teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

Re:ゼロ 2期13話(38話) 感想

abema.tv録画してたものを遅れてみた。このブログでは珍しくアニメの感想。投稿場所を間違ったわけではない。いつか見るつもりの人は38話までのネタバレになると思うので回れ右。

1期の白鯨戦やペテルギウス戦のようなカタルシスもないまま、なんでこんなところで終わるのと思ったら、後半は1月再開らしい。原作者Tweetいわくコロナがなければ延期も前後半もなく一気にやる予定だったとか。

Re:ゼロ 知らない人向けに言うと「小説家になろう」サイトに数多ある異世界転生ファンタジーの一つでアニメも書籍も大ヒットしている。

www.youtube.comひきこもりニートが異世界のヒロインを助けるため奮闘する物語を描く。

特徴としては主人公スバルがもつ死に戻り能力。
自分が死んだらいつの間にかオートセーブ?されたポイントまで戻されてやり直し。
剣と魔法とモンスターの世界なのにスバルは魔法も使えず、腕っぷしも強くならず、やり直しで得た知識のみであがいていく。
俺つええみたいな展開はここまで特にない。
なぜ召喚されたか、なんでこういう能力をもつに至ったかは謎のまま。
死に戻りの能力を他人に打ち明けると死ぬというペナルティ付き。

死ぬときの痛みもあり、主人公も仲間も残酷に何度も殺される。

敵とのトラブル意外でも、この設定のおかげで何度も味方に疑われ追い詰められ、過去の経験だけでトラブルを解決しないといけないのに、ほとんどの登場人物は交渉にメリットを要求する。異世界転生ラノベというご都合主義の極地において、敵、味方、とりまく第3者全てに大人の対応を要求される。

少しだけ男気と甘っちょろい正義感があるだけの思春期ニートが放り出される世界としてはあまりに厳しい。どこいっても絶望と死と精神的弱さを突きつけられる。死の苦痛と、世界への無力感という現実のニートらしい精神的苦痛を繰り返しながら、細い解を見つけねばならない。主人公が人間として壊れていく姿を楽しめるドSアニメだ。

 昨今1クールで終わるアニメが多い中、4クール目が予定され、原作ストックや人気を考えると3期制作も期待できるほど。最初からかなり力の入ったアニメだろう。

 

今回の感想はスバルの成長についてだ。

 

最初の大きなターニングポイントは1期18話でどこいってもみんなが悲惨な結末を迎える八方塞がりの中、唯一慕ってくれるレムに逃げの提案とプロポーズをする場面。

f:id:teruyastar:20201007202318j:plain
プロポーズは拒否され、その反動でスバルは八つ当たりの長い独白をはじめる。一部web原作から抜き出すと

https://ncode.syosetu.com/n2267be/129/

「俺は……っ! 俺は、俺が大嫌いだよ!!」

 

「いつだって口先ばっかりで! なにができるわけでもねぇのに偉そうで! 自分じゃなにもしねぇくせに、文句つけるときだけは一人前だ! 何様のつもりだ!? よくもまぁ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなぁ! なあ!?」

 

「空っぽだ。俺の中身はすかすかだ。決まってるさ……ああ、当たり前だ。当たり前に決まってる! 俺がここにくるまで、こうしてお前たちに会うような事態になるまで、なにをしてきたかわかるか!?」

 

 「――なにも、してこなかった」

 

「なにもしてこなかった……なにひとつ、俺はやってこなかった! あれだけ時間があって! あれだけ自由があって! なんだってできたはずなのに、なんにもやってこなかった! その結果がこれだ! その結果が今の俺だ!」

 

「俺の無力も、無能も、全部が全部! 俺の……腐り切った性根が理由だ……ッ! なにもしてこなかったくせに、なにか成し遂げたいだなんて思い上がるにも限度があんだろうよ……怠けてきたツケが、俺の盛大な人生の浪費癖が、俺やお前を殺すんだ」

物語を超えて、思春期の誰にでも当てはまる人間の弱さをついている。ニートだけに当てはまらず、働いてる大人だって程度の差はあれ心当たりあるだろう。作者がパンツを脱いだ表現というか、みてるこっちが恥ずかしくなるぐらいの独白。

それでも「逃げないスバルを信じて」レムはスバルのいいところをスバル以上に長く語り、献身的に支え続けることを誓う。メインヒロインが入れ替わり、レム人気を決定づけた回でもあり、「おまえ、なんでこの流れでエミリアが好きとか言えるの?」と視聴者から総ツッコミを受けた回でもあるだろう。

