teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

e-sportsと相反する格闘ゲームのバランス調整について

格闘ゲームの梅原大吾選手による 以下のゲームバランス調整の話が面白かったので、この話もっと考えてみたいと思います。

ウメハラが語るゲーム作りとバランス調整の深い話『最も重視すべきなのは、操作していて気持ちいい部分があること』『ストVシーズン2は強キャラを据え置くべきだった』 : チゲ速



■ストリートファイター2ダッシュ
格ゲーの歴史の中でおそらく一番流行ったゲーム。


■ストリートファイター2ダッシュターボ
スピードアップが特徴。
全体的に攻撃力が下がった。
強かったガイル、ダルシム、ベガ、バルログが弱体化された。
前回楽しく遊んでた人が、初めてちょっと楽しくないな・・・となった。


■スーパーストリートファイター2
対戦ゲームとしてまともなゲームになった。
しかしイマイチ流行らなかった。
その理由はスピードが下がってダッシュと同じになったこと。
全体的にマイルドになっていいゲームだった
が、強かった技が弱くなってみんな不満を抱えていた。餓狼伝説スペシャルやサムスピが流行っていて、色々な格ゲーが出ていた。スパ2が流行らなかったのは、ゲーム作りにおいてすごくいいヒントが隠されている。


■スーパーストリートファイター2X
スピードが選べるようになった。(早くなった)
スパコン(ゲージ)がカプコンゲーで初めて導入された。
豪鬼が使える事がゲーメストで発表されて、他のゲームをやっている人を一気に引き込む事件があった。ゲームバランスはないに等しかった。スパ2からかなり破綻した。最終作がスパ2までだったら、ストリートファイターシリーズが終わっていた(説)まである。


■ヴァンパイア
キャラ人気はあったが、対戦ゲームとしてはイマイチ流行らなかった。



■ヴァンパイアハンター
2作目で人気が大爆発した。
その当時の、本当にすごい人たちが作った。
クリエイターとしての能力が高すぎる。よく作った。
ヴァンパイアは単純に企画がすごかったが、ティテールの部分で練りきれていなかった。デミトリは弱くなったが強キャラのモリガンとオルバスが据え置き。隠れ強キャラのサスカッチがアップ調整、テクニカル強キャラのビシャモンもアップ調整。強キャラに合わせて全体がアップ調整。これは普通に考えたらクソゲー。高速移動砲台のパイロン追加。モリガンが勝てないくらい。追いつけない。フォボスもEXゲージで飛び道具を撃ってヒットしたら即死だが、それでも最強ではなった。最強はサスカッチかオルバス。サスカッチはコマ投げくらうと終わり、オルバスはガーキャンくらうと半分減る。ドノヴァンやレイレイなど弱くてもファンが多い面白いキャラがいた。リーチがあって攻撃力と体力が高いビクトルが最弱のキャラだった。


■ヴァンパイアセイヴァー
あまり流行らなかった。イマイチ。
理由は他の格ゲーがあったからというものあるが、ハンター勢が移行しなかった。こんなに前作のプレイヤーを移行出来なかったゲームは知らない。(移行しなかった人たちは)格ゲーそのものをやめてしまった。理由は、ハンターの時はイライラするところもあるが、自分が気持ちいいところがあった。ビシャモンなんて10秒くらいラッシュで固めていて、その最中相手はイライライライラしていた。パイロンもずっと逃げ回っているし、掴まったらしょうがないみたいな感じでみんな腹が立っているが、なんとなく自分に気持ちいい瞬間があるから納得していた。サスカッチなら1回触れば勝ちだが、1回も触れず負けても仕方ない等、みんなが納得するゲームだった。セイヴァーになってマイルド調整でまともになった。ハンターの時のような尖ったキャラがいなかった。スピードは上がっているが、ハンターからセイヴァーになって喜んだ人はいなかった。


