たけくまメモ : マンガとアニメーションの間に(6)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-f048.html
たけくま先生ところで紹介されてた個人アニメーションの例で、
Webで見れた奴の中の、「夏と空と僕らの未来」が面白かった。
夏と空と僕らの未来
http://www006.upp.so-net.ne.jp/geta/natsusora.html
井端義秀『夏と空と僕らの未来』は第17回CGコンテスト入選作である。この作品はマンガのコマ割りをそのまま画面に生かしつつ、コマの中でキャラクターが動き、最後のコマを見終わるとページがめくれるという、マンガとアニメの折衷形式のようなユニークな作品になっている。庵野秀明がテレビアニメ『彼氏彼女の事情』で、原作マンガそのままのコマ割りをアニメ画面内で映して話題になったことがあるが、コマ割りを画面に生かすという意味では井端のこの作品のほうがはるかに大胆で、しかも成功している。
マンガにおける「コマ」の役割とは、第一に物語内の時間を分割し、平面上に再構成(レイアウト)するものである。第二に、読者の視線を巧みに誘導することで、作品における「時間」を読者に追体験させるものである。
本来それは読者の視線の運動に任され、作者が「このコマは2秒、次のコマは15秒」と読者の「読む時間」を規定することはできない。そのため、たとえばコマ割りをそのまま画面に映してカメラワークでコマを読ませると、読者はこれを窮屈に感じることが普通である。ところが井端のこの作品では、作者の視線誘導に窮屈さを感じないばかりか、心地よい運動性すら感じてしまうことは驚きであった。マンガとアニメのフォーマットの違いを考えるうえで、これはユニークで重要な作品になっている。
他にも、いろいろよかった。
マルラボライフ表紙
http://jump.shueisha.co.jp/henshu/JDM/title/marulabo/marulabo_top.html
ショートフィルム
http://maruproduction.com/flash/yoshino.html
活動漫画館
http://homepage.mac.com/nosferatu.non/
で、夏と空とは面白かったんだけど、
このフォーマットを継承する作品をみかけないというのは、
コスト的には大変だったのかなあ?
などと、考えつつ他の例を紹介してみます。
アニメの「彼氏彼女の事情」と
同じガイナックスの「フリクリ」の一部でそういう演出は見られたが、
当のフリクリ劇中で、
「あれを手抜きだ!!なんて言われたけど、あれ普通にアニメやるよりお金かかってるんだよ!!」
みたいな台詞があった。
フリクリ DVD-BOX | |
鶴巻和哉 GAINAX おすすめ平均 傑作 ちょっと捻った「萌えアニメ」 傑作アニメ アニメーション わかる人には、わかる…たぶん 詳しく見る |
夏と空と〜は、短編なので起承転結入れるのも大変だったと思う。
いや、むしろその短いエピソードを全然退屈させずに
最後まで魅入らせたのが、数々の演出だったかと。
あれで、映像の密度が多次元化されて、見てて全然飽きなかった。
同じ構成と演出でも、通常のアニメ方式ならもしかして途中で飽きてたかもしれない。
そして通常のアニメとは違う作り方を
いろいろ試行錯誤しながらやるのはコストがかかっただろう。
また、これが続かないというのも
同じ演出ネタが使いにくく、
高コストで多次元化をするより、
1画面でストーリーと演出を充実させる方が
なにかと無難ということもあるかもしれない。
逆にマルラボはそれが続くのか気になる。
元は4コマで構成された物にFlashの演出を加えてるわけだが、
マルラボライフ 4コマ
http://www.asahi-net.or.jp/~SB9E-FKSK/marulabo/comic01.html
夏と空〜のような、感動系で絵の密度を高めることが効果的な物語と比べ、
4コマ漫画に、読者は多次元的な密度を求めてるだろうか?
