teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

「お金のいらない国」か「格差社会を突き進む財政破綻と貧困」か

ZOZOの前澤社長が言ってた
「お金のいらない国」という本を検索すると
いろいろ出てきたので紹介しておく。

お金のいらない国

お金のいらない国 (2)

お金のいらない国〈3〉病院の役割は?

お金のいらない国〈4〉学校は?教育は?


作者の小さな演劇が動画に上がってるので要旨はつかめるだろう。

www.youtube.com
続きの話も落語である。

お金のいらない国2(落語)2-1.mpg - YouTube

お金のいらない国2(落語)2-2.mpg - YouTube

お金のいらない国3(落語)3-1.mpg - YouTube

お金のいらない国3(落語)3-2.mpg - YouTube

お金のいらない国4(落語).mpg - YouTube

貨幣制度がなければ、
必要な時、必要なだけ食料や物やサービスにアクセスできる。
貧富の差が生まれないから犯罪率は激減。
戦争や、差別問題も発生しない。
稼ぎや教育の心配をしなくていいので結婚という制度も必要なくなる。
銀行も保険もいらなければ、確定申告もいらない。
お金にまつわるさまざまな書類作成や仕事
決済による根回しも必要なくなる。
人々の権利を守る法も簡素化される。
著作権も、特許もなくなり、全て自由に扱え発明した名誉だけ残る。
物は使い捨てず、共有して修理して使い続ける。
ライスワークをする必要がなくなるので、
人間の知恵と労力は困ってる人を助けたり、
環境保護、物や資源の有効利用、宇宙開発や、
社会発展のために全て使うことができる。
昨今はベーシックインカムなども話題になってるが
それを未来へ一気に進めた話とも言える。

ではお金という報酬がなければ、公園のトイレ掃除やコンビニの店員は誰がやるのか?

そもそもいつでも必要なだけの物は手に入るので、
セキュリティを考慮する必要は無く、
コンビニ店員は無人でもAIロボットでもレジがなくてもいい。
トイレ掃除も科学者やプログラマーが楽をするため
全力で自動掃除システムを開発するだろう。

それが開発されて普及するまでは「困っている」のだから、
みんなで助け合って掃除すればいい。
あるいは使った人がきちんとキレイにして帰る教育をしていく。

この世界ではプログラマー需要が大量に見込まれるため、
プログラム教育にも重点が置かれるだろう。

効率的な完全サービスという意味では都市部が一番速く最適化され、
田舎地方では整備が遅れるのも仕方ないが、
それこそ知恵と労力が浮いた都市部の人が
「困っている」田舎地方の人を時間許すだけ助けにけにいけばよい。
もう仕事や生活やお金に縛られることはないのだから。

ジャックフレスコ氏の「お金のいらない国」

長島氏に先駆けて「お金のいらない国」を描いたのが、
「現代のダビンチ」ことジャックフレスコ氏。
世界恐慌からつながる2度の大戦を見てきて、101歳で去年他界したらしい。

heapsmag.com

発案したのは、「ダビンチの再来」と名高い
発明家ジャック・フレスコ(Jacque Fresco)氏。
なんと現在101歳。
発明家であるほか、
建築家、未来派、工業設計技師としても広く知られる彼は、
いろんな意味で、奇跡の人である。

heapsmag.com

「戦争や飢餓、貧困、犯罪など“現代にはびこる悪”は、すべてお金とそれを追い求める人間が原因。つまり“貨幣”を撤廃すれば問題は解決する
資源への平等配分が人類の平等を生み出す(=資源ベース経済)
政治でなくテクノロジーやロボットが社会を動かす

モノは共有します。「図書館」を想像してみるとよいでしょう。
中心部にある“アクセスセンター”では楽器や自転車、カメラなど
ありとあらゆる物資を借りることができる。
もちろん医療ケアも無料。

コンセプトは
『許可・面倒な手続き・値札』なしですべて必要なモノを手に入れることができる
ですから。

競争でなく“協力”しあう教育になります。
特に力を入れるのは、科学知識、そして分析的に思考できる能力。
これを早期に養わせます。
反対に、貨幣経済を操作してきたような
株式や広告、法律、銀行、保険などの学問は不要です。

宗教についてですが、
この未来都市で聖職者はいったい何を説くというのでしょう?
「貧しき者に食糧を与えよ」
「この世で試練を乗り越えよ。そうしたら天国で報われる」
とは言えません。
貧しき者はいなくなり、この都市が“地上の楽園”となるのですから。

