teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

「ゴミだね」と言われて本当に「傷つかない技術」

というか、広い考え方。

「傷つかない技術」を体験した授業 | 記事 | s-style-arts blog !!
http://s-style-arts.com/blog/article/entry-234.html


最後の学年のアート&ビジネスというクラスでした。
3ヶ月くらいかけて完成させる課題で、
◯△□の基本的なシェイプを使って最終的には何か
プロダクトのモックアップを作るみたいな感じだったと思います。
(略)


「はい。みんな課題持って来ましたか?
 では、机の上に出して、紙の人はそのまま破り捨てなさい。
 立体物の人は壊してゴミ箱へ捨てなさい。」

生徒全員しばらく唖然とした状態で沈黙。
その後、泣き出す人、すごい剣幕で怒り出す人、教室から出ていっちゃう人、
多くの生徒はそのショックをそれぞれに表現していました。
(略)


「みんなプロのデザイナーとしてこの先の人生食っていこうと思っているなら、
 こんなことは日々起こること。
 これでショックを受けてやる気をなくしているなら、
 クリエイティブな職種に向かないから違う道に進んだほうがいい。
 クライアントの中にはアイデアや作品を見ることもなく破り捨てる人もいる。
 わたしもそんなこと毎日のように経験してるぞ。」

仏教の色即是空を教えてるわけじゃ無いよね?


さすがに現実社会でも、これはないですよ。
こちらから営業で持ちかけたり、コンペや賞に参加するならともかく
「発注者が作品を見ずに破り捨てる。」というのはありえない。
(コンペや賞でもありえないけど)
この場合、講師が3ヶ月の期間で生徒に作品を発注して、
単位と、評価と、アドバイスをもらう構造ですから
単位はもらえるとしても見ずに破り捨てるのは
暗黙の契約違反のように思われてもしかたない。
だいたい発注者が金払ってそれを見ずに捨てても得しないし。



一応、ゲーム制作とかで1年頑張ったけど「お倉入り」とか、
ちゃぶ台返し」で1から作りなおそうということは結構あって
それは激しくモチベーション下がりますが、
一番きついのはそれをコントロールできなかった、
ディレクターなりプロデューサーだったりします。


現場は現場なりに、途中からなんとなく「原因」と「結果」を理解してるので
原因のわからない理不尽さとは違いますし、給料もちゃんと出ますが
さすがに何度もそれが続くようだとスタッフが離れるか、
会社が潰れるかの話です。

あなたの作ったものはゴミである、あるいはプロとアマの分岐点:プロジェクトマジック:ITmedia オルタナティブ・ブログ
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2012/02/post-fef7.html


・モノには価値があるモノとないモノがある
・「頑張ったか」は価値があるかどうかとは無関係
・価値がないと判断したときは、それをオブラートに包んで伝えるべきではない
・価値があるかどうかは、作った本人には判断出来ないことがある
・作ったモノがゴミなだけで、作った人のことまではゴミと言っていない
・「ゴミだね」に傷ついていたら、クリエイティブな仕事はできない
そして、「ゴミだね」への反論は、ゴミではないモノを作ることしか許されないこと。
「ゴミだね」を恐れて指示を待っていると、永遠にゴミしか作れない。
・価値があると信じて自分の頭で考えたモノを作る。
・そして「ゴミだね」と言われる。
・そこでイチイチ立ち止まらずに、また自分の頭で考えて作る。
この繰り返しでしか、プロフェッショナルになれない。


わりと同意できる意見ですが、反論したい所があります。

モノには価値があるモノとないモノがある


違います。全てのモノに価値があります。
エスキモーに氷を売るように、
最先端水道施設がある日本で海外の水を売るように、
電子釣り竿や双葉杏カードに数万円払うように、
価値のないものに、どういう意味と価値を付けて売るかが
プロとして腕の見せ所です。

価値があるかどうかは、作った本人には判断出来ないことがある


むしろ作った本人にの言い分にも価値があり、
判断する人の基準にも価値があってどちらも正しく、
ただ思想の違いだけが全く伝わらない事もあります。


物の価値そのものは2元論じゃありません。
Macのビジネスと、Windowsのビジネスは
どちらかが価値のないものでしょうか?
ジョブズWindowsを価値のないゴミだと言いそうですが、
ゲイツも、パーツ部品価格が高い頃に競争原理の働かない
OS・ハード一社供給のやり方をゴミだと言うかもしれません。


アップルで働きながら、
Windowsの多機能かつなんでも下位互換性しばり、
という思想を持ち込むと、
君には価値がないとすぐクビになるかもしれませんが、
本当にその思想が間違って価値がないゴミというわけじゃない。
ジョブズの思想やビジネスに合わなかっただけで、逆もしかり。