■まとめ
ヴァンパイアハンターは滅茶苦茶で怪獣大戦争。セイヴァーではマイルド調整になった。スト2Xは滅茶苦茶だが、いまだにやっている人がいる。ストIII3rdもバグをなくした新基板があるが、みんな大体旧基板でやる。
結局みんな勝ったり負けたりとか、全体のバランスなんかたいして気にしていない。自分のキャラが面白いかどうか。ヴァンパイアハンターで言えば、サスカッチの永パやらせろやとか、フォボスだったらコンフュージョナーで即死させろやとか、パイロンだったらとにかく飛びまわって弾撃たせろやとかで、バランスなんてどうだっていい。相手が何を考えているかなんてどうだっていい。結局みんなが何を楽しんでいるかといえば、操作性。俺が使っていて気持ちいいかどうか。これは間違いない。調整というか、ゲーム作りはそこ。バランスの悪いゲームほど俺から言わせれば流行ってる。どんなクソゲーがこの世に出ても人が死ぬわけじゃない。作品作りは、まだないモノを作らないといけない。あれを直す、これを直すとか悪いところをなくすのは病院。何がいい物か分かってない人達にいいものを提供するのが作品作り。調整というのは、そこを大事にしたほうがいい。


■ストリートファイターVシーズン2
ガイルとザンギは、ぶっ壊れキャラ。
ヴァンパイアハンターの時の、なんでこれで俺が負けるんだよという気持ちにさせてくれる素晴らしいキャラ。強いと思うのは、バイソンとラシード。あとはダルシム、ララ、ユリアンも強くなった。ここまではOK。

しかし、ここまでするなら前いたキャラたちは据え置きにすべきだった。

自分が使うキャラが楽しければ、ガイルが最強だろうがザンギが最強だろうがどうでもいい。ガイルが最強らしいですよと言われても「まあいいじゃん俺らも糞キャラ使ってんだし」と言えるのが格ゲーの世界。今回調整されたリュウやナッシュ、ケン、春麗、ミカは据え置きで良かったし、据え置きにしたところでガイルに勝てない。ガイル、ザンギ、バイソン、ラシード、ダルシム、ララ、ユリアンを使っている人は楽しいが、前回強くて弱体化されたキャラを使っている人達は、確実に楽しくなくなっている。気持ちよくなくなっている。しかも全体のキャラ使用率も高かった。その人たちがハンターからセイヴァーになった時みたいに、もういいや・・・となってしまう可能性がある。

せっかく練習してきたことが全部無駄になってしまったと思ったら、遊びだから楽しくなくなる人が出てくるのは間違っている。強すぎるキャラがいて流行らなかったゲームは見た事がない。結局気持ちいいキャラなのか、気持ちいい瞬間があるか。結果として弱くなっているかもしれないが、強くなっているんじゃないかという期待は持たせたほうがいい。攻撃力が下がったりリーチが短くなったりしても、とんでもない新技が追加されて使い方によっては強そうみたいな。

みんながみんな楽しめる調整にしないと、信用に繋がる。
前回ナッシュ使っていた人が、1キャラじゃなくて色んなキャラをさわっておかないと・・・となる。バランスという点ではかなり無茶苦茶してきたなと思うが、概ね良いと思う。前回強かったキャラを据え置きにするとか、強すぎた部分を弱くして何か新しい要素を追加。微調整でなく、もっと個性的にしていれば、もう何も言う事がなかった。

www.twitch.tv
動画はこちら。

バランス調整に限った話ですがこの話はそのゲームが流行するかどうか大事なポイントだと思います。ただし、スト2ダッシュ、ハンター、セイヴァーはバランス調整の話以外から反論できそうなのでまずその点から。

1作目がお客の反応を見る長期ロケテストであって、格闘ゲームは2作目が本番


例えばストリートファイター1があって、ストリートファイター2が大ヒットしました。ストリートファイター2のバージョンアップでも、一番流行したと梅原大吾が実感したストリートファイター2ダッシュは「2作目の2作目」です。

ヴァンパイアハンター
ヴァンパイアも、大ヒットしたハンターが2作目。

GUILTY GEAR 復刻版ギルティ ギア X
ギルティギアも、初代PS版が1作目で、ヒットしたハイレゾ化アーケードデビューの「ギルティギアX」が2作目です。もちろんストリートファイターと同じく「ギルティギアX」を原体験として「ギルティギアXX」が全盛期と捉える人は2作目の2作目かもしれません。

ソウルエッジ PS one Booksナムコ公式ガイドブック ソウルキャリバー
世界中で大ヒットした「ソウルキャリバー」も「ソウルエッジ」の2作目。

バーチャファイター2 サタコレシリーズ
社会現象を起こしたバーチャファイターも2が最大のヒット作です。

真サムライスピリッツ・覇王丸地獄変【NEO-GEO】ネオジオ
真サムライスピリッツも2作目。ROMが値崩れするほど売れたらしいですが調べてみるとこれもバランス悪かったようですね。