 

この回の締めは

「ここから、ゼロから始めよう。

 ナツキ・スバルの物語を。

 ――ゼロから始める、異世界生活を。」

で、タイトル回収。

なんの問題も解決してないが、過去のトラウマに執着せず「自分を嫌いといわずに、人はいつからでも、今の自分に集中してはじめらる」メッセージ。

人間どうしても過去の自分に引きづられますからね。イメージも能力も。スバルはレムという補助輪付きですが人生そのものをやり直す決意が感じられる。

 

そして2期の38話。
7人の魔女が勢揃いした前半最終話。
2期のスタートでレムは眠り姫となり、スバルの一番大きな支えがない状態。

スバル「俺が…?俺が悲劇の主人公ぶってるってのか!?」f:id:teruyastar:20201007211932p:plain
憤怒ミネルヴァ
「そんなじゃない。ただ、自分が誰より傷つけばいいなんて結論は卑怯よ」
「アンタのその歪み方は、魔女よりよっぽど気持ち悪い」

 

ラスボスかと思われたサテラのセリフも並べます。f:id:teruyastar:20201007213059p:plainサテラ
「傷つかないで…苦しまないで…悲しい顏しないで…」
「違う。もっと貴方を…」
「愛して」
「傷つかないで…嘆かないで…」
「もっと…自分を大切にして」
「貴方を愛しています。だから貴方も、貴方を愛して…。守ってあげて」
「ぁぁ…どうして気づかないの…?貴方が救いたいと願う全ての中には、貴方も居るべきだって…。当たり前の事に…」

 

そしてスバルがエキドナにやっと言えた言葉f:id:teruyastar:20201007215255p:plain「死にたくない」

 

これを引き出せたのが本当に良かった。

かっこつけた男気と正義感で、自分さえ犠牲になってみんなが救われればそれでいいだろうという考えは、人間関係とか仕事において結構迷惑なんですよね。生きる死ぬじゃなくても、それじゃみんなと一緒にわかちあえない、なにかと孤立してしまい、一人で全部抱え込み、勝手に潰れて結局他の誰かが後始末しないといけず空気は悪くなる。

ニート、引きこもり、コミュ障に関わらず、社会人でも大なり小なりこういう傾向持ってる人は多くて、他人の頼り方をしらずブラック企業化を促進したりもします。

スバルにおいては頼ったレムがひどい目にあったから全部自分で抱えようと、オットーなども巻き込まないよう気を使うわけですが、人を頼るのが社会人としての第一歩です。責任を持って自分でやらなければいけない、とは両立できます。

スバルの気持ち悪いと言われる考え方は、自己卑下、自己否定で、そんなスバルに付き合ってる周りの人の魂の格を下げてしまう行為。日本では謙譲、自分をへりくだって相手を立てるのが美徳とされることもありますが、欧米では強く注意されます。

例えばスポーツ選手がベスト8で負けて、自分は駄目だったベストを出せなくてファンやチームに申し訳ないなんていったら、海外だとむしろファンやチームへ失礼にあたり注意を受けます。今回はベストを尽くした上の結果で、次またさらに上を狙うでいいんです。自分の魂を下げちゃいけない。

ナツキ・スバルに足りないのは「自己愛」と、いい意味での「無責任さ」。頑張るだけ頑張ったら後は運を天に任せるでいいんですよ。

自分(の過去)を大嫌いだというスバルが、自分を好きになるのはまだ難しいかもしれません。それを支えてくれたレムがいなくなり、今回は魔女達の支えがあって前に進みました。自分で自分のことが大好きでいられるという自己愛の余裕があるほど人は強く、優しくなれる。レムがいなくても自分の足で立っていられます。社会との関係性をつなぐ大事な要素は「自分が大好き」という自己愛から始まります。

 

こうみると、Re:ゼロ ってニートコミュ障の社会復帰物語なんですよね。

何も積み上げてこなかったダメ人間が、特別な能力もない自分嫌い人間が、何度も何度も厳しい現実に失敗を繰り返して、社会との関係性、そこから自分自身の自己実現を成す(かもしれない)ストーリー。