モノを作ることと、モノを売ることを別に考えたら、
モノを作ることには全て価値があるんですよ。
あなたの作るものはどんなモノでも全て正しい。


ぼくらは、神道の神社に初詣へ行き、キリスト教のクリスマスを祝い、
教会で結婚し、死ぬときは仏教の坊さんを呼ぶのですから、
あれに価値があって、あれには価値がない、なんて考えに縛られることはない。



優秀で実績のあるトップだからといって、
彼らの判断こそが正しい、正しくない、
価値がある、価値がないという2元論ではくくれません。
一度自分の会社を追われたジョブズも、
10年以上前からタブレットPCを謳いながら
iPad を作れなかったビルゲイツもいろんな大失敗をしていて、
後から出てきた サーゲイ/ラリー(Google) がうまくやったこともあります。
ジョブズは遠回りだったと思える点と点が
線につながることを信じることだと言いました。
彼らでもどこに価値があるか判断できないことはおおいにあるのです。


作ったモノがゴミなだけで、作った人のことまではゴミと言っていない


一番反論したいのがここ。
心血注いで創り上げた作品は、
愛すべき自分の分身であり子供みたいなものですよ。

明確な理由があって改善の方向性を示すならまだしも、
ただ「ゴミだね」で片付けられては作った人をゴミと言ってるに等しい。



でも、「ゴミだね」で片付けたい理由もわからないではありません。

分かりやすい説明にはコストが掛かるから「ゴミ」で片付ける


生徒一人ひとりに懇切丁寧なアドバイスと指示をするのは時間的に不可能です。
また、説明するにも質問するにも「分かりやすく言語化する」というのは大変難しく
元々それができるなら、自分でそこまで理解してるなら
外の専門家に発注せずとも、自社で融通きかせてより良いものを作れます。


フォード以前の時代だと、お客に欲しい物を聞いても
「ガソリン自動車」という新しい乗り物の説明が出てくるわけもなく
「もっと速い馬」という言葉でお客は求めたのですから。



時差を使ってじっくり書けるブログですら、伝わらない大変さを経験してるので
リアルタイムに短時間で分かりやすく、というとかなりレベル高い技術が必要。
殆どの人がそんな伝え上手ではありません。

モノによっては聞く側にも高いレベルが必要とされます。
だから、人間関係を気にしないでいいのであれば「ゴミだね」と、
一言で片付ける人が出てくるのは仕方のない事でしょう。
一番手っ取り早いし、変な説明で無駄な誤解されることもない。




では立場が上の人から、ゴミと言われることを前提でどう考えるか?

アマチュアとして物を作り、プロとして物を売れ。


結果を出す方程式を例えばこう考えます。


「製品(作品)」の質 x 「プロデュース」力 = 売れる確率


物づくりに関しては我が子のように思っていい。
しかし制作者は製品の質には一生懸命だけど、
プロデュースが下手なことが多い。
売れるかどうかはプロデュースの力も大きいけど
マイクロソフトMacのような売り方はできない。


ほんとに制作物の質で話にならないなら自分でゴミかどうかもわかりますが、
一定水準以上の制作物が「ゴミだね」と言われたら、
「うちの会社のプロデュース方針とは相性が合わなくて売れないよ」
と意訳します。
それだと頑張った製品(我が子)だけのせいではなく、
そこで売るための導線、プロデュース力(相手の力)も足りないわけで

傷つくよりもまず考えることが多くなります。


例えば
「その会社のプロデュース方針になるべく近づけるには?」
「製品思想と相性のいい会社を別に探す(思想の近い会社に転職)か?」

プロデュースは変数の一つなので、単純に
「製品の質をさらに上げる」で、
売れる確率の予想合格ラインに届かせるという頑張り目標もいいですが、
ミクロで言えば、自分の最初のお客が上司やクライアントだったりしますから
最初のお客様へうまくプロデュースできるよう、
新たな価値や意味づけの知恵をだし、そこら辺の社員や知人を捕まえ
ブラインドテストのアンケート集計などをうまくプレゼンし、
「プロデュース方針を製品に合わせてもらう」ことも戦略のひとつとなります。




アマチュアとして物を作り、プロとして物を売れ。
この言葉、語源を調べると決して矛盾しません。

愛すること、宣言すること


アマチュアとプロの語源を検索すると、

アマチュアとプロ
http://www.kitashirakawa.jp/taro/eigo54.html


amateur(アマチュア)という英語は、
「愛する人」という意味のラテン語 amator(アマートル)が語源である 。
英語の amateur の日本語訳は通例、
「素人」(しろうと)や「愛好家」となるが、語源に照らすなら、
後者が言葉の成り立ちをより適切に伝えていると言えるかも知れない 。