TOBAL 2
伝説のTOBAL2も2作目です。*1

もちろんそうじゃない作品も多く、餓狼伝説SPECIALや、鉄拳タッグトーナメント、KOF98はそれぞれ3作、4作、5作目にあたり全て「オールスターお祭りゲーム」となって最大現に昇華してます。またヒットせず1作で終えた作品は数え切れないほどあるでしょうから1作目がどれだけオリジナルのコンセプトとしてしっかりしていたかどうかが大事です。そこを踏まえてたらバランスの良し悪しの他に、1作目を反省しプレイヤーの反応を見て長所をひたすら伸ばした2作目だからこそ「流行る対戦ゲーム」となる可能性が高い。

何がいい物か分かってない人達にいいものを提供するのが作品作り。

裏を返すと作り手側も何がいい物かわかってないはず。世の中にアウトプットして初めてその本質を理解し次に完成させるのでしょう。ハンターとスト2ダッシュの大ヒットはこの点差し引いて考える必要があります。

ではなぜ、3作目で同じ人気が維持できないのか?

2作目で大ヒットした後期で上手い人と下手な人に分かれていき、飽きてしまったりついて行けない人がたくさんいます。残ったプレイヤーのためにさらに新しいゲージをもうひとつ追加したり、100ぐらい技を増やしたり、高難度なブロッキングシステムを搭載すれば残ったプレイヤーは喜ぶのですが、ついていけない人はよりついていけなくなるだけ。 ヤムチャが参加してた天下一武道会あたりが対戦駆け引きとして一番面白くても、悟空みたいなわずかなサイヤ人プレイヤーについていけない地球人プレイヤーはヤムチャと一緒でおいてけぼりになり、あのころの天下一武道会は返ってきません。

かといって、原点に戻ろう、シンプルにして、ゲームスピードも落としても技術やスキルがオールリセットされるわけではないので地球人プレイヤーは帰ってきません。そのうえサイヤ人プレイヤーも付いてこなくなるのでさらに悪循環です。一度作ったシステムの進化からは逃げられません。ドラゴンボールGTなんて誰も望んでません。それだったらスト2に対してバーチャファイターのような全く新しいブランドと操作性をもって環境をリセットしたほうがいいですよね。

ただストIVみたいに、ストIIIで「もう格闘ゲーム作るのやめました」から10年間のブランクがあって見た目も3Dに見違えた復活なら完全新作みたいに捉えられ、プレイヤーのブランクも大きく、1からみんな再スタートみたいに初められるかもしれません。

第3作、ヴァンパイアセイヴァーはなぜそんなにも失敗したのか?

セイヴァーになってマイルド調整でまともになった。ハンターの時のような尖ったキャラがいなかった。こんなに前作のプレイヤーを移行出来なかったゲームは知らない。(移行しなかった人たちは)格ゲーそのものをやめてしまった。

セイヴァーそんなにダメだったんですね。。
興味があったのでちょっと調べてみました。

ゲームカタログ@Wiki- ヴァンパイアセイヴァー
https://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/3272.html

ウメハラがマイルド調整と言ってるように、ゲームバランスややりこみ度的なところは良く出来てるようです。この記事から特に気になる短所が2つあります。

■インパクトダメージゲージシステム

ラウンドを制しても、勝利した側の体力はそのまま持ち越されるシステム。(体力が全快しない)ラウンドの決着が「仕切りなおし」では無く「戦闘の節目」へと変化。

またダメージには白く表示される仮ダメージと赤く表示される本ダメージがあり、仮ダメージは攻撃を受けてない状態になると時間経過で回復していく。このシステムが攻防の駆け引きにもたらす影響は大きい。

本作では基本的に技ダメージが大きめで、うち仮ダメージの占める割合がかなり多い。回復させることができれば大した被害でなくなるが、逆に仮ダメージを溜めさせられたままラッシュをかけられると、あっという間に沈んでしまう。本作のアクの強い部分であり、同時に大きな魅力ともなる仕様。

(この仕様のため)対戦の展開が早過ぎるせいでクレジット消費が非常に早い。
「カプコンVS SNK2 とセイヴァーで同時に対戦が始まったのに、カプエス2で1人目の対戦が終わる頃にはセイヴァーは既に1クレが消えていた」などと揶揄されるほど。