このヴィーナス・プロジェクトは氏の意志を引き継いで現在も進行中。
どこまで広がっていくか注目したい。

未来は楽園か消滅か

この話でさらに面白いのがジャックフレスコ氏の動画だ。

www.youtube.comParadise or Oblivion.
「楽園か忘却か」
意図としては「楽園か消滅か」の方がしっくりくる。

動画を見ると貨幣制度というのは長い人類史の中で、
資源や土地を奪い合うしかなかった
過渡期のための制度ではないかと思えてくる。

日本が豊臣秀吉に統一されるまで
戦国時代の戦争が不可避だったかのように、
世界の科学技術と文明が進化するまでは
貨幣制度による貧困や戦争や差別が不可避だったのではないかと。

このままだと生産性は跳ね上がり、雇用は伸びず、購買力は地に落ち、社会システムは止まる

動画で特に面白いのが2点。

(2004年のインタビュー)

このまま自動化は進み大多数の人は購買力を失う。
もうすぐ次の段階に入る。
雇用が伸びないのに生産性は跳ね上がり、
購買力は地に落ちる。
(社会の)システムは止まる。
我々はその地点へ急速に近づいている。

というのがまさに、
アベノミクスで株価が2万2千円を超え、
各社が創業以来最高利益を更新し続ける中、
実質的な平均賃金の低下で景気回復の実感がないことや、
夕張市、ギリシャなどの財政破綻に現れている。
ロボットやネットやAIで生産性は格段に上がったが、
格差も凄く広がった。

キツイ、キタナイ、キケン な仕事をやる動機

もうひとつが、こういったユートピア理論で必ず出てくる
キツイ、汚い、危険な仕事を
誰がお金という報酬無しでやるのかという問いに(一応)答えてる点。

つまらない単純な仕事は今でもどんどんロボットに置き換わってるが、
3K仕事の自動化こそ、解決すべき知的好奇心を満たす仕事になりえる。

3Kロボットができるまでは人がやらねばならないが、
社会共有財産をみんなで保守、整備しよう、
困った人を助けようという正義感はネットでかなり見かける。
で、実際に助けに行くかというと、ほとんどの人はお金や仕事に縛られる。

でも俺が衣食住や物やサービスが将来に渡って保証されているのなら、
自分のストックに縛られる必要はなく、
どこにでも助けにいけるし、
3Kでも自分のできるだけのことは行える。

お金にまつわるくだらない仕事や、
くだらない競争、くだらない会議から開放され、
会社ではなく自分の人生を生きる人が増えるほど、
余裕が生まれる人は多いだろう。

とはいえお金が必要ない世界では
3Kロボットの開発費も設備費も必要なく
ロボット工学プログラマーが自由に集まって設備使えるので、
ずっとスムーズに開発は進むと予想できる。

それにロボットがいくらでも自由に使えるなら、
プログラム開発が進むまでVRはめてみんな家から動かせばいい。
スコア付けてもいいわけだ。
問題解決のアイディアさえあるなら、ロボットでなくてもいいわけで。

共産主義の計画生産は、資本主義の競争社会に負けたのに競争がいらない?

これは計画生産ではない。
常にアップデートし、職人達は永遠に最適化し変化し続ける動機をもつ。
その中でいろんな議論が交わって、
いろんな実験が行われるため厳密には競争がないわけではない。

ただ、特許も、会社コストも、メンツも、利益も関係なく
一番最適な案をアップデートしつづけるのにお互い協力しあえる。
全員が協力しあうのに利益や金のための特許は必要ない。

子供みんなが芸能人やスポーツ選手めざしたらどうするのか?

子供みんながサッカー選手や野球選手目指して、
社会回らなくなったらどうするんだということも心配する必要はない。

年俸のあるなしにせよ
1部リーグで戦えて観客を楽しませるプレーができるのは
結局一握りに絞られる。

自尊心を高められるのはその人達だけ。
多くが脱落して、お金という強制力なくても、
人が足りず社会に必要とされる多様さへ分散していくだろう。

ベーシックインカムだとまだ貨幣制度に縛られるため、
ちょっと違うかもしれない。

個人も会社もストックしない社会

サプライチェーンに詳しい人は、
個人が「ストック」を気にしなくなって、
必要以上のものや金を貯める事がなくなり、
必要なときに、必要なものだけを共有する
生産性や効率の良さなら黒字になる
といえば理解しやすいだろうか。

