうが、
ロボット扱い的な、同じ戦術ばかりな感じを受けますが、見方は人それぞれですかね?


データで戦術を決めるなといっても
得点を競うゲームなら、そのバントを選択するのにも
打順を決めるにも必ず数字が絡んだうえでいろいろ考えてるはずです。


コメントにあった「それがセオリーになると価値がなくなる」の通り、
将棋だろうがボードゲームだろうが統計で定石ができた上で
その上でさらにどんな細かい戦術を立てるのかがゲームプレイの進化と思います。
統計はあくまでベースであり全てにおいてその通り動くわけではなく
そのさらに先の細部を進化させて考えるのがゲームをプレイする上での戦術だと僕は考えます。
バントばかりの戦術よりも、バントもあるよと
揺さぶりに使うぐらいがむしろ効果的というコメントに僕は賛同します。




まあこれは確率とか統計とか全部ロボット的に決められてるみたいな
この仮説が野球の全てだと受け取れかねない断言口調に感情的になってるだけで
さすがにそれで野球がどのチームも同じ戦法ばかりになるとは思ってないでしょうけど。



2005年のプロ野球データとしてもわずか0.13得点の差。
勝率ではなく、自チーム比較での得点確率がわずか13%有利なだけなので
バントでも長打狙いでも他のいろんな実力要素が大事なのはその通りですね。
10試合、計30点ぐらい取れるチームが13%得点確率上がるよりも、
まず10試合、60点取れるぐらい実力そのものを上げる練習が大事ではあります。


その13%違いで1得点多く手に入るのか?
その1得点が試合を決定づけるのか?というと、微妙ではありますが、
試合は結局そういう細かい要素をたくさん積み重ねて勝利をもぎ取るので
議論に値する13%になるのかと。



あと、バントをさせないプロ監督のチームが優勝しても
選手側がそれを非難して退任させる例とかもあるんですね。
見てる側でもこれだけいろんな意見があるのだから、
選手はもっともっと自分なりのこだわりや戦術やバント練習があって、
そういうのを実体験で喜んだり悔しがったりした
強く残ってる印象とは全然違う統計データなんかに否定させられるのは
確かにきついかもしれません。
あるいは統計データ以上の戦術をもってたらやはり悔しいので
そこはきちんと話し合うべきか。


これだけ議論が長くなると、そういう気持ちにも納得出来る気がします。
データから得点率上げるよりも、
あえてこだわりをもった作戦を仕掛ける方がプレイしてる側は楽しいかもしれません。
例え1回しかない甲子園でもそうかもしれませんね。



追記3:2010年夏の高校野球が今日8/21終わりました。


興南が初の沖縄優勝、春夏連覇は6回目ということで大盛り上がりでした。
興南優勝おめでとう!!


さておき、あれから高校野球のデータに関してトラバもらったので追記です。

高校野球のセオリーを検証する本 - 俺の邪悪なメモ
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100816/p1


徹底データ分析 甲子園戦法 セオリーのウソとホント徹底データ分析 甲子園戦法 セオリーのウソとホント
川村 卓/中村 計

朝日新聞社 2007-08-07
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本書は2005年夏から2007年春までの4大会のデータを基に、
様々な高校野球のセオリーを検証したもの。


「ノーアウト1塁」の状況で

送りバントをした場合の得点率は38.0%
強攻策をとった場合の得点率も38.0%

バントでも強攻策でも得点率は全く同じなのでした。


ただしアウトを1つ取られた「1アウト1塁」の状況では、

送りバントをした場合の得点率は24.6%
強攻策を取った場合の得点率は32.8%

となり、明らかにバントをした場合の得点率が下がります。

プロ野球の本と同じで、1点を取るためのバントなのに
強攻策と得点率が変わらない。
この本はバント比較の平均得点までは載ってないようですが
さすがにアウトになってでもバントで進塁させたほうが大量得点につながる
という意見はないでしょうから、これもプロ野球と同じく
強攻策の方が平均得点上がると思われます。


ところで僕は地元沖縄なので興南ずっと応援してましたが
優勝校の興南もよくバントしてましたねw
それで得点につながったのもありますが、
バントでせっかく進塁したのにランナー残塁のまま終わることも多かった。
それでも試合結果は圧倒的で、
バントをどうこう言うまでもなく走攻守のレベルが高い。


1回戦
興南(沖縄)9 ― 0 鳴門(徳島)
2回戦
興南(沖縄)8 ― 2 明徳義塾(高知)
3回戦
興南(沖縄)4 ― 1 仙台育英(宮城)
準々決勝
興南(沖縄)10 ―3 聖光学院(福島)
準決勝
興南(沖縄)6 ― 5 報徳学園(兵庫)
決勝
興南(沖縄)13 ― 1 東海大相模(神奈川)


1点差の試合は対 報徳学園のみですが
その試合も報徳学園が先に5点差をつける展開からの逆転だったので
1点の争いではなく5点追いかける強攻策の試合展開でした。
バントからの残塁チェンジも多かったので
興南はバントでアウト増やさなければ
もっと得点重ねてもおかしくなかったと思います。*8


でも、(興南以外でも)優勝校がバントしてるからバントは有効であり正しい。
という意見も多いですね。
それについて人は生存バイアスで判断するという動画が
ちょうど今日上がってたので下にのっけておきます。


ま、応援はこんなこむずかしいこと考えず、
一喜一憂してましたけどねw
これまで見てなかった野球ですが来年の選抜も応援しようと思います。


www.youtube.com


teruyastar.hatenablog.com

*1:外で遊ぶのはもちろん、ファミスタとかよくやったしw

*2:ホームランないけどあいだを取ってこれぐらい

*3:もちろんジューンブライドやクリスマスベイビーとかの要素は入らない純粋な確率

*4:プロ野球でもやるのかな?

*5:みんながやってるバントの練習時間を、より重要な守備練習とか他の時間に割り振れるのはいいことかも

*6:どっちかというとワンアウトとバントの引換はメンタルが強ければまったく影響なさそうだけど、むしろ偶然でも連打されたときの方がどんなメンタル強いプロでも精神的ダメージでかそう

*7:元からケガで悩んでるとかは別

*8:それよりも我喜屋監督がどう指導したらこんな走攻守揃うチームになるのかが気になりますが