なるほど、体力そのままでラウンドの節目が一瞬。これはプレイヤーから「お金を搾り取ってやろう」という風に見えてもおかしくないですね。

ヒットしたカプエス2や、KOFは3VS3で1プレイで3キャラ使えてとてもお得感がありました。体力の回復は限定的なので3倍遊べるというわけではないのですが、それでも1対戦の使用3キャラ最大5ラウンドはお得に見えるシステムですよね。しかしセイヴァーは1VS1なのに体力がラウンドで全快しない。しかも仮ダメージが大きいということは同じレベルで戦うならどこかで回復して白熱したバトルになるかもしれませんが初心者、中級者、上級者の格差は一方的に広がり秒殺されます。対戦で練習して強くなるにはかなりきつくお金がかかるシステム。家庭用ゲーム専用ならまだこういった先鋭化も有りかもしれませんが、、、

ゲームセンター側からすると、大ヒットしたハンターの続編かつ回転率の早い稼げるゲームになる可能性もあったでしょうが実際はお得感がなく人気が出ない機種となってしまったんでしょうか。そしてもうひとつ、

■ヴァンパイアセイヴァー
1997年5月28日稼働
キャラクターが前作から3人削除されている
(ドノヴァン、フォボス、パイロン)

■ヴァンパイアセイヴァー2・ハンター2
1997年9月にバージョンアップ的な続編として、前作のキャラクター3体を復活させ、システムなどにも調整を加えた『ヴァンパイアセイヴァー2』と『ヴァンパイアハンター2』がアーケードに2作同時登場。 ただし、『セイヴァー2』は既存のキャラクターが3体(サスカッチ、ガロン、オルバス)が使えなくなっている。

『ハンター2』は、「ハンター」と銘打ってはいるがその要素はBGMや勝利メッセージくらいしかなく、実質的に『セイヴァー2』の登場キャラクター違い版である。こちらの登場キャラクターは『ハンター1』に出ていたキャラクター全員となり、『セイヴァー1』の新キャラクター4体(ジェダ、バレッタ、リリス、キュービィ)が使えない。

身も蓋もないことを言ってしまえば、使用基板の容量不足で全キャラクター入れることが出来ないため、ほとんど同じ内容のゲームを分割して別々に出したというだけのものである。このため、『セイヴァー2』『ハンター2』両作で共通するキャラクターの性能は一部を除いてほぼ同じ。

たった4ヶ月でセイヴァー2が稼働?
しかもハンター2と2作品に分派??

まったく意味がわかりません。
「セイヴァーに人気が無いのは、旧3キャラを削ったせいだ」とでも思ったのでしょうか?
「だが容量的にCPS2基板には入らない、なら2作に分けて2つ売ってしまおう。キャラのためにデモも省略していい。これならプレイヤーは全キャラ使えるし、売上も2倍でWin-Winだ!」
と、営業側が思ったかどうかはわかりませんが、そうだとしたら基板と自社の営業の都合だけ考えてゲームセンター側のことは全く考えてません。ゲーセンが2つ仕入れても2倍の売上があがるわけではなく、プレイヤーもドノヴァンとサスカッチでは絶対に対戦ができない仕組みです。いえ、セイヴァー1ではできます。とすると3台稼働させるか、そんな余裕のないゲーセンでは1つのゲーム人口の3分の1以下しか拾うことができません。何も知らないプレイヤーだと「2が出たら1は古いからあえてプレイする必要のないゲーム」と認識されてもおかしくなく、新作で購入したセイヴァーがいきなり「前作」扱いになります。Win-Winどころか、営業、ゲーセン、プレイヤーともにLose-Lose-Loseです。

ただでさえ敬遠されがちな体力ゲージシステムに加え、このよくわからない2作品の追加投入がトドメを刺したのではないでしょうか?


謎なのは、新基板のCPS3でウォーザードが96年12月、つまりセイヴァーの半年前から稼働してるところです。
じゃあ、CPS2の4倍のROM(128MB)を扱えたCPS3でセイヴァーだせば最初から全キャラ出せたのでは?

CPシステムIII - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/CP%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0III

CPS-3はとりたてて成功したシステムとは言えず、このシステム用に全部で6つのゲームが制作されたに過ぎない。CPS-3には機械的・電気的な衝撃に弱いという弱点があり、オペレータ達は特にこれを敬遠した。また、セキュリティ・カートリッジ内の電池が切れるとゲームが動作しなくなるうえ、その交換費用を所有者側で負担しなければならなかった。更に高性能とはいえ2Dグラフィックのみにしか対応しておらず、当時はほとんどのゲームが3D対応ハードウェアを念頭に開発されていたという背景がある。他のシステム基板に比べて高価であり、またCPS-3用のプログラミングはかなり難しかったとも噂されている。