語源に見るプロフェッショナルの条件: ITコンサルタント 市井賢児のメモ
http://ichy.seesaa.net/article/61470078.html


プロフェッショナルの語源は「告白、宣言」の過去分詞である
ラテン語の professus 。宗教用語。
つまり神に対して告白、宣誓した人や神の託宣を受けた人を指し、
最初は聖職者のみを指したそうです。


それがまず裁判官や医師に広がったそうです。
今でも彼らはプロフェッショナルのイメージに近いですが、
善悪の Judge や治療は確かに神の領域により近いですね。
語源からして、プロフェッショナルは誓いのために働く人であり、
また自ら高い(神に準ずるような!)規範や倫理を課し続けている人のこと。


作るモノを愛し、自分が何者であるかを公に宣言する。
としたら、アマチュアと、プロフェッショナルは矛盾しません。
現代的には職業としてそれで食っていくと意訳できそうです。




では、相手ではなく自分でゴミと認めてしまったモノは
やはりゴミとなるでしょうか?

ゴミを捨てない


大学講師に言われたからと言って、作品を捨てない。
上司やクライアントにゴミと言われてもそれはストックしておく。
それは全てあなたの意味のある財産となります。
時代や場所や予算やプロデューサーが変われば使えるかもしれません。
日本で売れなくても、アメリカでヒットするかもしれません。



オルタナティブブログのコメント欄も参考になります。

ピンクスレイド 2012/02/25 11:34


名前忘れましたが、ある小説家が『小説家になれて本当に良かった。だって、ゴミのようにしか思えなかったボクのこれまでの人生が、思い出たちが、みんな小説のネタとして使えるんだもん』みたいなことを言ってたような気がします。


宮崎駿は、TVアニメ演出家から、映画のナウシカへ移るまで
周りから絵が古いだの売れないだの不遇の時代を過ごしました。
そのとき描いたたくさんの企画は全てゴミとしてボツにされましたが、
その中に出てきたコマネコ?というキャラクターは後の「トトロ」になり、
もののけ姫」というタイトルは、大きくストーリーを変え
後年の日本興行収入記録を塗り替える作品として生まれ変わりました。


エリア88のサキ・ヴァシュタール司令官も。

私ならそのアイディアを捨てんぞ。

と言ってましたよ。


プロとして物を売る = プロデュース視点を考える


予算を引っ張ってきたり、広告や、プロモーション展開を考えたり
分かりやすく製品の魅力を他人に説明する、
そういう優秀なブレーンがいると助かりますよね。
もちろん、営業や販売網もプロデュースの一環です。


たいていの製品は、10万本売れたらヒット
あるいは大ヒットだったりしますが
それは 1億2千万人中の10万人。
1200人中の 1人に正しく届けばいいわけです。
老若男女、全員に宣伝することは不可能ですが、どんな製品や作品でも
1200人に正しく認識してもらえば、1人以上は必ず反応する。
数字上は理想論ですが、プロとして物を売るには開発者がプレゼンするにも、
まずプロデューサー視点が必要となるでしょう。

島本和彦マンガの名言・迷言集【アオイホノオ吼えろペン】 - NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2129127504586992401


炎尾燃のセリフがしみます。



現代アートなんかだと1200人全員からゴミだと言われるようなものでも
世界へ1201人目の超大金持ちに売ったりしますよね。

世界ランク速報 おまえらこれが200億円の絵だってよ 正直俺でも描けるわ 芸術って何だろうな
http://worldrankingup.blog41.fc2.com/blog-entry-1580.html




562 : 名無しさん@涙目です。
なんだこれ ゴミだな


僕も全く理解できませんが、こういった絵にもたくさんの解説とその背景と、
時代的な価値、作者の歴史などいろんな説明で説得できたなら
ドリランドのカードよりも深い意味と価値を
持たせることができるかもしれません。


現代アートは極端ですが、プロデュース能力とはそういうこと。
どちらかというと新たな付加価値として知恵を絞る能力ですが、
誰にでもそういうブレーンがつくわけではないので、
最初は自分で考える必要がある。


モノを作るアマチュアな心と、モノを売るためのプロデュース視点。
実際にプロデュースまでできるかどうかはともかく、
開発、制作側にも、この両方を意識しておくことが
「ゴミだね」と言われてもいちいち「傷つかない技術(思考)」で、
前へ進むことへ繋がると僕は思います。




エリア88 (1) (MFコミックス―フラッパーシリーズ)吼えろペン 10 (サンデーGXコミックス)芸術起業論