ひきこもりの社会復帰物語といえばこの回でエヴァンゲリオン思い出しました。
心に問題を抱えた引きこもりがちのシンジ。
エヴァに乗って実力を示すことができれば他に何もいらないアスカ。
他人との関わり方を何も知らない綾波。
3人(のひきこもり庵野監督)がエヴァを通じて少しづつ社会との関係性を紡いでいく物語。 

シンジはTV版最終話で、「僕は僕でしかない」「自分を好きになれるかもしれない」「ここにいていいんだ」(自分で自分を好きになっていいんだ)と、とても簡単で難しい自己愛の大切さに気づき、みんなから「おめでとう」と祝福されました。自己愛は他人の目ばかり気にした人生で一生を終わらせないための第一歩です。f:id:teruyastar:20201007230024p:plainなんだかここ、茶会のシーンとダブりますね

f:id:teruyastar:20201007230748p:plain

 

アスカも旧劇場版の覚醒シーンでもf:id:teruyastar:20201007232410p:plain「ママ、ママ、分かったわ。ATフィールドの意味!私を守ってくれてる!私を見てくれてる!ずっとずっと一緒だったのねママ!!」

と、どちらも「自分が大嫌い」という状況から抜け出し、自己愛のスタートとなってます。(心の問題に区切りついたから、速攻で鳥葬にされますが)

f:id:teruyastar:20201007232552p:plain(しかし旧エヴァの度重なる肉体的、精神的な追い詰め方は死に戻りよりひどくね?)

今の自分に集中して踏み出すってのは簡単なんですが、過去の自分を断ち切るのは難しいんですよね。それこそ他人の目が縛りになるので、誰も自分を知らない学校や国や異世界でやり直したいぐらいに。エヴァはここを複雑な内面描写ですっとんでますが、Re:ゼロのほうが設定が適切で段階を踏んでて丁寧だと思いました。

 

ただ新キャラとしていきなり7人の魔女の関係性とスバルの心理描写はアニメで語るには冗長なのか、時間がないのかわかりづらいところも多いです。

twitter.com

この記事書いてるときに気づいたのですが、原作者が放送時間に解説をTweetしてるので一緒に見るといいかもしれませんね。Tweetみるとわかりやすい。

アニメの先まで読めてしまいますが、原作書籍となろうWeb版もあろのでそっちで心理描写の補完をしても楽しめそうです。

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ということで38話はとても良かった。

サテラのセリフを再掲するけどf:id:teruyastar:20201007213059p:plainサテラ

「傷つかないで…苦しまないで…悲しい顏しないで…」
「違う。もっと貴方を…」
「愛して」
「傷つかないで…嘆かないで…」
「もっと…自分を大切にして」
「貴方を愛しています。だから貴方も、貴方を愛して…。守ってあげて」
「許します」
「私は貴方に救われました。だから私は、貴方が救われることを許します。貴方に救われて欲しいと…」
「そう…願っています」

 

これ、ソーシャル時代だからこそ大事なんですよ。
自分を一番傷つけるのは結局自分自身だから。

自分大好き人間はATフィールドしっかりしてるから、アンチの言葉なんか刺さらないけど他人の目を気にする人はATフィールドなしで敵と戦ってグサグサ傷つくし、そんな他人を攻撃、拒絶しないといけず、それでも自分を守れない。そういう自分が嫌で自己否定、自己卑下という悪循環におちいっていく。

根拠なく自分を好きでいて良くて、過去のマイナスな自分に執着せず、今という何度でもゼロからのスタートを好きでいれば。

一番自分を傷つけるのは自分というのは、人間はどこまでも自己完結してると言えます。ATフィールド内に他人は関係なく、そのうえでの社会性。もし過去にどうしても許せない人がいて思い出すたび何度も傷つくとしたら、それ本当は自分のことが許せないんですよ。

 

この後のRe:ゼロですが

茶会のすぐあとにロズワールがまた人間やめさせるような詰め方をしつつ、そうならないようオットーが割り込んでと、スバルが無事社会復帰できるのか、修羅の道を進まされるのか楽しみですね。

もしかしてどちらを選んでもスバルの「自己実現」は成り立ってしまうのかもしれませんが、まだスバルは完全に自分自身を好きだと言えなさそうで、どう成長していくかっ見守っていきたい。

あとロズワールとエキドナは哲学的にどこまで達してるんだろうか?
メインヒロインのエミリアがあまり活躍していなく、社会関係を築けてないという意味では、こちらも成長か闇落ちの可能性あって楽しめそうです。

  

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