メインCPU: 日立 SH-2 (HD6417099)@ 20 MHz (MAX 25 MHz)
記憶装置:
SCSI CD-ROMドライブ
RAM (variable amount)
フラッシュROM: 8 x 16MB
サウンドチップ:16-チャンネル 8-bit サンプル プレイヤー , ステレオ
最大同時発色数: 32,768 色 (15-bit カラー, 555 RGB)
解像度: 384 x 224

1996年12月 ウォーザード
1997年2月 ストリートファイターIII
1997年10月 ストリートファイターIII 2nd Impact
1998年12月 ジョジョの奇妙な冒険
1999年5月 ストリートファイターIII 3rd Strike
1999年9月 ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産

推測になりますが、このWikiの条件でCPS3が採用されなかったとすれば

・すでに前作のハンターがあるのにCPS3用にプログラムやグラフィックを作り直す方がコスト高
・わざわざキャラ3体増加のためだけにCPS3に移植したくない
・CPS3がまだ量産されてなかった、基板は全てスト3に回したかった。
・CPS3はまだ高すぎるのでハンターの続編が価格何倍もするとゲーセンが買わない
・CPS3は電圧の許容幅が狭く壊れやすいのでゲーセンが買い渋る

あたりでしょうか。
CPS2はROM基板を交換するタイプですが、CPS3はCD-ROMからフラッシュメモリにインストールするシステムのようです。これは海賊版が出ないようセキュリティの面と、CDROM供給によるソフト入れ替えのランニングコスト低減(カプコン側コストかゲーセン側コストかその両方かわからないが)のためかと思われます。

CPS3が当時どれだけの値段かはわかりませんが、当時のフラッシュメモリはとても高かったはず。今は2000円で16GBのUSBフラッシュメモリが変えますが、当時だとPS1の128KBしかないフラッシュメモリーカードが2000円で売られてました。
メモリーカード プレイステーション用 PS
1000倍の容量となる128MBのメモリはPS換算で200万円です。CPS3のメモリだけで。。。独自のセキュリティや耐久性に優れてたのかもしれませんが、なんでHDDにインストールしなかったんでしょうか。まあ、PSの価格付けがちょっと高すぎることもあるので、その半額の100万か、時間がたてば50万以下まで下がるでしょうがそれでもまだ基板のメモリとしては高すぎますね。

ちなみにCPUの日立 SH-2というのはセガサターンのツインCPUと同じですね。で、セイヴァーの次の年 98年にはセガからドリームキャスト互換のNAOMI基板が出ます。

NAOMI - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/NAOMI


CPU : SH-4(200MHz/360MIPS)
浮動小数点演算能力 : 1.4GFLOPS
ジオメトリエンジン:VideoLogic Elan (100MHz / NAOMI 2のみ搭載)
RAM : 32MB(ドリームキャストは16MB)
VRAM :16MB(ドリームキャストは8MB)
NAOMI 2:32MB + モデルデータ 32MB
グラフィックスエンジン : Power VR2 (NAOMI 2は2個搭載)
ポリゴン描画能力 : 300万/秒
NAOMI 2:1,000万/秒
同時表示色数 : 1677万色同時表示(24bit)
サウンドRAM : 8MB(ドリームキャストは2MB)
サウンドエンジン : YAMAHA スーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサ 32bit RISC CPU (ARM7 AICA 45 MHz)内蔵
サウンド機能 : ADPCM 64ch
ソフト供給媒体 : ROM BD(最大172MB)/ GD-ROM(最大1GB)

CPUは 2世代更新した日立SH-4。
GD-ROMから直接起動できてこの世代だとそんなにロードも待ちもないのでフラッシュメモリにインストールする必要はないけども、従来通りROMボードも選択可能。実際カプコンはCPS3以降はNAOMIに切り替えて、MARVEL VS. CAPCOM2、燃えろジャスティス学園、ZERO3アッパー、CAPCOM VS. SNK1,2、パワーストーン1,2や連邦VSジオンなどを開発し、CPS3のストIIIシリーズと、ジョジョシリーズも後にドリキャス移植したのでこれもNAOMI開発なら互換性とれた。後付のたられば話ですがCPS3のコンセプトミスを早いところで認めて損切りし、セイヴァーも1年待って他社製基板を選択肢に加えていればシリーズ存続の芽があったかもしれません。この辺の苦労はWeb開発やスマホ開発でも同じなので当時のジレンマが目に浮かぶようで、ある意味ハードウェアの節目に巻き込まれた不運なタイトルとも言えるでしょう。きっと誰のせいでもないんですよ、ヴァンパイアは蘇るものですしね。

