teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

自社にシェアNo1イメージセンサーを持つ Xperia が、なぜ2年も他社に遅れをとるのだろう?

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グループ全体としては上方修正の部門も多く、業績好調といったところです。気になるのはモバイル・コミュニケーション部門の不振。前期に比べて108億円の赤字に転落しており、苦しさが目立つ格好です。

カメライメージセンサーの最大手であり、スマホやデジカメで他社(iPhone含む)へ多数供給しながら、自分たちのスマホは売れない。

プレミアムAndroidという市場がそもそも狭いのに、そこへ2年遅れたフラグシップというのは確かに致命的。

実はスマートフォンの要素技術に関して、ここまでしっかりと説明してくれるメーカーは意外なまでに多くありません。

一部中国系のメーカーなどは、発表会や説明会でカメラについて質問をしても「デュアルだから」や「高画素だから」で終わらせることも多く、詳しい回答が返ってくるケースはほとんどありません。

このように現在のXperia開発陣は、非常に技術に対して細かく真面目です。しかし筆者には、そのあたりこそが、現在のXperia低迷につながっているのではとも感じます。

 
予断で書くけど、ハイエンドなイメージセンサーや技術を活かすには、それに合わせたOSやソフトやバッテリーが必要なわけで、それがソニー内で同じスピードで揃ってこないのではと思う。

ハード、OS、ソフトも全部自分たちで作るiPhoneと違って、そのへんがバラバラなAndroidだと、Xiaomiや、Huaweiのスペック競争に負ける。Samsungなんかは、自らチップやモバイルバッテリー作ってるだけにもう少し攻めれる。シェアも利益もあるから投資効率も違うし。

ある意味ソニーが遅れを取ってるのは4k映像普通に撮れるiPhoneに対してで、Androidで発熱せず安定して4K撮るにはApple並の相当なバランス調整が必要なのではないか? Xiaomi や Huawei がピーク値をいくら宣伝するのに対して、Androidで実用的な解像度のセンサーを実直に、部品技術に合わせてきちんと調整して出てくるのがソニー。

だから、本当の部品的価値をきっちり調整したことを宣伝する。
部品技術が売りなだけに、部品ファーストな発想。

それでなぜ自社から最新センサーを供給してるHuaweiより、型遅れなセンサー使うことになるかというと、プロジェクトスピードの違い。日本式な会議や調整で開発が遅れてると考えるのが妥当か。

普通なら自社センサーを自分のスマホに乗せてしばらくした後、相手に供給するという手を取るものだが、2年というスピードの遅さで市場に流しては、好調なイメージセンサー部門の利益が全て吹っ飛ぶ。そこまで足踏みしてはイメージセンサーさえ他社に追い抜かれる。

 
ハード部品としてきっちり意味あるところまで作り上げるのを待ったり、日本式のスピードの遅さが合わさって利益が出ない。

そういった問題点がわかってても、中国やアメリカに習って素早い決定と責任と、開発サプライチェーンを構築しようとしても、日本の責任取らない空気読み社内文化を変えるのは難しいだろう。

本来なら、中国やアメリカのスピードで、フラグシップとしてのiPhoneX と、利益を出すための iPhone SE みたいに開発が住み分けられたらちょうどいいと思う。SamsungやHuaweiのように、バランスが悪かろうがとにかく最新技術を盛り込むフラグシップを作り、2年遅れのXperia をバランスの良い Second Editionとして販売する。もちろん世界で売らなければ元取れないのだが。

とすると、全体会議で合議制で日本式空気読み社内文化が変えられないのであれば、スマホという統合製品を作るのは撤退し「センサーやチップの部品メーカー」に特化すればいい。

日本式の社内文化で一番うまくいくのは「小さなものを完璧に作る」だ。少人数の優秀な開発部署であれば「スピードを遅くする空気読み」が発生しづらい。最新のボーイングに日本のパーツが多く使われてるように「部品」は本当に日本が強い。

しかし、全ての部品の調整が必要な「統合製品」を作るのは日本式だと遅すぎる。これはゲーム開発なんかもそうでファミコンソフトみたいな小さな部署単位で作れるゲームは世界を席巻できたが、100人200人がハリウッド体制みたいに大作ゲームを作る時代になると、完全に置いていかれた。

もちろんすべての日本の会社や、ゲーム会社が遅れを取ってるわけではないが、一般的な日本式大企業や縦割部署で責任回避の調整に時間取られすぎる会社では、中国やアメリカが進出してきた市場での「統合製品」を諦め、「小さな部品、研究」に特化したほうが無難だろう。

一応これは記事を読んだだけの予断や妄想。
実態は違うかもしれないが、こういうストーリーの方がXperiaのおかしな低迷としてはしっくり来るように思った。

蛇足:日本は「統合製品」を素早く作れないのか?

トヨタの仕組みは普通の日本の会社らしくなく「車という統合製品を最速で作る」という開発のサプライチェーンに長けている。むしろトヨタを本気でお手本にしてるのが日本ではなく、アメリカや中国だったりする。

と、書くと
「またトヨタ礼賛記事か。トヨタ生産方式は知ってるし、サプライチェーンはうちでもちゃんとやってる。もうトヨタから学ぶことなんかないよ。」という反応になるのだけど、サプライチェーンはただ適用してそれなりに効果ありましたで終わる話ではなく、計画、意思決定、社内文化、外部の関係会社と、ミクロにもマクロにも、どこまでも追求し続けるものであって1回上手く行ったらそれを維持すればいいわけではない。

その1回で立ち止まるのが日本企業らしさ。
「お客が欲しいと思った瞬間に、0秒で提供する。」
「お客が欲しいと思う前に、欲しくなるものを持って玄関先で待機している」

という限界に到達するまで時間短縮をどこまでも追求し続けてるのが、トヨタや、Googleや、Amazonや、Apple。

この意味でトヨタは日本の大企業よりも、GoogleやAmazonやAppleに近い。
トヨタの関連子会社は、トヨタが欲しいタイミングを狙って本当に道路にずらっと待機したりするしね。

とはいえ、元々「自働化」という概念があったトヨタでさえ後の副社長となる大野耐一がこの文化を浸透させるために20年以上費やしたわけで、中国やアメリカのスピードに負けない統合製品を作るよう、会社の文化を変えるのは無理だろう。やるならプレステ作った 「SCE」のような全く文化の違う子会社を新しく作る感じか。

NTTが「Docomo」という完全子会社を産んだり、イトーヨーカドーが「セブンイレブン」を産んだりするように、親の性格を変えるよりは、まっさらな子供に新しい教育をするほうが手っ取り早いかもしれない。日本の大企業が変わるとしたら、子供に飲み込まれるように経営するのも悪くないだろう。この3つの子会社も親に反発できる異端児がいたからこそではあるが。