Flash版と、4コマ版の両方が存在した場合、
意外と4コマ版の方が選ばれるということはないだろうか?*1
その場合、マルラボFlashは存在意義を失ってしまう。
ただ、Flashも含め、多次元コマ構造というのは
これから充分、汎用的な発展ができると思う。
もちろん必要な時に画面密度を埋めるために。
ゲームの場合
DSがそもそも2画面とか、いろんなマルチウィンドウメニュー、
セガのファンタシースター千年忌の終わりなどいろいろあるのだけど、
SEGA AGES 2500シリーズ Vol.32 ファンタシースター コンプリートコレクション | |
おすすめ平均 セガが私の青春だった人には二つ足りないけど… これなんですよ 懐かしい いいんだけど… 昔のゲームではあるけれど 詳しく見る |
ここでは、シルバー事件をチョイスする。
PSで発売されたグラスホッパーマニュファクチャー開発の
アドベンチャーゲームだ。
アスキー・カジュアルコレクション シルバー事件 | |
おすすめ平均 必要なのは読解力と忍耐 ストーリーが鮮烈! とにかくお勧めです。 詳しく見る |
当時低予算では動きや画面密度にとぼしかった
コマンド式アドベンチャータイプのゲームを、
さまざまな多層演出で密度を埋めていった作品。*2
製作者須田剛一の独特な演出はその後の作品でさらに洗練されていくことになった。
花と太陽と雨と 終わらない楽園 | |
おすすめ平均 操作がし辛いです 全てが・・・ もやもや… 素晴らしいセンス 走る甲斐がある 詳しく見る |
killer7【CEROレーティング「Z」】 | |
おすすめ平均 ゲームという名を冠したアート 最高にクールなゲーム killer7 いろんな意味でヤバイです いちいちカッコイイw 詳しく見る |
BLOOD+ One Night Kiss | |
おすすめ平均 須田ワールド どうでもいいような部分が良! 10年前のゲーム?(笑) どーせやるならもっとデタラメに まさに須田テイスト!! 詳しく見る |
NO MORE HEROES(ノー・モア・ヒーローズ)(特典無し) | |
おすすめ平均 ストーリーはかなり笑えるような雰囲気 面白い!でも惜しい 隠れた名作ならぬ、スルーされ気味の名作 不満ももちろんあるものの… 脳トレ!? 詳しく見る |
そしてもうひとつ、
フランスのコミック、バンドデシネと呼ばれるそれを
そのままゲーム機に移植したタイトルがある。
メタルギア ソリッド バンドデシネ | |
おすすめ平均 デジタルマンガとしての最高傑作 買う前には・・・ う〜ん… プレステのメタルギアソリッドを買ったのでついでに買いました。 完全にファン向け。しかし・・・ 詳しく見る |
メタルギア ソリッド 2 バンドデシネ(DVD VIDEO) | |
おすすめ平均 バンドデシネ? 絵が好みではない 動く紙芝居 まあ満足かな… 価格が下がってます。 詳しく見る |
制作ツールにFlashを使い、データをコンバートして取り込んだそうだ。
メタルギアソリッド1,2それぞれまるごとストーリーを追ってる。
これも見せ方や演出が面白いのだが、
元々存在するコミック版があるので
このゲームのためだけに描き下ろしてたらさてコスト的に合うかどうか、、、
ゲームというかファンアイテムという感じか。
エロゲの場合
リトルウィッチ開発のゲーム?が
やはりコミックを意識した構成と演出になっている。
白詰草話 スタンダードエディション | |
おすすめ平均 絵の素晴らしさ。 芸術だなぁと感じる作品 大槍葦人という作家の凄さを知った作品。 詳しく見る |
Quartett! スタンダードエディション | |
おすすめ平均 とっても、やさしい作品です。是非やってみて! 詳しく見る |
ピリオド | |
おすすめ平均 Littlewitchの珠玉の一作 大満足です♪♪ 予想を裏切る面白さです。 おもしろい、やって後悔するやつなどいない。 リトルウィッチの学園モノ! 詳しく見る |
ロンド・リーフレット | |
おすすめ平均 大槍さんが好きならばかいですね! とても良い作品です。 ロンド・リーフレット リトルウィッチのゲームが好きなら絶対買い。 素敵でちょっと切ないストーリー 詳しく見る |
エロゲは、一枚絵のクオリティに労力を集中するので、
上に紹介したような作品のように動きまくるわけではない。
が、そこは逆にその絵を大事に扱う演出がほどこされてるので、
一見の価値有り。*3
エロゲの場合、いろんな実験昨が多いはずなんだけど
あまり詳しくないのでごめんなさい。
↓のマヴラヴももの凄く動くとか、とんでもない鬱ストーリーとか噂されてるのですが、、、、
マブラヴオルタネイティヴ DVD-ROM版 リニューアルパッケージ | |
おすすめ平均 軍事好きの人も大丈夫!(軍事好きに送るレビュー) エロゲーの皮をかぶった狼 まるで、映画! オルタ 涙が・・・ 詳しく見る |
さて。
個人で作るアニメの可能性が開けてきた時代に、
画面密度を埋める、多次元コマの使い方とFlashの可能性。
しかし、須田剛一氏を見てると
それすらひとつの演出力であって、
かならずしも、コマがさらなる省力化と演出を生み出すかどうかというのは結局本人のセンスによるのかなとか思い、労力のかかるほうの演出は根付かないだろうから、こういうデジタルコミックの道の先はないのかな。。。
そもそも究極の省力化が紙のコミックそのものなわけで、アニメとコミックの中間地点というものはいらない子なのかもしれない。
それとも須田剛一氏をリスペクトしつつ、
良い落としどころを探すべきか。。。
この考察はいつか、続く。。。
関連。
コマ割りといえば、ホッテントリでもこういう記事がありました。
漫画好きにオススメのエロ漫画 海野螢「少女の異常な愛情」のコマ割りがすげー! - karimikarimi
http://d.hatena.ne.jp/karimikarimi/20081029/1225209679