と、だいぶ脱線しましたが、セイヴァーに関しては「マイルド調整だから離れた」が一番の原因ではないことの確認でした。ここまでのまとめです。

格闘ゲームの「流行」は2作目で頂点を迎える

■2作目でついていける人とそうでない人が分かれてしまい3作目から落ちていく。
ただし1作目のオリジナルコンセプトがしっかりしてなければ1作目で終わる。

■3作目で全てのプレイヤーの学習をリセットすることなどはできないので、シリーズを続ける限り「原点に戻って当初の盛り上がりやプレイヤーが試行錯誤する熱い情熱を復活させたい」は事実上不可能。10年ぐらい置いて当時の上級者の腕が鈍ったり知識を忘れたり引退したり世代が変わるのなら、またみんな1からスタートということは可能かもしれない。

例外として
■これまでの全キャラ登場お祭り格闘ゲーム、餓狼伝説SPECIAL、KOF98、KOF2002、鉄拳TAG、マブカプ、カプエス、スマブラ*2などは、全部のバランスとるのがそもそも不可能なので、できるだけ調整はしつつキャラ物量のインフレを更新していくしか無い。しかし人気キャラをそこで全部使ってしまうし毎年お祭りを更新する必要もないので、また人気キャラが蓄積するまで4年おきぐらいじゃないと成り立たない。


そして本題のバランス調整です。
強キャラ弱体化は是か非か?

リュウ「俺より強いやつがナーフされたら会いに行く」

(ナーフ nerf = 弱体化)

前回強くて弱体化されたキャラを使っている人達は、確実に楽しくなくなっている。気持ちよくなくなっている。
しかも全体のキャラ使用率も高かった。
その人たちがハンターからセイヴァーになった時みたいに、もういいや・・・となってしまう可能性がある。
せっかく練習してきたことが全部無駄になってしまったと思ったら、遊びだから楽しくなくなる人が出てくるのは間違っている。

この練習量をソシャゲのガチャで考えるとどうでしょう。何万円も課金してガチャ回してやっと手に入れたスーパーレアカードが運営の都合で「それ強すぎるから弱体化しました」としたら炎上間違い無しです。人によっては練習時間こそお金に変えられないと思う人もいるでしょう。

https://www.twitch.tv/daigothebeastv/v/111479518
動画 01:07:40頃

FUUDO
前回(シーズン1)のミカのように、(ミカとは)対戦したくないという人もいるじゃないですか。(敵)キャラが強すぎて人が抜けていくというのはあると思います?

ウメハラ
強すぎるキャラがいて流行らなかったゲームは見た事がない。
結局勝ち負けはそんなに気にしてない。
気持ちいいキャラなのか、気持ちいい瞬間があるか。

もっというと結果として弱くなっているかもしれないが、強くなっているんじゃないかという期待は持たせたほうがいい。攻撃力が下がったりリーチが短くなったりしても、とんでもない新技が追加されて使い方によっては強そうみたいな

確かに現役でプレイして負けたから辞める人は少ないかもしれません。新規で入ってくる人には辛いかなと思ったのですが、それは1人用のモードを充実することで対戦とは別のベクトルで解決する問題ですね。

ではなぜ格闘ゲームはハンターのような強キャラに合わせた全体アップ調整がされてこなかったのか?

むしろこちらが気になります。
理由をいくつか推測すると、

・その他20キャラをアップ調整するより、強キャラ3体を弱体化させるほうがバランスとりやすい。
・シリーズ新作を見直すとき、バランス基準となるキャラを強キャラじゃなく一番勝率バランスの取れたキャラに合わせて再調整している。
(もしハンターが人気ダントツの強キャラモリガンを基準に再調整すれば全体のアップ調整につながる。もしかすると開発もモリガンが好きでモリガンというキャラがハンターの調整を生み出したのかもしれない)
・アップ調整を繰り返せばそれまで苦労して作ったいろんなキャラのスキルや小技が無意味なものになったり、戦略が一辺倒になったりキャラコンセプトが崩壊しかねない
・「ミカ強すぎ」「カプコン無能」などユーザーの声が大きい
・e-sportsや、格闘ゲーム大会でもっといろんなキャラを使って欲しい
・データで不自然なぐらいキャラの勝率が偏ってるのを平均化したい
・アップ調整だけでバランスを取るという発想がそもそもなかった

