teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

才能とは、夢を見続ける力のことですよ

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タイトルは以下の相談を受けた鴻上さんがかけた言葉。

 鴻上さん、こんにちは。私は役者の道を諦めて他の道に進むべきか悩んでいる30歳です。

 今まで、沢山レッスンや芝居のお勉強へ投資をしてきました。時間も使ってきました。

 名の知れている事務所や劇団に入れても、オーディションでは中間審査などで弾かれたり、履歴書に堂々と書ける経歴は殆どありません。

 経験を積むためにニューヨークでミュージカルの勉強もしてきました。それでも大きな実績を作れませんでした。

自分がこれまで受けた膨大なレッスンから受け取ったものや自分の才能を信じて今までやってきました。

 でも30歳で大した実績もなく、特別美人でもない私はもう、堅気としてもスタートが遅すぎるでしょう。(先日受けた就職面接で「どこでも相手にされなかった貴女がどこにいってもやっていけるわけがない」と言われました)

「今やめると今までの努力や才能がもったいない」と言う人もいれば、「夢見てる時間がもったいないからちゃんと仕事した方がいい」と言ってくれる人、どちらもいます。

 鴻上さん、あなたなら私にどんな言葉をかけてくださるのか知りたいです。宜しくお願い致します。

 
これ「プログラマーになりたいけどどうしたらいいでしょうか?」という質問に似てる。

プログラマーの場合答えは決まってて「あなたはプログラムで何を作りたいのか?」が先にあって、プログラムはそのための手段のひとつにすぎず、「プログラマーになりたい」という手段が目的になっては続かない。

プログラマーになるのが目標だと、javascriptもPHPもCもLISPもCPUからサーバー、今はAWSまでいろんなことを勉強し投資し「ハッカーと画家」も「リーダブルコード」も「デザインパターン」も「React」も読んで学んだほうがいいという周りのアドバイスを受けても全てが中途半端になるだろう。

プログラム言語それぞれで必要とされる用途や手段が違うので「何を作りたいか?」が先にくる。

役者なら「役者になりたい」というふわっとした目標ではなく「どの作品のなんの役をやりたいか?」が一番最初にあるべきだ。これはよくハリウッドの役者が「この作品こそ私が一番の配役で、私が演じるべき使命だと感じた。」というインタビューがあるけど、まさにその傾向の役に向けて普段から演技やキャラクター作りに集中し、レッスンも特定の役に沿ったもので、その役として目立つためのラブコールやSNS活動になるはず。

作品や監督や役者にはそれぞれカラーがあるので、昔の松田優作と村川透監督や、ジェームズキャメロンとシュワルツネッガーコンビ、今のティム・バートンとジョニー・デップのように、主役でなくてもその監督作品では外せないお気に入り役者の立場を作れると強い。それぞれ色の違う作品作りの姿勢に意気投合できるかをいろんな関係者や仕事からつてを探る。

別に有名監督でなくても昔の北村龍平監督や、カメラを止めるなの上田慎一郎監督など、予算のないインディーズで一緒に作品を作り上げるという手もある。インディーズはどこも役者に予算出せないがためどの監督こそが求めてる作品を撮れる人か役者側から見極める必要もある。


プログラマーの道はもう一つあり「受けた仕事を仕様のとおり完璧にこなすこと」つまり自分で作りたいものがあるわけではなく「誰かが作りたいと思うことを実現する」ためにプロ職人として参加すること。日本だとプログラマーの立場としてこちらのほうが圧倒的に多いだろう。こちらもその誰かが何を作りたいかで学ぶ事が変わってくる。

日本の役者だと、普通の日本人を演じてもボソボソ喋ったりリアクションが薄かったり、日本の日常会話が絵にならず舞台劇のようなオーバーリアクションが求められる。アメリカ人の表現が大げさでリアクションがよく、陽気なニューヨークとも違う。しかし北野映画なんかではまさにそんなボソボソ喋って派手でもなく分かりづらい日本人がそのまま出てきたりして求められるものが違う。

TVドラマだとお笑い芸人やジャニーズなどが意外と演技で花開くこともあるが、最初に求められるのは演技力でもなくキャラクターや視聴率だったりする。何よりも知名度が先ならば有名な俳優になるのではなく、自分の趣味を活かしたYoutuber活動で有名になったうえで俳優を両立させるのも戦略の一つ。

「自分のやりたい作品と役」に目標を絞るのでも「誰かがどうしても作りたい作品」に目標を絞るのでも、求められるものに合わせて学ぶ必要があり、「プログラマーだったら何でもできるよね」「役者だったらどんな役もこなせるよね」というのはよっぽど熟練のプロであって新人があれこれ迷っていろんな言語や訓練に手を出すものではないだろう。

(先日受けた就職面接で「どこでも相手にされなかった貴女がどこにいってもやっていけるわけがない」と言われました)

「今やめると今までの努力や才能がもったいない」と言う人もいれば、「夢見てる時間がもったいないからちゃんと仕事した方がいい」と言ってくれる人、どちらもいます。

 鴻上さん、あなたなら私にどんな言葉をかけてくださるのか知りたいです。

 
アドバイスする人は自分の立場と信念でみんな違うことを言うのは当然。尊敬する周りの人が何を言ってるかという基準で動くのではなく、自分が現在の役者という市場のどのポジションを狙うかで戦略を決めたい。先輩や先生や友人に言われたことを基準に真面目にトレーニングやっても「自分がなんの役をやりたいか?」「あの作品には何が求められるか?」に極力絞っていかなければ効果は薄い。

今Javascriptを使う必要があるからJavascriptを学ぶのはいいが、いつか使うかもしれないから学んでおこうでは効果は薄い。ニューヨークでミュージカルを学ぶならミュージカルの経験と訓練が絶対必要だと思われる作品を狙って動いてる必要がある。


そう考えると「夢を見続ける力」というのはプログラマーになりたい、役者になりたい、というやみくもな努力ではなく「こんなアプリケーションあったらいいのに」「このアプリがもっとこうだったらいいのに」「ここにもっとこういう役者がいたらいいのに」「私だったらもっとこの役をよりよく演じて数字とれるのに」という、より狭い目的で自分なりの市場や立ち位置の狙い所を具体化していくことではないだろうか。