将来を不安視して常にストックを気にして
在庫溜め続けなければいけない非流動性では赤字になる。

今の科学技術の潜在能力

現代の生産技術などで
100億人でも200億人でも賄えるだけの能力は充分にあるというのは、
富裕層と貧困層のアンバランスさが根拠。

下の3つの記事を見なくてもそれは想像つくと思う。
物やサービスが行き渡らず、内戦や政治腐敗がおこるのも
共有や協力といった概念がない所有の争い。
行き着くところはやはり貨幣制度だ。

www.huffingtonpost.jp

www.asahi.com

gendai.ismedia.jp

「お金のいらない国」はユートピア理想論

長島氏と、ジャックフレスコ氏の「お金のいらない国」は面白い。

しかし、感想としては100年200年先からきた未来人の提案で、
現状は実現の難しい理想論に思える。

というのも国も会社もやはり利益第一で動くため、
今のお金や地位を捨て去って
ドラスティックに社会を変えるわけにはいかない。

貿易の関係もあり、やるなら世界主要国同時にやる必要もある。
ベネズエラやジンバブエみたいに、富裕層への強権を発動したところで
ハイパーインフレになるのがオチだ。

「お金のいらない国」と「お金の必要な国の」ハイブリッドシステム

この100年先の未来への間を埋めるのが、
ZOZOの同一給料やそれに似た未来工業、
メガネ21などではないかと考える。

会社の内側は「お金のいらない国」で、
会社の外側は「お金が必要な国」のハイブリッドシステム。

これらの会社は
「物やサービスに誰でもアクセスできる権利」を
「お金と時間というリソースに誰でもアクセスできる権利」に変えて、
同じ給料や、働く時間の短縮、あるいは休みの多さとして社内で実現している。

こういうシステムの会社は、
無駄な派閥闘争や足の引っ張りあいがなくなり、
無駄な会議や社内手続きがなくなり、
無能な上司がなくなり、
職能の最適配置が自然と行われ、
そのぶん社外にとても強い競争力を持つ。

「お金のいらない国」のメリットがいくつかがそのまま手に入る。
もちろんそれで成功が保証されるわけではないが、
今の社会に合わせた現実的な回答だ。

普通の会社がこういった常識外れの会社に変わることは難しい。
やはり社内の既得権益が失われる抵抗勢力の方がずっと強く、
社内文化の変更負担も5年10年かかるほどでかい。
やるなら新規に起ち上げる会社でないといけない。

こういった変な会社がもっと大きくなったり、
起業家がそのメリットを真似て導入し始め、
国内で働く人の過半数を超えた時。
「これ、政治も役所も会社も全部統合した方がもっと効率いいのでは?」
「つまり国内全部をお金のいらない国にして、
海外向けにはお金の必要な国でよくね?」
となったら
「お金のいらない国同士は、どんどん提携してよくね?」
と、格差で行き詰まった未来が変わるかもしれない。

 

= 相田みつを美術館 Mitsuo Aida Museum =

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補足:その3社はホラクラシー型経営とは違うのか?

diamond.jp
いくつかホラクラシーの記事を見ると、
ホラクラシーといってもいろいろ幅があり、
基本的にはヒエラルキーをなくし、
フラットな組織体系で物事の決断に必要な
情報共有や決済の委譲を行い
人事配置の自動最適化、
ヒエラルキーの無駄を徹底的に省くというメリットは似てる。

未来工業のノルマやホウレンソウ無しで
自主性に任せた仕事もホラクラシーといえばそうだし、
かつてのGoogleが20%ルールで
フラットに自由なサービス作り出していたというのも
その20%がホラクラシーといえばそう。
カウンターストライクやSteamを運営するValveもそういう体制だ。

ただ給料が業績連動になるとか、
働く時間の短縮に反映されるとか、
会社の全体最適化をみんなが協力して目指したほうが得となる指標が
ホラクラシーの記事ではあまり見かけない。

「お金のいらない国」も仕事の動機が、
1億人が使う製品のちょっとした改善で世の中がもっと良くなる
新しいアイディアや、技術で世の中はさらに良くなる
という全体最適化の理念と、多様性を許容する力学がある。

もちろんホラクラシー型も会社が儲かるために動くのだろうけど、
マネジメントを統一する力学が無いところが
デメリットとしている記事もあり
多様性を許容できる度量や余裕が会社にあるか
それをホラクラシー型企業が認めるかはわからない。

ネットのスピードを改善すればそれだけ広告が儲かるGoogleや、
お客への柔軟な驚きのある対応ができるZapposや、
Steamの改善をしつづければ利益あがるValveも
そうブレないのかもしれないし、
無駄に思える多様性を受け止める度量もあるかもしれない。

でもGoogleが数々の自社サービスや買収したサービスを潰したり、
14年待ってもValveが超大作のHalfLife3を出さない、
出せないのは、絶対このフラットな体制のせいだと思う。
会社はとてもうまくいってて、それが悪いというわけではないが。

なのでホラクラシー型でうまくいく業種や会社もあるとは思うけど
個別最適化を信じきる文化のようにも見えて、
同一給料、業績連動とかで
「個人が全体最適化に動いたほうが得になる」
という力学が見えないあたり、保留かな。

一番大事な「全体最適化への力学」以外の理念はだいたい同じなので、世界も変わろうとしはじめてる良い兆候ではあると思う。