思いつくのはこれぐらいでしょうか。
他にも理由があれば知りたいです。
とくに決定的な理由はないとしたら、アップ調整のみの格闘ゲームが可能かもしれませんね。

バランスの悪いゲームほど俺から言わせれば流行ってる

ウメハラのこの言葉を体現した格闘?ゲームがファミコンにあります。

ダウンタウン熱血行進曲それゆけ大運動会
■ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会

このタイトル。友達と遊ぶと必ず盛り上がりました。
正確には運動会4競技の最終種目がリングアウトありの4人対戦アクションになってます。ファミコンで4人同時対戦というだけでも画期的なんですが選べる4チームの強弱が極端になってるのも画期的で

「れいほう高校」>「れんごう」>「はなぞの高校」>「ねっけつ高校」

の順序でれいほうチームがが壊れキャラで圧倒的に強く、主人公であるねっけつチームは最弱というステータス設定です。それなのに同じチームは選べないというどう考えても不平等でアンバランスな設定でした。

熱血行進曲のバランス設定の利点はいくつもありますが。
「れいほうに負けても仕方ない」ので負けても自分のセンスや反射神経や才能を「自己否定」をしなくていい。
4人集まってみんなが同じ腕前のわけがないので、強いお兄ちゃんがねっけつ、弱い弟がれいほうと自然とバランスが取れる。シリーズではねっけつが主人公、はなぞのが相棒、れんごうが中ボス、れいほうがラスボス的扱いなので弱い主人公が、強いボスに立ち向かうという構図になり、それが達成できたときも楽しい。ねっけつでも本当に強いやつは、他の3人がかりで倒しにいくのが楽しい。

【追記あり】「平等」と「公正」の大きな違いが1秒で納得できる画像 | BUZZAP!(バザップ!)
http://buzzap.jp/news/20141111-equity-vs-equality/

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人間の身長をプレイヤースキル、ハコの段差をれいほう、ねっけつと置き換えると、もし熱血行進曲が、左の絵のようにどのチームもバランスが取れた平等な設計であれば、友達みんなが夢中で楽しめなかったでしょう。実際にスト2だと友達同士でも遊べる人と遊べない人の格差がひどく、強い人と弱い人では左の絵のようになってある程度腕前が近くないと楽しめないゲームでした。しかし熱血行進曲は右の絵のようなバランスになっていてプレイヤーの格差があってもみんなが楽しめました。左の平等なゲームではなく、プレイヤー側が調整する右の公正なゲームだったのです。

家庭用スト2も対戦前にハンディキャップ付けれるよね?

いえ、みんなで選択して「勝っても負けても不平等なキャラのせい」という形で勝負するのと、「おまえは弱いからハンディキャップつける」は全然「納得感」が違います。それだと勝ったらハンディキャップ1つ下げて、負けたらハンディキャップ1つ上げてハンディキャップを調整するだけのゲームになり、勝っても嬉しくないし、負けても悔しくなく、全力で対戦をしてる気分になれません。

しかし みんなが遊べる熱血行進曲は e-sportsタイトルになりえない

れいほう選んだ人が勝つに決まってるからです。
最初にじゃんけんでキャラ選択権があるのなら、じゃんけんで勝ったほうがe-sportsの勝者です。

これはウメハラの動画24:30頃にも
初代スト2は同キャラ対戦ができなかった。
当時ガイルが最強キャラで全国大会ではじゃんけんで勝ったほうがガイルを使って優勝した。と笑い話にしてるので、これはもうじゃんけん大会ですねw

腕の近い上級者同士で戦ってもごくまれに100回に1回ぐらい、ねっけつが勝つかもしれません。それは大いに盛り上がるでしょう。しかし100回大会を開いて1回だけ盛り上がるe-sportsに視聴者は付きません。視聴率が取れるのはその1回のみでしょう。


これはバーチャ2で有力プレイヤー達がだれも大門ラウの「立ち斜上P」に勝てないという動画。みんながみんな「立ち斜上P」をマスターしたら大会にならないですよね。勝てば盛り上がりますが見どころがそこしかないという大会もどうかと。

しかし みんなが遊ばない「流行してない」ゲームも e-sportsタイトルになりえない


ギルティギアをやったことない人が、ギルティギアの対戦を見ても何やってるのか、何が凄いのかもわからないですよね。スト2シリーズをやったことある人は多いでしょうが、そもそも格闘ゲームをやったことない人にはやはり何が凄いのかわからない。

