teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

老人が居座り続けてる日本に足りないのは、偉い人の新陳代謝システム

news.yahoo.co.jp
システムLSIは、工場に投資するのではなく、人とソフトウエアに投資する製品であることに経営者は気が付いていなかった。

台湾のTSMCや韓国のサムスンは、製造装置を納入すると即金で価格の8割を支払ってくれ、残りの2割は検収後に払ってくれている。日本も世界のルールでやってほしい。


人とソフトウェアを軽んじるというのは戦前からずっと繰り返してきた日本の悪習。
人は育ててきたかもしれないが、才能を「自分より」重用する事に関して軽んじてきた。才能より身分が重要ゆえ社内での派閥争いになる。BtoBは殿様商売であり、BtoCはお客様が神様。技術者、ソフトウェア、その才能が対等以上に評価されない商習慣だ。

ソフトウェアに関しては才能あるエンジニアが決定権をもつ必要があるものの日本では難しい。みずほ銀行のようにエンジニアでない3派閥の争いが決定権をもち仕様を決める。当然設計は派閥争いを含んだ高難度な実装になる。

悪いのはどこまでもプレイングマネージャーとして上が決定権を持ちすぎる事。分かりもしないソフトウェアを評価できない偉い人が決定権を持つこと。それなのに事なかれ主義で全員で決めて責任分散しようと決定が遅れ、過剰な責任回避のために仕様がさらに複雑になること。

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓碑にはこうあるそうだ。

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己より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る

自分よりずっと鉄の事をよく知る人材を重宝した。

記事で出てくるサムスンは、どうにもならない3流メーカーだったがいまや日本のメーカーがかなわない利益3兆円超える超大企業。妻と子供以外全てを変えると意気込んだ大改革で、世界の頭脳を集める事に投資をし続け、その頭脳で2000年代に「液晶」「半導体」「携帯」への投資を集中し大発展した。もちろん日本の技術者も取り込まれている。

アメリカの会社は「マネージャー」と「プレイヤー」はきっちり別れていて、細かいやり方の指示はせず「会社に持ち帰らず」決定権をその人に委譲する。だから「鉄」や「半導体」や「液晶」や「携帯」に関して社長や会長より賢い人達があるべき未来の普通を洞察して決定する。

そのとき困るのはここまで一緒に会社を盛り上げてきた仲間との「情」だ。彼ら幹部役員がいなければ今の会社はないが、彼らは重役としてソフトウェアや才能の最先端についていけず評価もできないのに、決定権を持っているのでとんでもないお荷物だ。

10人、50人、400人、2000人と会社が大きくなるにつれて必要な人材は変わってくる。10人のときにやってた古株で経験豊富な重役が未来を見据える洞察力を持ってることはめったにない。サムスンのように常に新しい頭脳と才能を取り込んで見据えていかねばならない。日本人は情が深く昔の仲間を切ることが苦手だ。

派閥に合わせてソフトウェアを作るのが最悪で、天才のシンプルなソフトウェアに人が合わせていかないといけないとき、古い仲間はお役御免ということもある。その場合プレイヤーからマネージャー、マネージャーから投資家へ移るのが最善だろう。退職金や株を多く払って第2の人生探してもらった方がお互いのために良い。任天堂だって山内溥社長は任天堂社長就任時、親族全てを経営から切り離し(株主ではある)、後年親族と関係ない岩田社長に引き継いで引退。実業家としては歴史に残る功績だが決してコンピューターゲームに詳しいわけではなかった。

役員にしろ従業員雇用にしろ、大戦中の日本軍にしろ日本人はとにかく情に流され責任を曖昧にし、才能やソフトウェアベースの雇用が難しい。才能を重用しようにも、自分より天才は評価できないからだ。

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前にそんな日本人組織でうまく回ってるのが「トヨタ」と「少年ジャンプ編集部」という話をした。

トヨタは車というインフラで「サプライチェーン」をずっと短縮し続けていて、お客が頭に浮かぶ前に届けるまで「システム」を磨き続けるだろう。同じサプライチェーン短縮をネットというインフラでやってるのがGoogle(情報全般)、Apple(ハード、ソフト)、Amazon(物流、サーバー)。何が日本の組織と違うかというと「重役」や「上長」や「お客様」が偉いのではなく「短縮し続けるサプライチェーンシステム」が一番偉くて、一番偉い「システム」に対し社長も、部長も、作業員も、顧客も連なってることだ。

少年ジャンプは無情なアンケート絶対方式。普通は現場の漫画家だけがアンケートの責任を取って打ち切り、編集や編集長はあまり変わらない。それは日本軍や大企業のように上は責任分散で新陳代謝がほとんど働かず、現場の兵隊と才能が大量に死んでいくスタイル。

少年ジャンプで重要なのは伝説のマシリト編集長が導入した「編集もアンケート結果でクビ(異動)」というシステム。偉い人も無理やり新陳代謝させるのだ。漫画家も偉い大学出身の編集もどんどん若い人に入れ替える。3回ぐらいチャンスあるうち少なくとも1回当ててれば、編集も漫画家も他で働けたりする。ヒット出せない人や組み合わせの運も考えると、アメリカの会社よりえげつないだろう。

老人が居座り続けてる日本に足りないのは偉い人の新陳代謝。それを最初からシステムとして仕込んでおくこと。会社が大きくなるにつれ、時代や才能についていけなくなったら、退職金や株なりで引退する事を決めておくこと。社長はよほどの天才でなければ、どこかの段階でプレイヤーではなく実業家や投資家になるはずである。実績ある有能な老害こそ、新しい天才の芽を摘んでしまい、才能にチャンスが回ってこないイノベーションのジレンマに陥る。なので古い仲間に(金で)別れを告げ、組織を若返らせるシステムを作り、維持するのが鍵だ。

世の中のスピードはどんどん上がってるのに日本人らしい情に流されて「ずっと一緒にやっていこう」はよくない。時代の流れに合わせ別れ、変わり、身を引くことがお互いのためだ。

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