ウメハラのこの伝説の逆転劇を見ても、ストIIIをやってないと
「ブロッキングがいかに難しいか」
「ブロッキングで超必殺技を全部防ぐのがいかに難しいか」
「それを大会決勝戦の体力1で決める胆力がどれだけ凄いか」
「ブロッキングの途中なぜジャンプを挟む必要があるのか*3
といったことがわからないので、e-sportsみてもよくわからないということになります。

もちろん解説はあるのですが、ゲームスピードの展開が速く初心者向けの解説はほぼ不可能です。e-sports を観戦するには そのe-sportsをプレイして知っている必要があります。

リアルな野球やサッカーでも、男子はどこかで一度経験してルールを把握してるし。女子も応援の経験があったりルールやチームやプレイヤーを把握しているから応援できるのと同じで e-sports はそのタイトルが流行している必要があります。

なので格闘ゲームは売上的にもe-sprots普及的にも、みんなに遊んでもらう公平性のためにバランスを崩し尖った面白いキャラを増やさないといけないけど、e-sportsとしての平等性や継続性のためには単なる一時期の流行で終わらせない、シリーズ維持のために無茶な先鋭化や強キャラインフレをなくしバランスをきっちり調整して戦略が一辺倒にならない深みを用意しないといけない。 ここに大きな矛盾がある。

今ほどネットが発達してゲーム配信が盛り上がってる時代は過去になかったのに、各種格闘ゲームは以前ほど盛り上がらず、格闘ゲームを引っ張るはずのストVは前作より売上を落とし、闘劇は終了し、全盛期とは程遠い位置にいます。Twitchでは、リーグ・オブ・レジェンドを筆頭にカウンターストライクGO、HEARTHSTONE、Dota2、OverWatchあたりが上位陣に並び、ストVはベスト10にも食い込めない状況。これは1VS1の格闘ゲームがすぐに研究解析され、プロの戦法が一瞬で情報伝達されるようになった今だからこそ、尖った壊れキャラの運用が難しいということもあるでしょう。

この矛盾を解決する方法はないか?

例外に上げた、お祭りゲームは何作目とか関係なくヒットしやすいんですよね。
バーチャファイター3はコケた印象がありますが、バーチャファイター3tbという3VS3チームバトルタイトルはやはりプレイヤーのお得感からかロングランヒットしたそうです。鉄拳タッグトーナメントもかなりロングランヒットしました。

なのでお祭りゲームと、調整されたナンバリングタイトルがうまく融合できたらいいのではないかと。
ガチの1VS1も、3VS3もできるゲーム。
ぶっちゃけ「CAPCOM VS SNK2」のレシオシステムの採用です。

CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001
カプエス2はカプコン2D格闘ゲーム末期のタイトルで、もうカプコンは格闘ゲームを作らないという噂が流れてきたころの最後のお祭りゲーです。4つのレシオをキャラにふり分けて4つ全部1キャラに振り分けたら1レシオより攻撃も体力も4倍強いキャラ1人で3人と戦うことができるゲーム。

このコスト管理をユーザーに委ねることができたら、かなり選択の遊びができるんですよね。自分の本命キャラを2レシオにして、あとの2キャラを練習や遊びで使うとか、ラウンドごとにある程度体力回復するので3人使うほうが強いのですが自信がある人は本命キャラを4レシオで運用するとか、逆に初心者が4レシオのキャラを使って熟練者の遊びキャラを1-2体倒すこともできたゲームなので遊びの幅がとにかく広かったです。

このレシオシステムであればガチで戦いたいランクマッチもできて、実力差がある友達同士やランク同士の対戦でも最初の1-2戦は本気で互角の対戦ができたりする遊びも可能になります。実力差があっても気持ちい瞬間が作れるゲームです。これは「勝ち負けはそんなに気にしてない、それ以上に気持ちのいい瞬間があるかどうか」というウメハラの条件にもあいます。カプエス2はオンラインのバランス調整もない時代にほんと長く楽しまれたのでカプコンは最後に大正解のシステムを作ってたのに、市場の縮小とともにここで格闘ゲームチームを解散してしまったのではないかと思うのです。

もしアップ調整のみの格闘ゲームができるならそれも見てみたいですね。

*1:これは名作でも大ヒットではないか?

*2:KOF98や2002はお祭りゲームの中のお祭りゲームという扱いですが。

*3:ジャンプキャンセルから超必殺技を入れるため